第十四話:徴収官タノの詰問と、カーリーの受難
女子寮の外、威圧的な黒塗りの魔導車両の前で、監察官タノは苛立ちを隠せずにいた。
彼女が手にしたタブレットには、演習場で逃走した「ヒョロガリ一行」の行動記録が映し出されている。
「……いたわ。この派手なレオタード、どこにいても目立つわね。カーリー……だったわね。彼女をここに連れてきて!」
タノの命令一下、重力魔法で強化された隊員たちが、トレーニング帰りだったカーリーを強引に連行してきた。
「な、なによ! 私、これからプロテインのゴールデンタイムなのよ! 放しなさいよ!」
憤慨するカーリーの前に、タノが氷のような視線で立ち塞がった。
「落ち着きなさい、カーリー。……あなたは、あのヨウジやサクミと一緒にいるところを何度も目撃されている。……あなたも、あの『脱税魔法』を使う連中の一味なの?」
タノの腕の魔紋が赤く光り、周囲の重力がじわりと増す。それは嘘をつけば地面に叩き伏せるという、無言の圧力だった。
「じょ、冗談じゃありませんんん!」
カーリーは顔を真っ赤にして、ありったけの肺活量で叫び返した。
「あんな、歩くのも面倒くさがる『もやし』と一緒にしないでちょうだい! 私は、正当なバルクアップと、血の滲むようなパンプアップを信条とする、生粋の筋肉至上主義者よ! あいつらは私の……私の『筋肉の美学』を汚す天敵なの!」
その言葉には、偽りない魂の叫びがこもっていた。あまりの勢いに、百戦錬磨のタノすら一歩後ずさる。
「……そう。なら、なぜあんなヒョロガリたちと行動を共にしているの?」
「それは……! あいつらが何をしでかすか監視して、いつか私の正論で叩き直してやるためよ! 私が一味なわけないじゃない! むしろ被害者よ、あいつらの脱力っぷりを見てると私の代謝まで下がりそうなのよ!」
カーリーの潔白(とヨウジへの嫌悪)を確信したタノだったが、その鋭い目は逸らさなかった。
「……いいわ。ならば、奴らの行き先に心当たりはない? 男子寮にはいなかった。学校の敷地内からも反応が消えた。……あのような軟弱な輩が、重力感知を掻い潜って隠れられる場所が、この学園のどこかにあるはずよ」
「……あいつらが、そんな頭を使うわけ……」
言いかけて、カーリーはふと、女子寮のサクミの部屋の窓を見上げた。
(……そういえばあいつ、サクミの言うことだけは『最小限のエネルギー』で聞くわよね……)
「……まさか、ね」
カーリーが漏らしたその小さな呟きを、タノは見逃さなかった。
「……何か思い出したようね。案内してもらうわよ、カーリー。もし奴らを匿っている場所を隠蔽しているなら、あなたも『共犯』としてバルクを全没収(徴収)することになるわ」
「ええっ!? 私が案内するの!? ちょっと、引っ張らないでよ!」
こうして、タノと強制連行されたカーリーの二人が、ヨウジたちが潜む女子寮へと歩みを進めることになった。




