表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
筋肉が魔力の源なら、ヒョロガリの俺は詰みですか? 〜脱臼覚悟で放つ「あたたた」が急所に刺さりすぎる件〜  作者: 原田広


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

第十一話:戦慄と恐怖の「もやし」

午後の演習場。昼食後の眠気と、プロテインの消化による熱気に包まれているはずの時間は、いつもとは異なる「異様な静寂」に支配されていた。

いつもなら、ヨウジが前に出るだけで「おい、あのもやし、また指でも差して遊ぶつもりか?」「風で折れるんじゃないぞ」と、シェイカーを振る音と共に下卑た笑い声が飛ぶのが日常だ。

だが、今は違う。


生徒たちの視線は、ヨウジではなく、演習場の片隅に鎮座していた「それ」に釘付けになっていた。

「おい……見ろよ、あの蟻塚」

「蟻塚っていうか、あれ、装甲材のバルクだろ……」

マッチョ蟻たちが、ヨウジの廊下にこぼれた超高級プロテインを摂取して作り上げた「要塞」が、演習場の端まで侵食していた。コンクリートを筋力で圧縮して作られたその構造物は、金属光沢にも似た鈍い艶を放ち、プロテインの甘い香りと共に隠しきれない威圧感を放っている。

そして何より、生徒たちの顔を引きつらせているのは、午前中に起きた「創立者アズーマ像、謎の消滅事件」の噂だった。


「聞いたか……? アズーマ様の像、粉になったらしいぞ。現場には『えいっ』っていう、気の抜けた声だけが響いてたって……」


「馬鹿な、あんなヒョロガリに何ができる。……でも、オクボ教官がさっきからずっと、砂になった像の跡地で『これぞ真の脱力ゼロ・マッスル……!』って拝んでるんだ。マジだぜ」


ヨウジが定位置に立つと、隣にいた巨漢の生徒が、ビクゥッ!と肩を震わせて一歩距離を置いた。


「(ひ、ひぃっ……! 今、こいつ僕の胸筋を『指の配置の邪魔』だと思って見てなかったか!? 突かれたら消される……僕のバルクが砂にされるッ!)」

彼らにとって、ヨウジはもはや「笑いの対象」ではなく、「触れたものを分子レベルで解体する、未知の歩く兵器」へと昇格していたのだ。


そんな周囲の恐怖など露知らず、ヨウジは心底だるそうに、カコから渡された「新型の指サック」を弄んでいた。


「……はぁ。みんな、なんであんなに僕を凝視してるんだろう。視線のプレッシャーを感じるだけで、数カロリー消費しちゃうじゃないか」


ヨウジはエネルギー節約のため、極限までまぶたを下げ、幽霊のような虚脱状態でつぶやいた。


「……早く終わらせて、帰って寝たい。……いきますよ。……えいっ」


その瞬間、全生徒が「うわぁぁぁ!!」と叫びながら一斉に伏せた。

ただの指差し確認のような動作に、この世の終わりを見たかのような過剰反応。

ヨウジが指差した先。

演習用ターゲットの鉄塊には、昨日よりもさらに鋭く、さらに「細い」針の穴のような一撃が、反対側まで綺麗に突き抜けていた。

「……音が、しなかった」

誰かが震える声で呟いた。

破壊の音すら置き去りにする、究極の「効率」。

笑う者は一人もいない。ただ、カコだけが物陰から前髪を揺らしてニヤリと笑い、サクミが目を輝かせ、カーリーが「……やっぱり、あれは魔法じゃないわ」と戦慄に顔を青くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ