火花散る
頭上で、けたたましい声がする。
咆哮みたいな、頭がガンガンする声。
「……あ、ぅ……?」
ゆっくりと身体を起こして、目を擦る。
……私、何をしていたんだっけ。
私……私、そうだ、女神に会って……それから女神の様子がおかしくなって、それで……
ギャオオオン!
「ひゃ……!?」
……ここ、どこ。
いや、それよりも……目の前の、竜の姿のこの炎魔は――っ!
吐き出された炎魔のブレスを転がるようにしてギリギリで躱す。
危なかった……いやそれよりも、こんな炎魔聞いたことない。
危ないから、炎魔の勉強はしっかりとやっていたはずなのに……誰からも、聞いたことなんてない。
それが意味することは……新種、そして……この炎魔が、不死を打ち破る炎魔の可能性があるということ。
……不味い……不味い、不味い。
私には戦う手段なんてないのに。
けど、だからってあの建物には……いやそもそも、ここは屋外で自分がどこにいるのかすらわからない……!
「……あ、うっ……はぁっ……!」
紙一重でブレスを躱すことはできているけど、これ以上はもう持たない。
呼吸が浅くなってきて、目の前がチカチカし始めた。
動きも鈍くなってきてる。
……また、次が来る。
躱さないと……っ、あ……!
「あ、づ……!」
足が動かなくて、ブレスが直撃した。
確認する勇気はない、けど……腕が動かない。
今は痛みもないけど、それはきっと一時的で……どうしよう、どうしたら。
私、ここで……ここで、死ぬの?
……再生の力……女神は私に、再生の力があるって言ってた。
それなら……それなら、やれるはず……封印されているとも言っていたけど、存在するのは確かなんだから。
やるしか、ない。
炎魔が、ブレスの予備動作に入ってる。
急がないと。
見るのは怖いけど、しっかりと傷を視認して治れ治れと念じてみる。
傷に変化はない。
腕と横腹に、穴が空いていて……傷は治りそうにない。
駄目、諦めちゃ駄目。
早く……治せなかったら、ここで死んじゃう。
治って、お願い、治って、治って……!
パチッ
……この音、知ってる。
この、火花が散るみたいな音は……あの炎狼の……!?
パチッ パチッ
地面から炎が噴き出して、狼の形になる。
そしてそれは地面を踏み締めて、竜の姿の炎魔に向き合った。
……戦おうと、してる?
炎魔は他の炎魔と敵対することはないはずなのに……
「……っ、あ、ぐ……!」
ビリビリと痛みが走って蹲る。
腕と、横腹。
ブレスによって穴を空けられたそこが、今になって痛みを訴え始めた。
どうしよう、治さないといけないのに、治らない……!
グル……ッ
炎狼が唸り声を上げると、竜の姿の炎魔が飛び上がった。
そして、巨大な鳥の姿に変化して飛び去っていく。
残るは、私と炎狼だけ。
炎狼に殺されれば、不死の力もちゃんと発動して、生き返るかもしれない。
だけど、死にたくはない……けど……もう、足が動かない。
足が竦んで、動かそうとしても震えるばかり。
「い、や……!」
そんな声を上げるも、炎狼は無慈悲にこっちに走ってきて――私の目の前で、ピタリと止まった。
台詞風のタイトルにしたいと思ってるんだけど、中々思いつかないね……
とりあえず今日のタイトルは、炎狼の火花が散る音と炎狼と未知の炎魔がバチバチに火花を散らして戦闘してるってことで火花散るにしてみたよ。
先の展開はもう思い付いてるから、今日は二話投稿するかも?
思い付いてても筆が乗らなかったら明日以降だけど。