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内容はないようです  作者: プロットなんていらねぇ!
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何が何だかわからないよ

 偵察隊が帰ってきた。

 今度は誰も犠牲にならず、みんな無事で。

 例の、不死を打ち破る炎魔に気付かれて危険な場面はあったそうだけど、死にはしなかったからなんとか無事だったらしい。

 ……とりあえず、大怪我を負った人はルルエさんのカウンセリングを受けることにはなったけど。

 死なないだけで、痛くないわけじゃない。

 あの時、ローブを脱いじゃった時も……ああ、嫌なこと思い出しちゃった。


「……ふぅ」


 施設内を散歩しながら息を吐く。

 やっぱり私、なんにもできてないな。

 保護してもらった恩なんて返せてないのに、やれることなんてまだ一つもない。

 色々と学んではいるけど……戦ったことなんてないし、これと言った特技なんてない。

 役に立てない。

 そう考えながら、何も考えずに歩く。


「……あら?」


 知ってる声が聞こえた。

 気が付けば、周囲は知らない景色で覆われている。

 キラキラと光る、夜空みたいな場所。

 目の前には女神がいて、私を見て目を丸くしていた。


「……どうして、ここに? まさか死んだのですか?」

「……それは、あの炎魔にやられたのかって意味?」

「あ……えぇ、まぁ……はい」

「……施設内を散歩してただけだよ。あなたが呼び出したんじゃないの、女神様」

「違います。……違うから、驚いているのです。一体どうやって……そもそもここは……」


 女神は酷く狼狽した様子で、あちこちへと視線を彷徨わせる。

 ……女神が呼び出したわけじゃないみたい。

 でも、だとしたら……どうやって帰ればいいんだろう。

 前は、落ちるみたいか感覚で戻ったけど……


「……あ、ら……?」

「……何?」


 ふと女神が何かに気付いたような声を漏らした。

 それに首を傾げながらどうしたのか尋ねると、女神は私に近づいてくる。

 少し怖くなって身を引いたけど、引き寄せられて女神の腕の中に捕まった。

 一体何がしたいんだろう。


「……」

「何なの、女神様」

「……い、え……大丈夫です、いえ、大丈夫ではありませんが……」

「……どっち?」

「大丈夫じゃないです……」


 死にそうな顔で女神が言った。

 ……何か、前と雰囲気が違う。

 神聖そうな雰囲気は一緒なのに、前はなんだか邪神みたいで。

 だけど今は、そんなもの欠片もない。


「私は、帰れるの?」


 引き続き尋ねてみる。

 女神はそれにきゅっと眉を寄せ、深い、深い溜息を吐いた。


「……少し、時間を要するかもしれません。このようなことは初めてですから」

「……大丈夫じゃないって言ってたよね。具体的にはどういうことなの?」


 帰れないわけでは、なさそう。

 そこは一先ず安心だけど、いつ帰れるのかわからないところとか、大丈夫じゃないってどういうことなのかとか。

 まだまだ、不安要素がたくさんある。

 説明できることだけでも、女神にはきっちり説明してもらわないと。

 そう思って女神を見ると、頭を抱えていた。


「……私はあなたに、私の権能の一部を貸し与えたんです」

「権能? ……不死のこと?」

「いいえ、それは権能ではありませんから。……私は、あなたに……再生の権能を与えたのです」

「再生?」

「はい。万物を再生する力です。詳細は……貴方自身で確かめると良いでしょう」

「……そんなことを言ってる場合なの……?」

「そ、それは……えっと、とにかく……! ……その力が、封印されてしまっているんです。ですが心配はいりません、私がちゃんと元に戻しますから。大丈夫ですよ……たぶん」


 たぶんなら大丈夫じゃないと思う。

 あと、力の封印の解除とやらよりもちゃんと帰すための努力をしてほしい。

 ……同時にやりながら言っているなら、文句はないけど。


「うっ……や、やります。大丈夫です、すぐですから……すぐ……」

「……女神様?」


 女神の様子がおかしい。

 俯いて、手をだらんと下げて動かない。

 慌ててその顔色を確認しようと近付くと、腕を掴まれた。

 え、と声が漏れて、女神を見上げると、僅かに身体が強張ったのを感じた。

 さっきまで、そんな雰囲気なんてなかったのに……あの、邪神みたいな雰囲気を女神が纏っている。


「……っふ、ふふふふ……」

「女神様……?」

「予想外でした。まさかもうここにいるなんて。……イルシュ、別にいいのですよ? 心の中では女神と呼んでいるのですから、わざわざ女神様などと呼ばずとも」


 身体が、動かない。

 ただ怖くて、震えて、そんなことしかできない私を、女神がゆっくりと撫でていく。

 頭から始まって、身体をなぞるように、服の上から手が這っていく。


「……っめ、がみ……さま。な、なにを……なに、が……」

「貴方は愛らしいですね。そうやって震えて……ふふ、ただただ混乱している。……でも、大丈夫です。貴方のことですから……すぐに現実を認識できますよ」


 優しい声が囁く。

 震える身体をなんとか動かして距離を取ろうとしてみても、どうにもならなかった。

 何か、打開策は?

 ……再生の力……ううん、今は使えない。

 じゃあ、じゃあ……何か……


「たくさん考えていますね。でも、良い案なんか浮かばない……空回り。ふふ……解放してあげましょうか?」

「……っ、あ」


 冷や汗が止まらなくて、震えが酷くなって、歯がカチカチと音を立て始めた。

 目の前がチカチカする、声が出ない。

 そんな私を、女神は楽しそうに見つめていた。

 さっきとは大違い。

 さっきまでは、ただ焦ってどうにかしようとしてくれていたのに。

 いくらなんでも変化が唐突過ぎる、一体何が起きてるの……一体、私は何に巻き込まれているの?


「ええ、ええ。賢い子は嫌いじゃないですよ。頑張ってくださいね……では、イルシュ。暫しのお別れです。嬉しいですか?」

「っ……」

「ふふ……また会えるのを楽しみにしていますね」


 女神が笑って、そっと頬を撫でてくる。

 するとぐるんと目の前が歪んで、私は意識を失った。

後半めちゃくちゃ筆乗った、楽しかった……。

平和な時より主人公が可哀想なことになってる時の方が筆が乗る気がする。

長過ぎるシリアス展開苦手なのに……。

しかしこの話を書き始めた時はこんなことになるとは思わなかったなぁ、これからどうなることやら。

女神とイルシュちゃん話させようと思っただけだったんだけどね。

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