くるくる、ふわふわ。……どうして
くるくるー、くるくるー。
ふわふわふわー……
「何をしていらっしゃるんですか?」
「……あ、ルルエさん。儀式だよ」
答えながらくるくる回る。
そう、儀式。
私が住んでいた村に伝わる儀式で、大いなる太陽を鎮めるためのもの。
誰も、効果があるなんて思っていないけど……その危機が着実に迫っていたのは確かだったから、藁にも縋る思いでみんな儀式を行っていた。
くるくると回って、ふわふわと舞う。
練習さえすれば簡単な儀式だったのも大きいかもしれない。
と、そんなことをルルエさんに説明すると、少しだけ困った顔で微笑まれた。
「不思議な儀式ですね。でも、どうして急に?」
「……ルルエさんは、聞いた? 不死を打ち破る炎魔が現れたって」
「ああ……今は偵察隊が向かっているそうですね。無事だといいのですけど……」
「うん。これは、大いなる太陽を鎮めるためのものだけど……炎魔はその副産物……の、可能性があるから。青夜の月にはお世話になったし、安全祈願としてやってみようと思って。簡単だよ、ルルエさんもやってみる?」
「……では、少しだけ。こうですか?」
「合ってる。これを、少しずつ早くしていけば……ほら」
くるくるくるり、ルルエさんと一緒に回る。
簡単だけど、目が回るのが難点。
ルルエさんも目を回して転びそうになっていた。
「わわ、と……これは、ふふ……楽しいですね」
「村の子どもたちもよく楽しそうに笑ってたよ。……うん」
「……」
村のことを思い出す。
私はただの、村人で……優しい家族に囲まれて、過ごしていただけなのに。
子どもたちも無邪気で可愛くて……私は少し目付きが悪いから、最初は怖がられることもあったけど、それでもみんな仲良くしてくれて。
……それなのに、なんで、こんなことに……なんで、こんなところに。
そう思っていたら、ルルエさんに抱き締められた。
頭を撫でられて、ゆっくりと背中を叩かれて……気分が落ち着いていく。
「……ごめんなさい、ルルエさん。私……ちょっと不安、なのかも」
「当たり前ですよ。偵察隊のみなさんも、知らない仲ではないんですから。……イルシュちゃんはここの人の中でもかなり幼い方ですから、特に可愛がられていますしね……」
「……そう?」
「気付いていらっしゃらなかったんですか? みなさん、自分の娘のように可愛がっておられますよ。イルシュちゃんよりも年下の子は、他の人より年が近くて頼りになるイルシュちゃんのことを姉のように思っています」
「……私ぐらいの子、少ないもんね。ここは大人の人が多いから……」
「そうですね。……もう少しお話しましょう、イルシュちゃん。医務室に来ませんか?」
「うん……行く。でも、何もしないのは申し訳ないから、何か手伝うよ」
そう言えば、ルルエさんは別にいいのにと苦笑いしながらも、それならと簡単な仕事をお願いしてくれた。
医務室までの道中を、二人で話しながら歩いていく。
…………みんな、無事だといいな。
少し難産だった。
イルシュちゃんもただの女の子なので、不安になることもある。
にしてもやっぱりシリアスだな……