よくわからないけど、保護されたらしい?
はっと目を覚ます。
私は……そうだ、炎の狼に襲われて、男の人に助けられて……それで……
「目が覚めましたか?」
「え」
知らない声に横を見る。
白い髪、白い瞳、白いローブを着た真っ白な女の人が椅子に腰掛けて私を見つめている。
……って、椅子……?
そうだ、私、そもそも……どこで寝かされてるの?
……ベッド?
なんで?
この世界はそもそもどこも大いなる太陽に焼き尽くされて、溶かし尽くされて……こんなもの、残ってるはずないのに。
「……あな、たは……?」
混乱しながら、一先ず目の前の人に尋ねてみる。
すると真っ白な人は、長い髪を耳にかけながら答えた。
「私はルルエ。癒術士です。現在は、この部屋……医務室の管理をしております」
「……癒術、士? 聞いたことない……です、けど……お医者様って、ことですか……?」
「ええ、その認識で構いません。怪我をした際は、私のところにいらしてくださいね。……さてと、目を覚ましたことですしグレイブさんを呼んでこないといけませんね」
「グレイブ……?」
「あなたをここに連れてきた人の名前ですよ。少々お待ちくださいね、すぐに戻ってきますから」
ルルエさんがそう言って部屋から出ていった。
……部屋……そういえばここ、室内?
どうなっているんだろう、どうしてこの場所は燃えていないの?
それに、ルルエさんが扉を開けた時……確かに、廊下が見えた。
残っているのはこの一室だけじゃないってこと、だよね。
……一体どうなっているの?
「お待たせいたしました、グレイブさんを連れてきましたよ」
「おう。怪我は無いか?」
「……あ……はい、ありません。助けていただき、ありがとうございます」
一先ず、ぺこりと頭を下げる。
理解できないことばかりで、混乱しているけど……助けてもらったんだから、先ずはお礼をしないと。
……この人……グレイブさん、だっけ。
今は黒い筒、持ってないんだ。
「俺はグレイブ、一応この場所の纏め役をしてる。嬢ちゃんは?」
「……イルシュ、です」
「んじゃ、イルシュ。……イルシュは、女神に会ったか?」
「……はい」
少し迷った後に頷く。
言っていいのかわからないけど……悪い人ではないと思うし、すごく真剣な目をしているから。
「やっぱりか……そうだよなぁ……はぁ。……この場所はあの女神に召喚された俺達が作った場所で、そんな境遇の奴らを保護するための場所なんだ。何故だかここは、地面が沸騰してて女神の装備が無きゃ即死だからな」
「……」
グレイブさんの言っていることに違和感がある。
この場所が存在できている謎も解明されていないし、何より……この世界がこうなった理由を……大いなる太陽を、知らない?
「で、だ。イルシュ、お前はどこから来た?」
……どこから。
そしてさっき言ってた、召喚という言葉。
つまり……
「皆さんは、他の場所から来たんですね」
「……ん?」
「イルシュさん? それって、どういう……」
やっぱり、どうするべきかはわからない……けど。
……女神に良い感情は、抱いてなさそう。
「私は、この世界で生きてきたんです」
グレイブさんとルルエさんが固まる。
ここにどれほどの人がいるのかはわからないけど、その中にこの世界の住民はいなかったのかもしれない。
少し待つと、グレイブさんが復活して尋ねてきた。
「わかった……なら、この世界には何が起きたんだ?」
「……わかりません。でも、太陽が……大いなる太陽が、この世界を焼き尽くして、溶かし尽くして……この世界を滅ぼしました。……女神からは、この世界は滅んだと……そう聞かされて……」
「……原因は太陽なのか」
「恐らく、ですが。そう言われていたということしか、私は知らないので。でも少なくとも、ここ数年太陽には異常が生じていたのは確かです。夜が無くなって、時々異常に明るい日があったりして……」
そう言うと、グレイブさんはまた黙り込んだ。
どうしていいかわからずにじっとしていると、グレイブさんは溜息を吐く。
「わかった。……詳細な説明は後だ、もうちょっと休んでな。ルルエ、任せたぞ」
「……はい」
何が何だかわからなかったけれど……混乱を落ち着かせるためにも、一先ず私はグレイブさんの言葉に甘えて休むことにした。
主人公ちゃん改めイルシュ
現地民だけど唐突なことだったので大いなる太陽って名前しか知らない。
そもそも前はただの女の子だったのでまぁ当然だね。
グレイブ
大柄な男の人。
召喚者達の保護施設の纏め役をしている。
ちなみにイルシュちゃんの言う黒い筒は銃のこと。
ルルエ
真っ白で髪の長い女の人。
癒術士という職業で、魔法的なもので傷や病を治す力を持っている。
保護施設では医務室の管理人兼医者。