どこに行くのかわからないけど、限界なのでおやすみなさい
立ち止まった炎狼が、恭しく頭を垂れるみたいに頭を下げる。
……何、どういうこと?
なんで私、襲われてないの……?
「……炎狼、さん?」
試しに声を掛けてみる。
すると炎狼は顔を上げて、私を見つめてきた。
そのまま炎狼はゆっくりと脚を動かして、くるくると私の周囲を歩く。
敵意とか、そういうものは何も感じない。
「……何?」
つんつんと炎狼が鼻先と見られる部分でつついてくる。
ローブがあるから熱さは感じないけど……どうしたんだろう。
そう思っていると、炎狼は私の首元を咥えてぽいっと上に放った。
え、と声を漏らして、呆然としている内に炎狼は私を背で受け止める。
「え……え?」
そして、炎狼は勝手に走り始めた。
力を抜いているのに、なぜだか振り落とされそうな感じはない。
「ね、ねぇ……? どこに行くの……?」
「グル」
……返事らしきものは返ってくるけど、何を言っているのかはさっぱりわからない。
でも、炎狼は迷いなく進んでいるから、何か目的地があるのかも。
……私には、ここがどこなのかなんてさっぱりわからないし……しょうがない。
腹を括って、炎狼に身を任せてみよう。
「……んん……」
そう決めたら気が緩んで、眠たくなってきた。
目の前が霞んで、目が開かなくなる。
寝たら危ないのはわかってる、けど……もう、抗えない。
「……おや、すみ……炎狼、さん」
ぽつりとそう言って、私は眠りについた。
とりあえずこんな感じで。
分けずに続けてもいいけど、まぁ場面転換だし……短いけど本日二話目!