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目を開けると広がったのは立派なベッドの天蓋だった。
金縛りのように身体の自由が効かなかった。真っ先に手を動かそうとしたら、指の先だけはほんのちょっとだけ動かすことが出来た。
「起きた?」
隣から柔らかい声色の青年の声が響いた。
彼は私に向かって微笑みかけている。
「君の名前は?」
と彼が問う。
《「……お前は?」》
違う誰かの声がフラッシュバックした。
《「……花X日XX!」》
「……花……日……!」
なんでなんだろう。もう少しな気がするのに。
頭が割れるように痛い。
「……うん。大丈夫だよ。無理しなくていい。これでも少しずつ進展してるからね」
彼は私の頭を優しく撫でた。まるで宝物を触るみたいに。
「あれ?泣いてるの?」
彼が言った。実際に泣いてしまっているらしい。
「なぜか分からないの。わからないけれど」
「懐かしくて……涙が零れそうな……そんな気持ちなの」
彼はそんな私の言葉に心底驚いた表情をして、横たわったまま動けない私の身体を優しく抱きしめた。
「ごめん、ごめん。いつか絶対に返すから」
「今だけはこうさせて」
彼が謝っているのは私に対して?
分からないだらけの私はそれすらも分からなかった。




