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ブーケのようなご褒美を  作者: 津々井サクラ
17/31

アイドル


 秋晴れとはこのことを言うのだろうというほどの快晴。思わず外に出た瞬間伸びをしてしまった。

 お墓参りをしてから3ヶ月が経過し10月に突入した。外に出るだけで汗が吹き出るような暑さだったのにいまは長袖を着なくては少し肌寒い程になった。ここから本格的に冬が訪れそうだ。

 冬になると途端にお花が少なくなるので少し寂しい気持ちになるのだが、その代わりに空気が乾燥してくるのでお花をドライフラワーにしやすくなるという利点もある。つい昨日からカスミソウをドライフラワーにしようと吊るしている所だった。

 この三カ月は本当にいつもと変わらない毎日。柳じいさんの腰がお店に来れるくらいには回復した。紫苑さんが新しい漫画を書き始めた。日葵ちゃんが接客をかなり任せてもらえるようになった。キヨさんが散歩で見つけた公園に桜の木があるって教えてもらった。私の裁縫技術が少し上達した。ポプリをもう一度作ってみた。そんな日々。

 変わったことと言えば一星さんが今まで以上に来てくれるようになったこと。仕事前だったり仕事終わりに来てくれる事は今までもあったけど、最近は仕事の合間にも来てくれる。それに一日に複数回来てくれることも。

 最初は無理してるんじゃないかって思って、無理しないでと伝えたのだが「俺がすみれちゃんに会いたくて来てるだけやねん」と言って聞いてくれなかった。

 アイドルはそんな気恥ずかしくなってしまうような言葉もさらっと言うから心臓に悪い。その言葉に顔が赤くしていると「可愛い」のおまけつきだ。恥ずかしいったらありゃしない。アイドルって凄いなぁなんて。

 少し気になって携帯で一星さんを検索してみた。ライブをしている映像が出てきて、本当に本当にアイドルなんだなぁと実感した。

 一星さんが微笑むだけで何人もの女の子が笑顔になって、手を振るだけで多くの女の子が嬉しそうに飛び跳ねている。喋るだけで周りにはほわほわした空気が流れる。

 SNSで一星さんを調べると出てくるファンアカウントの多さにビックリした。一星さん曰く自分たちなんかよりも人気のグループやアイドルはいくらでもいる、俺たちが目指してるのはその人たちよりも上に全員で行くこと、と語っていた。

 一星さんがよく来るようになって一星さんのない面がより分かるようになった。

 一見クールな見た目をしているけど仕事に関しては熱い心を持っている。絶対にもっと多くの人にパワーを届けたい、それくらい大きな存在になりたいって語った瞳には並々ならない覚悟が見えた。

 アイドルの人生なんて私たち一般人よりも修羅の道だろう。それを自分で選んだんだから、俺は努力を怠らないで前に進むだけ、とも言っていた。

 私はそれを聞いて、心の底から尊敬をした。それと同時に眩しいなとも思った。日葵ちゃんとは違った眩しさ。

 私はエキザカムの花を思い出した。本当はエキザカムの花をプレゼントしたかったけど鉢物なので難しかった。なのでお店に飾って一緒に見た。それだけでなんだか幸せな気持ちになった。

 私は一星さんの夢が一つ残らず叶えばいいのにと思った。


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