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おまけ5 守護者契約 11

"皆で一致団結!" といった良い感じにまとまる雰囲気の中、フレイが何故意気込み感じ…事に当たろうとしているのか、近況報告の兼ねた自慢?…といった感じで自身の訓練状況をニュールに語る。


「前にモーイに鍛えてもらって、それなりの戦闘は出来ると思ってたんだ。だけど、リーシェに言われて更に青の間で訓練してもらってるの!」


子供の "出来るんだもん" 自慢を微笑ましく聞く感じのニュール。


「だけど直ぐに組み敷かれちゃうから、そのまま色々お仕置きされちゃうんだけどね…」


そう言ってブーたれた表情になるフレイだが、ニュールは何だか別の意味で怪しい報告を受けた気がして目を白黒させる。


「リーシェって絶対貧弱だと思ってたんだけど以外と凄いんだよね!」


『何がだぁー!! それにお仕置きって何だ???』


思わず耳にしてしまった娘の赤裸々な告白に動揺する父親…と言った気分で、心の声がそのまま表に出そうになる。

何とか気持ちを抑え、更なる事実確認が出来る内容の答えを待つ。


「あの日初めて知ったんだけど…それから色々教えてもらってるんだ…」


"てへっ" と無邪気に照れながら笑うフレイを見て、ニュールは一瞬で燃え尽きた気分になった。


「魔力体術って奥深いよね! 体格の良いアルバシェルとリーシェが対等に戦ってたからね」


「本当にいつでもフレイって酷いよね! あの日以前にもチャント港町に助けに行ったし、その時だって戦ってたのに…覚えてないって…。体術だけじゃあなくって、本来の体だって凄かったんだよ…」


今は消えてしまった身体に思いを馳せ悔しがるリーシェライル…に、呑気に戦闘を期待するフレイ…。

そしてフレイリアルの衝撃告白で父親気分な魂が抜け気味のニュール。

皆、緊張とは程遠い状態。

余裕持ちながら儀式に当たれそうだった。



ピオはこのショボくて雑魚い空気感漂う集まりに辟易としていた。


『眠くなるぐらい内容の無い提案と…それを検討する者達…って、全く話を進める気がないんじゃない?』


心の中の考えが危うく口から洩れそうになった。


プラーデラ側とエリミア側、大臣含めた実務者達との間で今後の方向性話合い決める場…と言う歌い文句だったので参加する形になった。だが机上の空論ばかりが空回り話が進まない。捕らぬ高級蜥蜴の皮算用と言った感じで…目論見ばかりが先立ち、無意味な時が流れることに苛立つ。


澱んだ空間の中…搾取される時を耐え忍ぶにも限界が来そうな頃、極薄く広げてある隠蔽を掛けた探索魔力が、青の塔がある方向で結界の切り替わりを…結界出力の減弱を感じ取る。


『始めたのか…』


ピオも解任の儀についての手順は聞いていた。


まず防御結界陣の魔力供給を天輝石から通常魔石に切り替え、契約の解除に天輝石を使えるようにする。

そしてフレイリアル自身が青の間に居る時に張っている防御結界の代わりを担うため、下の階層に配置されたモーイとブルグドレフが外部からの侵入を警戒しつつ…結界広げ対応する事になっている。

其の状態でサクサクと儀式進め、終わらせる…簡単な事である。

だが簡単な事を邪魔したがる者がいることも、想定していたが…事実として確認した。


『外部から手が入っているようですね…』


ピオが心の中で呟く。

未だ続く…まだるっこしい話し合いの裏で、集まってくる情報に若干顔をしかめる。


今在席する表の場では…誰も起きている変化に気づかず、無駄で不要な遣り取りが続いている。

エリミアでも本当の実務司る者達は、この場を設ける必要性を感じなかった。…とは言え、一応しっかりと話し合いに参加し…前向きに次の機会について検討している。


時をもてあましているのは無用に偉ぶる…身分ばかりで参加している者。その様な者でも、ピオ同様…表面上は穏やかに頷き意見を清聴する。

それでも楽しむ機会を探し出し、全然関係の無いくだらない事で…煩わせ…暇を潰そうと企みる。


声を掛けて来るたのは、権力は与えられたが今一つ有効に活用できる能力はお持ちでない…お偉い感じの外務司る大臣。

自尊心だけは立派で強く、困った人感…強い者。


「私の家筋では、近隣各国と協力するために姻戚関係結ぶ事も多いのですが、プラーデラへ嫁いだ者も居ります。宰相様はどちらのご家筋の方でしょうか?」


身分ちらつかせ、ピオを貶める気満々で大臣が近付いてきた。

今のプラーデラが、どのような状況下で築き上げられたのか知っている癖に尋ねる。

他国から友好使節として来ている者に…尋ねるべき内容か判断できない時点で、其の地位に居る事自体が疑わしい。

愚かなのか…、出方を窺うためなのか…、怖いもの知らずなのか…何にせよ読みの甘い者であるのは確かなよう。


「私の由来はヴェステに御座います。ヴェステ王国の隠者に席を置いておりましたが…大賢者であったニュールニア様にに心酔し、同様にニュールニア様に感銘を受け信奉する事になった赤の将軍とともに付き従いプラーデラへ移らせて頂きました。プラーデラでの血筋としては新参であり由緒正しいとは言えませんが、力劣る無礼な者を処分出来る実力はあると…自負しております」


丁寧に…穏やかに…そして礼儀正しく…あくまでも真摯に、その失礼な者に正面から向き合う。

隠者になるのは、素性は明かせずとも…有力な血筋の…有能な選ばれた者…が所属する。その事は、外務に関わる者なら誰でも知っている事実。

余程の実力無い限り…庶民は賢者に至ったとしても、影…若しくは研究所の所属になる。

勿論ピオは影上がりだし、実力と諸事情で隠者に入れられた者。

隠者の名声を上手く利用させてもらっただけなのだが、傍から見たら些末な事で揚げ足狙う愚か者と…優雅に対応する気高き者に見えたようだ。

どちらが真実尊き者か、…周囲は考える間もなく判断した。


更にピオは釘を刺す様に、笑顔作る顔の表面に…何時でも目の前の貴方を処分できます…と、分かりやすく浮かべてやり、仕掛けてきたのに既に失禁しそうなぐらい怖じ気づいている者に…笑み深め対峙してやった。


一国の大臣ともあろう者が震え上がり…ちょっとした駆け引き一つで引き下がってしまい、小者感丸出しの姿になってしまったのが情けない。


こんな低次元の会合の行方より、ピオは青の塔で行われている…解任の儀の進行状況や周囲の状況の方が気になる。

探索魔力から感知出来る状況は先程から全く変わってない。

だが、同じように何処からか状況探るように探索を展開する者が数組現れたのを感じた。

魔力の導き出しの稚拙さから格下…とは思われるが、偽装工作と言う役割を担う身。この場から抜けられないため、状況探るしか出来ないのがもどかしい。


「では4の月後ぐらいまでを目安に…今回と同程度の人数で、次は正式な訪問を行うと言う事で宜しいでしょうか?」


エリミア側の場を仕切る者がまとめる。


「特に異議が無いようでしたら、決定と言うことで。双方の国でソレゾレで話し合い、各々の国王の承認待ちましょう。許可が出たら、さらに詳細を一度集まって行う…と言うことで宜しいでしょうか」


上の空で適当に参加していた会合だったが、無事終了した。

塔で行っている儀式は、未だ継続中のようである。


『調べた限りでは、そんなに時間がかかるようなものではなかったはず…』


ピオ独自の下調べで集めた情報と異なる状況に、若干心に不安よぎる。



賢者の塔・中央塔の最上階では、予定通り儀式を執り行っていた。

魔輝石…青の塔で所持している天輝石を介して、回路を開き繋げる。

守護者契約結ぶ時と同様、3人が触れている天輝石が激しく輝きを放つ。

大賢者役を担うリーシェライル入るグレイシャムに導かれ、魔力動かすだけで回路が開き繋がった。

此処まではかなり順調だ。


「問題なく天輝石に繋がったけど、この後はどうするの?」


「天輝石を介して繋がりの経路が見えるようになっているから、其々が解除を意識して王の承認を与えれば良いんだよ」


リーシェライルは事も無げに伝える。

確かに…見えている状況に手を加える事は容易そうだ。だが、ニュールは違和感を感じる。


「繋がりは明らかになっているけど、…これは…体内魔石ではなく…その奥へ繋がっているぞ」


「やっぱりね…。過去に1例だけ巫女との守護者契約について情報が有ったんだけど、そんな感じだったんだ」


把握していた事実…であるのに、今更な説明であることなど更々も匂わせず…知ったばかりの情報であるかのようにリーシェライルは語る。


「あぁ、此れが…大変だったら手伝う…ってヤツか…」


「そうそう! まぁ…こんがらがった糸玉みたいなもんだから、解きほぐす感じで辿って…オオモトに向けて繋がりを解除するように力動かしながら承認するだけだから、難しくはないはずだよ! ちょっと面倒なだけさ」


ちょっと所か、とてつもなく面倒そうである。

にっこりと花咲くような満面の笑み浮かべ、予想通り…以前と変わらず…押し付ける御方は健在である。

存在の仕方が変わっても全く変わらない…強かでズル賢いのに人を魅了し操る。


「勝つことも…投げることも…逆らうことも出来ないんだよな」


「そりゃリーシェに逆らうだなんて私にも無理だよ」


ニュールが漏らした独り言の様な呟きに、しっかりと…止めを指す様な答えをフレイリアルが与える。


「だから諦めて一緒に片付けよう!」


リーシェライルと共に良い感じでフレイリアルもニュールをこきつかうのであった。



ピオは会合の終了後、早速抜け出す。

勿論単独で抜け出してしまうと…塔への目を欺くと言う役割が果たせないので、エリミアの外務司るお偉い大臣の側近と…王城壁の見学や庭園の散策を兼ねた案内…を受けつつ私的会談こなす…と言った体で話をまとめた。

人数は最小限で、エリミアとプラーデラ…双方護衛を1名ずつ付け外に出る。


「此れが王城壁です。境界壁と同じ作りと魔法陣を使用しています。以前よりは…」


「あぁ、懐かしいな…脆弱性も改善されているみたいだし、塔との繋がり無い中…魔力消費減らした…効率重視で最低限の役割持つように上手く作られているようだ…」


『ここの元大賢者様が手伝ったとはいえ、あのお姫様が組み上げたにしては優秀な陣が組まれてる』


珍しくフレイリアルに対する称賛も混ざる様な心の声も含まれていた。


ピオにとってフレイリアルは甘々で…保護者をゾロゾロ引き連れた…下らない子供である。

見ているだけで苛つく厭わしき者。

能力ある癖に出し惜しむ様に人を頼る愚か者。

認めるべき高い能力持つが、絶対に認めたくない者。

目の前で息絶えそうになっていたとしても手を差し伸べたくない者。

その様な存在であった。

そんな…無性に腹立たしくなるような者が手掛けた王城壁を前に、浅薄で吐き気がするほど愚かしく苛つく者が嬉しそうに語る。


「そうでしたね! 貴方様は隠者勤められた程の方。この様な些末な説明は必要ございませんな」


ピオの "過去にも来てるんです的発言" を盛大に聞き逃し、単純にホクホク顔で摺り寄る大臣側近。この者も資質的にドンナもん何だろうか疑問に思うが、アノ大臣にしてコノ側近有り…とも思える。


「いやぁ、貴方様の気品漂う行動と見識に感服致しました」


そろそろ此の鬱陶しく媚びへつらう者を引き剥がし、自ら動き詳細確認したいと思っていた。

その時、爆発音が響く。

其が始まりの合図となった。

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