おまけ4 振り出しに戻って進もう~ミーティとモーイの第一歩 17
おまけ4 最終話となります
語り部の長アクテとプラーデラ国王ニュールニアの公式会見した状態のまま、お二方の御前…と言った感じの場所へ招かれたミーティは混乱する。
これから何を尋ねられ、何が起こり、何が始まるのか…皆目検討がつかなかった。
私的な慣れ浸しんだ人々と空間で…公式な会見後に設けられた席への呼び出し…と言う矛盾ひしめく状況下、第一声を自分が発して良いのか…待つべきなのか…さえも判断できない。
だが沈黙に耐えられず、少しおどおどしながら最初に口を開いてしまうミーティ。
「オレ、何で呼ばれたんだ?」
この言動と状況判断の甘さ。
「…はぁ…じゃから、世話せにゃならんと思っちまったんだい…」
アクテは頭を抱えながら思わず呟く。
ニュールも思わず失笑漏らす。
「確かに長殿が思い違いをしてしまうように、あと4年は荒波に揉まれる必要があるかな…」
「はいっ?? えっ、どういうコト?」
「お前が今後どうしたいのか、自分自身で周りに伝えて…覚悟をもって前に進むべき…って話をしていたんだよ」
ニュールに説明を受けた。
何故それを問われるのか今ひとつ状況飲み込めないが、ミーティの中で今進むべき方向は決まっていた。
「オレ…まず、モーイに告白したい!」
その宣言に思わず皆、不意打ちを食らう。
一瞬の静寂後…そこに居るもの全てを巻き込んだ大爆笑が生まれた。
一応公式な話し合い終了後の会見ではあったが、これで一気に知り合い同士の談話になった。
ニュールに随行する事になった者たちは普段からミーティとも親交ある者たちであり、場違いな…でも青少年にとっては重大な問題を素直に表現したミーティの一大決心に和まされる。
「あぁ、その重大事は個人的に進めて、結果だけ教えてくれ。皆興味深く見守っているぞ」
「成功したら、祝いの席を設けてやるから報告待ってる!」
「成功したら集落でも祭りを開くだい!」
皆が口々に同じような事を述べるが、場が落ち着いた時点でニュールが居住まいを正し、再度尋ねる。
「では、改めてプラーデラ王国の国王務める者として問う。プラーデラ王国将軍補佐務めるミーティよ。お前が今後進む道は何処へ続く?」
今度はミーティにもしっかりと問われている内容が理解できた。
そして、意志ある強い目で真剣にニュールに向かう。
「オレは…私は、今後とも、ニュールニア国王陛下に忠誠を誓い、仕える者の一人として付き従いたいです」
「考えての上か?」
「自分に足りないものを手に入れるには、プラーデラでもっと極めたい…。貴方に受けた恩を返すためにも、敵を弾き守れる…国王の盾になれるぐらいの強さを手に入れたいんです」
一から出直し選択した道には、ミーティ自身の覚悟が入っていた。
「覚悟持っての選択ならば…受け入れよう」
ミーティは自分が進む道を選び…主張し…自身の手で…手に入れた。
不退転の決意で今後進む先を決めたミーティだったが、最初に宣言した事に対して…中々一歩を踏み出せなかった。
まず…いつもながら、ニュールから受ける治療に伴うミーティの呆れた行動…のせいで、ミーティはモーイに近づくことを許してもらえなかった。
子供のように悄気たミーティは、哀願し…話を聞いてもらえるように…願い乞う。
あまりの低姿勢なミーティの様子に、距離を開けつつも話を聞く姿勢になるモーイ。
「モーイ…聞いてくれてありがとう…いっつも怒らせる様なことしちゃってゴメンな…」
素直な謝罪にモーイの心が少しだけ開く。
「オレ達…多分同じ思いを持っていると思うんだ…」
少し離れた場所で俯いたままでいるモーイだが、耳を傾けてくれているのが感じられたのでミーティは勇気を振り絞る。
「あのさっ…おれっ、ニュールに関わって…近づいて、憧れて、拾われて、救われて…主として掲げ、この人に何かを少しでも返せるなら、命掛けられると思う気持ち持っているんだ…」
まずニュールへの思い語るミーティを怪訝に思うが、確かに其の思いは…モーイが抱く気持ちと一緒だった。
一生掛けても返せない思い…感謝伴う思慕…全て捧げても後悔しないだろうという思い。
だからこそ、全てを受け取ってもらうために…自身の埋まらない思い埋めるために…モーイはニュールを散々誘惑し…篭絡すべく手を尽くしてみたりもした。
モーイの中で巡る思いを包み込むように…優しく…そして熱い思い込めてミーティが続ける。
「だけど…それとはまた違う感じかもしれないけど…モーイに対しても…同じようにオレ…命捧げられると思うんだ」
ミーティの言葉は真剣だった。
「オレ、モーイのこと大好きだ! だから…同じ方向へ…モーイもニュールへの思い持ったままでも良いから、一生一緒に進んでいけたら良いなって、だから…」
モーイは答えにならない答えの代わりに、今までの思い溢れ…涙を流していた。
ミーティはそれに気づくと、離れていた距離を一瞬で埋めてモーイを抱きしめる。
ただただ、思いを込めて…思いを受け止めて…。
そしてミーティが伝えていた最後の言葉は、モーイの耳元で囁かれることになった。
「…だからな…、モーイが納得出来る時が来たら…オレと結婚して欲しい…考えてみて…」
純粋な…思惑も状況も考えない年頃ならではの告白…全てを飛び越え凌駕する。
その一足飛びの告白に、モーイは言葉受け取るだけで手一杯で何も考えられなくなった。
会見済ませた後のニュールの行動は早かった。
一応公式訪問と言う感じに整えたので1日滞在して接待や視察なども行うが、翌日の朝出発する事は決定事項としていた。
「オレは明日朝一で移動するから、お前らは自分たちの体調や希望に合わせて行動しろ…」
「えっ、ニュールと行った方が楽じゃん!」
ミーティとモーイに告げると、ある意味ミーティからは予想通りの答えが返ってきた。
体調はニュールの治療で長短時間での回復を果たしていたし、確かに問題はない。
「いやっ、ゴタゴタしてたし…居心地悪い状況だっただろうから、碌に休んでないだろ?」
既に、集落での状況は全て把握しているニュール。
折角、祖母アクテや母イラダと過ごせる状況になったのであるから…と気を遣う。
「子供の頃からあんなモンだったし、用事は済んだんだし…気になんないよ。行きたくなったらまた休みとって行くから大丈夫だ!」
好きな時に休み取る気満々であるが、直属の上司であるピオが居ることを忘れているようである。
「モーイは良いのか?」
「アタシは早くフレイに会いたい!」
ミーティからの予想外の最終告白…まで受けて内心動揺するモーイは、少しでも相談できる場所が欲しかったので心からフレイに会いたかった。
モーイがその場で拒絶しなかったため、検討はしてくれると判断した楽観思考のミーティは、 "告白成功!" …っと相当浮かれている。
そうして、あせる心持ちのモーイの希望により…申し出通り結局3人で…一緒にエリミアへ行くことになる。
側近の者たちは森の転移陣使わせてもらい、既に早朝…直接プラーデラに戻した。
今更だが、最初に来た時の陣が集落の長達の策略によって破壊されていた事が知らされる。
それにも関わらず…事も無げにニュールが修復し転移陣使っていたのだ。もっともミーティが懐に持つ転移魔石の横には、問い合わせの返信が既に戻っていたようだが…其の事には後から気づく。
重要な確認を怠ったミーティの杜撰な行動、頭の上に軽く拳固が降ってきたとしても致し方ない。
プラーデラに戻る前にエリミアの賢者の塔を訪ねるのは、ミーティ達の予定に組み込まれている旅立つ前から与えられたお楽しみ事項。
そこへニュールが同行することになったのだ。
実際は別行動希望したのに、無理やり同行されたのはニュールの方である。
「皆、何だかんだ忙しく過ごしていたから、1の年近く直接は会ってないか…」
ニュールの呟きにミーティが乗っかる。
「そうだよなー、フレイがどーんだけデッカクなってるか楽しみだな!」
「お前っ!! 何かその言い方、厭らしい感じだぞ!」
「えっ、オレ別にフレイの乳がデカくなってるのを期待してるとか言ってないぞ!!」
「今、言ってるぞ!」
「変なこと考えてないもん! オレの好きなヒトは此処に居るんだから関係ないさ」
そう言ってモーイを抱きしめるミーティ。
「ばかっ!!」
告白の返事を返してないとはいえ、抱きしめるミーティを拒絶することもなく、言葉は強いが許容しているモーイ。どう見てもツンデレ属性…というやつ。
もし、この後ミーティへお断りの返事をしたとしたら、気の毒…としか言いようがないだろう。
不毛な…まとめて馬鹿が付くような2人組…彼氏彼女の痴話げんか的遣り取りに巻き込まれているニュールは、煩くて面倒な状況の中で気が遠くなる。
「…やっぱ面倒だから、オマエら別口で行け」
手をヒラヒラしながら追いやるが全く気にしてない様子…いつもながら話を聞く気はない様だ。
「何か、皆で旅してる時みたいでワクワクするな」
ミーティが無邪気に…背が伸びて楽に届くようになった腕を、今度はニュールの肩に回す。
「うん、懐かしい感じだな」
そう言って、今度はモーイまでニュールの腕に絡みつく。
ニュールも大きな溜息をつきながらも、諦めたかのように楽しそうに笑う。
「あぁ、まだまだ旅は終わらないからな…」
ニュールは転移陣の青い輝き放つ起点を作りながら改めて告げる。
「覚悟を決めたなら出発するぞ!!」
そして残像残し、次の場所へ飛び立つのだった。
予定7話だったのに長々お付き合い頂きありがとうございました。
引き続きポツリポツリとは、おまけ話追加予定です。
別話として、一部の人物参加する違う時代の此の世界も描く予定です。
皆さんの目に留まり楽しんでもらえるようボチボチやっていきますので、
気楽に気長に見守ってください。
また宜しくお願いします。




