表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

198/281

おまけ4 振り出しに戻って進もう~ミーティとモーイの第一歩 14

「そんだら、まずは此の機会に全部集められるだけ集めちまうだい!」


アクテは今後の遣るべき事…溢れ出た穢れた魔力の回収…を、一見余裕ある素振りで宣言する。


「えっ? そんなにいっぱいは集めらんねぇだろ! オレが取り込んだ魔石って、結構小さな欠片だったぞ」


「たわけ者が!! 魔石は大きさより、質が大切だい! 其ぐらいは何度も説明聞いとるじゃろうが…図体ばっかり育ちおって! 少しは頭も育てい…だから周囲から甘く見られるだい…」


思わず小言の嵐をぶつけてしまうアクテだが…片付けねばならぬ重大時の前であり一応途中で言葉飲み込む。

慣れっこのミーティは、いつもの様に右から左だから気にもしてない。


「お前さんが取り込んであった闇石は空じゃったから…まぁ、何とかなる…って言うか、遣らざるを得ないんだい…」


「何でだ?」


アクテの口が重くなる。


「さっきワシはお前を探す前に、導かれた…内包する闇石に溜まる穢れた魔力の状態を確認していたんじゃが…」


ミーティもモーイもアクテの次の言葉を待つ。


「連鎖が続いている…」


そして、事件の始まりの状況を分析し語り始めた。


「ラオブがあの場所で闇石の魔力動かしたのは、魔力が収束する連鎖を期待したんだとは思う。そして、処理しきれない魔力をお前にぶつけるためだったんじゃろう。お前が闇石を内包する者でなければ、ラオブの目論見通りお前さんも穢れた魔力に呑まれとったかもしれんな…」


アクテは現実に起こり得た可能性と…更に続けて、此れから先に待ち受ける可能性を語る。


「それに、あのまま暴走すれば…聖域への道も破壊される事になっただろう。それによって此の地がお役目果たせなくなれば、樹海の均衡が崩れ…被害は甚大じゃい。そして…此の状態のままでは、未だに其の結果が導かれてしまう可能性は高いんじゃよ…」


「樹海の均衡が崩れる…って」


今まで横で聞いてるだけだったモーイの口から、小さな呟きの様な疑問が漏れる。それは、モーイが耳にした事がある言葉だったからだ。


「樹海の均衡が崩れると、樹海には遷化の波が押し寄せるじゃろう…」


其の言葉を…モーイは、かつて裏の仕事請け負うため出入りしていた酒場で…聞いたことがあった気がした。

アクテは良い機会…とばかりに2人に軽く説明をする。


「集落がある場所は、負の魔力が集まり湧き出す場所なんじゃよ…。往古よりデュアービル…神通る地…と、この土地が呼ばれていたのはそのせいだい。魔輝は制御出来んが、湧き出しは管理できる…だからワシら樹海の民は、サルトゥスで往古の機構働かぬようになった時、王国と取引したんだい」


「取引?」


「穢れた魔力を闇石に集め、王国に納品することで…王国の管理地だった此の場所を使用する許可…をもらい、代わり湧き出しの処理を…使命として請け負ったん…だい」


アクテが話す…とばっちりの様な迷惑としか言い様のない契約に、思わず呆れるミーティ。


「なにも…この広い樹海でワザワザそんな場所を選んで許可をもらわなくたって…」


「もともと王国の管理地だった時からワシら一族が責任者じゃった…だからまぁ、ある意味、王国からの独立…と言った感じだったんじゃ。まぁ、これ以上を知りたければ…此の空間を探る力持てば、自ずと謎は解けるだい。それよりも今は集まっちゃったヤツを何とかせんとな…」


そしてアクテがニタリと笑う。


「方法は3つ程考えられる」


指を立てながら提示する。


「まず1つめ。お前さんの闇石を剥がす方法。此れは手順を探し出すの時間がかかるから直ぐには難しいが…お前さんの様な2種持ちならでは可能な非常手段として伝えておく」


予想外の方法を聞きミーティは継ぐ言葉思い付かなかったが、アクテは構わず続ける。


「2つめは、穢れと魔力を分離して穢れのみを処理して消すこと。実際に出来るなら最善ではあるが…今のお前さんには難しいだろう…」


此れは取り込んだ本人が分離して送るしか叶わないから、出来ない…とアクテは判断した。


「3つめは、今集まっている魔力を方向付け、回路の先へ送ること。此れが残されている選択肢であり…実質はこの一択だ」


アクテが選べると選択した方法。


「ワシらが遣るべきことは、ミーティの回路を使いモーイが魔力操作し、ワシが導く…此れが最良の道筋だい」


「…なぁ、それって婆ちゃんどうなるんだ?」


「まぁ、なるようになるだよ…」


アクテは強い意志持つ笑みを浮かべるが、それを打ち砕くぐらい強い真剣な表情でミーティが述べる。


「婆ちゃんも助かる策で無ければ、オレは乗らないよ」


「…遣らざるを得ないんじゃ。遣らねばこの一帯…集落は勿論、近場の街まで負の魔力に飲み込まれるぞ…連鎖が起こっちまった時点で個人の思いなんぞ越えた話になっちまってるんだ」


その言葉と、アクテの覚悟にミーティもモーイも説得する言葉を失う。



納得はしていないが動き始める。

意識下…3人で手を繋ぐ。不服はあるが意志をまとめ、穢れた魔力の流れを探り…辿り着く。そして、アクテが事態終息させるために指示を出していく。


「モーイは魔力の流れに干渉して少し流れを乱すだ」


「アタシは魔力回路が…」


「関係ないだ。此処はミーティの意識下に存在する空間、回路はミーティのが存在する。必要なのは操作する意思と動かす技術だい」


力強くアクテが断言する。


「大丈夫だい。こんだけ太っとい回路なら、少しぐらい潰しちまっても問題ないさ」


事も無げに人の回路扱おうとする2人に、少し怯えて情けない顔をするミーティ。その横で、アクテは楽しげにニタリと悪い笑みを浮かべる。


「わかった、遣ってみるよ」


その日常を感じられる会話で少し肩の力抜けたモーイが、アクテの導きで魔力操作を行い始める。

アクテは背後から手を添え、補助してくれた。優しく力強く手本となる魔力の流れを作り出し、一緒に穢れた魔力へ干渉する。


「ミーティの意識下であり…直接関わるよりは影響受けにくいが、奴ほどお気楽呑気じゃないワシらは、負の魔力の影響を受けやすいから気を付けろ! 特にワシが手を離したら気を抜くな! …初めの衝撃に耐えれば、その後は楽になるぞ」


その言葉と共にアクテの手が離れる。


「!!!!!」


モーイは絶句する。

魔力そのものの強さや衝撃は大したことは無かったが、穢れた魔力の影響力は凄まじかった。

自分自身の中に存在する悪しき記憶…両親の願いを聞き入れてしまった事や、仕事で片付けてきた者達のの事など…そこから吐き気のするような感情が掘り起こされる。


自身を貶めくびり殺していく様な…過去にもたらされた、ありとあらゆる不快な記憶と感情…自虐的思いが次から次へと湧き出し、心を責め苛む。目を瞑り耐えるが、苦しさに…無意識に…意識下なのに涙が溢れ出る。


その時、背後から支える様に…ふわりと包み込まれた。

ミーティが、優しくモーイを包み込んでいる。


「オレが一緒に居るから…側に居るから…」


心配そうにミーティはモーイを抱き締めていた。


「ばっ、婆さんも居るだろ!!!」


思わず正気を取り戻す。


「あぁ、まだくたばっとらんぞぉ! 曾孫が出来る日が近付くのぉ、善き事だい」


生暖かい目で見守られてしまい居たたまれないモーイ。


「ミーティの包容で、上手く干渉し制御する事は出来た様だな…」


そしてアクテが真剣な目で2人を見やり口を開く。


「そんじゃあ、ワシが出口開き持っていくから、モーイは魔力が逸れない様に流れを維持して…ミーティは押し出す様に圧をかけ続けるんじゃ」


そして満面の笑みを浮かべ告げる。


「辛い時はお互い支え合えば乗り越えられる事も多かろう…お前さん達が幸せであることを心から願っとるだい」


するとアクテは有無を言わせる間を与えず闇石に流れ込んだ魔力を掴み、流れ込みつつある魔力を誘い…闇石の中へ一歩…。


その瞬間ミーティが叫び拒絶する。

ミーティの意識下であり、最終的な権限持つミーティの拒絶は全ての行動を制約する。


「オレ、こんな選択望んでないよ! 婆ちゃんの犠牲の上に立ちたくない!」


「この期に及んで馬鹿言ってるんじゃないだ!!」


その一刻を争うかの様な状況下での制止に、アクテが憤る。それでも駄々っ子の様に譲らない。


「それでも嫌なもんは嫌だ!」


「あぁ、アタシも同じだ」


モーイもミーティに同意する。


「馬鹿もんが!!! お前さん達の…集落の…周りのもんらの…未来が…!」


「オレらだって勿論だけど、婆ちゃんだって大切だ! 手をこまねいて見過ごすのは悪手だけど、犠牲になることが凄いことじゃない!! 一緒に助かった方がもっと凄いんだ!!」


「今から何が出来ると言うんじゃ」


「2番目の作戦で行こう! オレ頑張るから、穢れのみ引き剥がそう! そうすれば勝手に消えるじゃんか」


穢れた魔力の問題点は、魔力に負の意思伴う故に悪影響もたらすことである。

それが別物ならば…魔力は魔石の中に留まれば良いものだし、穢れた負の思い纏う意思は留まる力を持たぬ…ただの思いでしかなくなる。

妄執の分離は、通常大賢者が賢者の石を介して行うものである。

しかも大賢者でさえも失敗することもあるのだ。

それだけ手強い執着と言うことであり、その力が魔力を歪めるのだ。


「可能性が有るならオレはそっちを選びたい」


そしてモーイの方を向く。


「丸く収まるのは誰かが犠牲になることかも知れないけど、オレはオレの婆ちゃんを見捨てたくない…巻き込んでごめんな!」


「アタシも同じ思いだ…って言っただろ!」


「そんじゃあ、オレ魔力操作は下手くそだからさ、手伝ってくれ」


「あぁ、任せろ!」


モーイは自信持ち力強く答える。


「婆ちゃんもその導いたヤツ、チャッチャと持ってきてくれよ」


事も無げに言うミーティに、アクテは大きな溜め息をつく。そして諦めと共に…覚悟を決める。


「覚悟したなら、死ぬ覚悟で気張りな! 成功しなきゃ、ただの阿呆だよ」


アクテに喝を入れられシャキリと3人で立ち向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ