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竜宮島の乙姫と一匹の竜  作者: 田村ケンタッキー


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竜之助の身の上話 了

 町中の大通りを大胆に走っても追手の姿はない。

 どうやら守備を固めているようだ。

 山吹邸は賑わっていたし、町も夜だというのに賑やかだった。

 祭りではない。喜びではなく、絶望に満ちていた。


「おい、見ろ……山が燃えている……」

「やだねえ……火の粉がこっちまで届かなきゃいんだけど……」

「この一大事に山吹家は! 竜頭家は何をしてるんだ!」


 不安に駆られるのはよく見ると服が上物の町民といったところ。

 贅沢な暮らしと程遠い人間は野良猫のように地べたに横たわり、遠くで上る煙を一瞥だけするとまた横になる。


「こりゃいい。混乱に乗じて脱出するとしよう」


 いつ西方将軍が我に返り追手を寄越すかわからない。皆の視線が山火事に集まっているうちに脱出を図る。

 もうこの町、この周辺の土地でお天道様のもとで出歩くことは出来ない。

 西方将軍の言葉から察するに自分がしでかした悪行は国中に広がっていると見られる。

 現在地を把握した後に都からもっと離れなくてはいけない。

 離れて、逃げて……それから……。

 山道に差し掛かったところで足が止まる。


「離れて、逃げて、それから……どうするんだ」


 いつまで安寧のない逃げる生活を続けなくてはいけない。

 暗闇の洞窟の中で会った女を思い出す。

 恐怖に震える日々を送り、しまいには潔く死を選んだ彼女が羨ましく見えた。


(いっそ、俺も……)


 自死が過ぎるも首を振る。


「あんなのは綺麗ごとだ……結局はどうしようもなくて死を選んだに過ぎない」


 とにかく生きるだけで精一杯だったのに、生きたうえで何をするかまで考えるようになってしまった。まことに面倒になった。

 これも感情に身を任せた自業自得と言えるのか? 反省も後悔もあるが納得はしていた。

 もしも仮に時間が戻ったとしてもお師匠様の死を目の当たりしたら同じことをしでかすだろう。


「俺は……どうしたら……」


 此度の騒乱を一から振り返る。

 損だらけに見えるが得たものも確かに存在する。

 思い出すと股間が勃起する。


「っはは……仙人様の弟子と言えどこの程度よ……男の性からは逃げられない」


 逃亡生活に少しでも余裕が生まれたのなら、こんなろくでなしでも身体を貸してくれる女を探すとしよう。もしくはこのろくでなしに見合う、ろくでなしの女でもいい。

 クズそのものの目的であったが、歩く先に轍や獣道が見えると幾分か心は安らぎを得られる。

 そして放浪の旅のさなかにとある噂を耳にする。

 はるか西の海に孤島があり、悪政を布く城主がいる。その城主には絶世の美女の娘がいると。

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