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水面と海底

 竜之助は気付くと身体の芯まで凍る冷たい海に沈んでいた。

 一方は光が照る水面。一方は底が見えない暗闇。

 息が苦しい。いつから海に潜っていたのは定かではない。溺れたくない一心で光に向かって必死に手足を動かすも浮上せず虚しくも海底に引きずり込まれていく。

 息が止まるのが先か、寒さで心臓が止まるのが先か。

 無情。なのに妙に納得できる最期とも思えた。

 手足の感覚が失われていく。そして凍って動かなくなる。


(……やだ、俺は死にたくない、こんなさみしい場所で……)


 身勝手な願い。

 いくつもの命を奪ってきたというのに自分可愛さが際立つ。

 死に際は本性が浮き立つという。

 ならばこれが竜之助の本性。

 誰からも看取られず、見知らぬ場所で朽ちていく。

 それが竜之助にとって怖くて仕方がなかった。

 心さえも凍てつきそうな時、


「……のすけ……」


 誰かの声が聞こえた。

 心を温める優しい声。かじかんだ手を揉んで温めてくれるような温もりに満ちていた。


「りゅう……の……」


 身体はとっくに動かず、呼吸も止まった。

 なのに今更身体は浮上を始める。


(ああ、この声は……)


 声の主を顔を思い浮かべた瞬間、


「起きろ! 竜之助! いつまで眠っている!」


 乙姫は布団を持ち上げ、竜之助の身体は畳に投げ出された。

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