こうのとりのゆりかご
こうのとりのゆりかご
高木和久
気が付くと、ゆりかごに横たわっていたんだ
僕は毎日お祈りをしていました
浮かんできた場所は砂嵐、ちょうどテレビ放送終了後のあの画面です
お父さんも、お母さんも僕をいじめないでください
両手を合わせ
神様、アーメン
そしてお釈迦様にもなんまいだ
悪い人なんかじゃない
許してあげてください
ただたまたま僕に対して強気に出てしまうだけなんです
あっ冷たい夜の静寂のすきま風
このバスケット篭のようなベット
ぼくはサンドイッチなんかじゃないんだぞ
神様にお祈りをしよう
手がかじかんだら
祈祷におねだり
この小さな
真っ暗闇の世界で
僕は空へ向かって
手を力一杯 さしだす
三万人の親なしの家
150人の赤子の亡骸
お母さんお父さんどこにいますか
兄弟がいたら元気ですか
僕はあなたを抱き締めたい
ただ静寂の中で
世界中で僕らの耳がロバの耳になっても
世界中の音があなたから息を潜めても
世界中であなたの生きる役割がある
あなたが生きているから世界がある
神父さんは備え付けのインターフォンで教えてくれました
お母さんへという手紙を残して
そう、僕がそのゆりかごの赤ちゃんなんです