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ED75


 ED75というのは、どうにもよく分からない機関車である。

「何が分からないのか?」ですって?

 あの台車でやんすよ。DT129とかいう。


 鉄道模型をやっている方ならご存知だろうが、台車というものはネジで留められている。

 中心ピンと言い、台車はこれを中心にくるくると首を振るわけだ。


 ところが世の中には、この中心ピンを持たぬ台車があるという。

 DT129がそれ。

(この台車はED75以外にも、ED74、76、77、78、79 EF71で採用しているから、結構な大所帯ではある)


 台車ならすべて持っているべき中心ピンを持たぬなど、まるで幽霊のような気がするが、物事にはなんだって事情がある。

 実は中心ピンには欠点があるのだ。


「発進時に、軸重移動の原因になる」


 自動車を運転するとき、アクセルを深く踏み込んでエンジンをふかすと、グイと自動車の鼻が上を向く。軸重移動とはあれのこと。

 ああ、ここで下手な絵を描かねばならんのか。


 これは台車である。省略して1個のみ描いた。



(台車枠)

 〇 〇



 この説明図の意味が分かればそれだけで天才的だが、列車の発進時にも、自動車の鼻が上を向くような現象が起こる。

 図の台車は右から左へ走ってゆくとして、



(台車枠)

 〇 〇

 ↓ ↓ 

 軸 軸

 重 重



 発進時には前方車輪の軸重が軽くなり、かつ後方車輪の軸重が重くなる。前方から後方へ軸重が移動するように見えることからこの名があるが、実際にはこの現象は、台車枠の回転である。


 モーターの力で回転する車輪は加速力を生み、台車を左へ引こうとするが、同時に車体は引き戻し、台車をその場にとどまらせようとする。(慣性の法則)



  車

  体

  の

  慣

  性

  →

(台車枠)

 〇 〇

 ← ← 

 加 加

 速 速

 力 力



 だから「台車枠」は、図では時計回りに回転しようとする。その結果として、軸重が移動するわけだね。


 軸重が変動しても、いいことはない。増えた軸重が線路を痛める。あるいは車輪自身を破壊してしまう(C59で例があるそうな)。


 また、減った軸重は空転の原因になる。運用上はこちらの方が大きな問題らしく、例えばD51はフロントが軽く、第1動輪が空転しやすい機関車として有名だったそうだ。

 空転した機関車は、場合によっては発車不能におちいることがある。


 では、この軸重移動をどうやって防ぐのか。車体の慣性が台車に伝えられるのは中心ピンなのだから、


「いっそ中心ピンを廃止してしまえ」


 という過激な意見が出てくるわけ。

 中心ピンさえなければ、確かに軸重移動は起こりません。

 そのかわり、台車のけん引力をどうやって車体に伝えるんですかね?


 ここから先が、まるで魔法のような、あるいは「キツネに化かされているような」気がしてくるんでやんすが、鉄棒と蝶つがいを組み合わせたもので車体と台車を連結し、実体はないけれど、仮想的な中心ピンを置くことに成功したのです。

 このおかげで、中心ピンは存在しないけれど、あたかも存在するかのような挙動を台車は取ることができます。


 しかもこの作戦のおいしいところは、この「仮想中心ピン」の高さを自由に設定できることでして、なんとDT129では、仮想中心ピンは「レール面上」に存在することになっております。

 つまりレールと同一高さね。


 発進時、回転する車輪が加速力を生むのもレール面上です。車体の慣性力による逆向きの力も同一の高さで発生するので、2つの力は平和にキャンセルアウト。

 軸重移動は起こりません。



 中心ピンをレール面上にまで下げることはできなくとも、

「1ミリでも下げて軸重移動を小さくしたい」

 というのは国鉄の念願だったようで、それを最初に試みた台車がDT106のようだ。

 ED60、61などの台車で、車体から下向きにグイと腕を伸ばし、中心ピンをかなり低い位置に抑えているのが、あのおかしな顔の台車の理由なんですな。 



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