ロープ
どんな新しい電車にでも備わっている設備だけど、何とも原始的な方式なので面白く感じるのが、パンタグラフを上昇させるためのあのヒモ。
電動車のパンタ側の妻板にあり、屋根上から下ってきてブラブラしていたり、ケーブルだったり、あるいはロッド式だったりする。
ELと違って電車のパンタはバネの力で上昇させるから、畳まれているパンタを上げるには、ただフックを動かしてロックを外してやればいい。
そのためには電力が必要になるが、バッテリーがちゃんとしている時はそれでよろしい。
運転台でスイッチを押せば、パンタはポンと上昇してくれる。
だがもしも、バッテリーに十分な電気がなければ?
「仕方ねえ」
あなたは運転台から出て、線路上を歩いていくことになる。
そしてパンタ車の妻板の前で背伸びをして、このヒモを手で引っ張るわけだ。
このヒモが機械的に接続され、フックを引いて外してくれる。
ただ私自身、このヒモが使われる場面を目撃したことがないことは、白状しておかなくてはならない。
もちろんこのヒモは、あなたを感電させることがないように絶縁が施してある。
材質が麻(と思う)なのはそのためだし、鉄ロッド式の場合でも、手元とパンタの間には必ず絶縁性の物体が入る。
それが鉄道会社によっては、プラスティック製のボールだったりするのがまた面白い。
1500ボルトを絶縁すればいい直流電車の場合にはこれでいいが、交流の場合はどうするのだろう。
観察したことがないので想像だけれど、交流電車にはこのヒモは存在しないのかもしれない。
バッテリーの管理をひたすら強化するだけで、ヒモが必要になる事態を引き起こさないようにすることぐらいしか、私には対応策が想像できない。




