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 昭和時代のある日、鉄道省内部において、下記のような会話はおそらくなかったはずである。


「おい今度、鉄道博物館を建てることが決まったからな。展示の目玉になるめぼしい機関車を集めとけよ。リストはこれだ」


「はいはい、リストを拝見いたします。おや、これはまずい」


「どうした?」


「まずリストのトップの1号機関車なんですがね…」


「汽笛一斉新橋を…の有名なやつだ」


「それがもう、この機関車は我々の手元にはないのでして…」


「どうした? まさかスクラップにして解体しちまったのか?」


「そうじゃありません。ただ民間の私鉄に売却してしまいまして」


「売却? 譲渡したのか? どこの私鉄だ?」


「島原鉄道といって、九州の私鉄です。まだ走っている…、少なくとも解体していないといいんですが…。あっ、いま調べが付きました。今でもまだ島原鉄道で走っているそうです」


「ふふふ、一瞬どうなるかと思ったぜ。記念すべき日本の第1号機関車を解体だなんて、冗談でも言うねえ」


「はい、なんとか買い戻す手続きをいたします」(※)


「それが一番だな。じゃあ次だ。SLの第1号は済んだとして、ELの第1号はどうだ? EC40はどこにある? どこかの車庫か工場の片隅にでも保管してあるのだろうな?」


「ああ、いえ、それがその…」


「まさかお前、ELの第1号もどこかへ譲渡したっていうのか?」


「EC40は12両あったんですが、碓氷峠にED42が増備されてくると、使いみちがなくなりまして…。特殊な構造の機関車ですから」


「それで、どこの私鉄へ売ってしまったんだ?」


「福井県の京福電鉄でして」


「今すぐ買い戻せ」


「ははい、はいはい、ただいま…」


「では次、EC40は国鉄ELの第1号だが、今度は国産第1号ELのED40なんだが」


「あっ、えっ?」


「今度はどこの私鉄だ?」


「東武鉄道でして」


「すぐ買い戻せ」


「はいはい…」


「次行くぞ。国鉄第1号の電車だ。あれはどこだ? もっとも国鉄が製造したのじゃないが。甲武鉄道を買収した時、そこの電車が結果的に国鉄第1号電車になったという…」


「それはその、松本電鉄(→アルピコ交通)に売りました」


「すぐに連絡を取れ…。では次いくぞ」


「はい」


「第1号というわけではないが、大正年間には木造国電が大量に作られたろ? 展示品として必要だろ? あれの1両くらい、どこかに残ってないのか?」


「はい、日立電鉄から買い戻してまいります」


「では次だ…」


(以下略)

世の中、どんなものにも苦労はつきもののようで…



(※)実際には1440という機関車と交換された。


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