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1. 水曜日


「くそっ」


 マルチェロ・フォスカリーニは顔を歪ませて自慢の栗色の髪を掻き上げると、きれいな文字が並ぶ手紙をぐしゃりと握りつぶした。


 窓の外は薄暗くなっている。人々の笑い声が騒がしい。もうじき夕刻の鐘が鳴るだろう。

 扉が叩かれ、部屋に召使いが入ってきた。


「ゴンドラの用意が整いました」


 その言葉にマルチェロは唸るように答えた。


「すぐに下りる。玄関口で待つように言え。それと行き先はサン・マルコだ」




 金の縁取りの三角帽子を被り、ポルテゴを下りて扉を開けると、外の賑やかな笑い声が一層強まったように感じる。

 ポーチで待たせていたゴンドラに乗り込んで「出してくれ」と声をかけると、船頭は「へーい」と言って小舟を夕闇の運河に漕ぎ出した。


 運河から見える脇道は、仮面や色とりどりの衣装に身を包んだ群衆で溢れかえっていた。やはりゴンドラで移動するに限る。

 マルチェロはごった返している岸辺を眺めながら白く肌触りの良い絹の手袋をはめた。時々すれ違うゴンドラには、自分と似たような服装の者や、仮装した者たちの群勢が乗船していて、どの水路もおしゃべりがこだましている。


 船頭が言った。


「旦那、結局行き先はほんとにサン・マルコでいいんですかい? ゴンターニ邸ではなく?」


 マルチェロはふんと鼻を鳴らして答えた。


「仕方あるまい。もうあれとは金輪際顔を合わせるつもりはない。私にその名を思い出させるな」


「そ、そんな、俺に八つ当たりせんでくださいよ。今まで通ってたから、俺はただ変だなって思っただけで……」


 船頭はそこまで言ったが、マルチェロが鋭い目を向けてきたので「はいはい、なんでもございません」と言って櫂を進めた。




 今日は灰の水曜日の1週間前。この国ヴェネツィア共和国でのカーニヴァルのにぎわいも昨日よりうんと増していた。夜になると皆サン・マルコ広場や賭博場のリドット、またそれぞれの貴族たちの屋敷に大勢が集まり、見世物やダンス、賭博に興じる。日が沈むとその数はどっと増した。


 今夜はダンドロ邸で盛大な夜会が開かれることになっており、皆がパートナーを連れて出向いていた。

 ダンドロ氏といえば、この共和国でも総督に次ぐ財務官の地位に就いており、その権力は新興貴族である総督よりも実質的に優っていると言われている人物だ。

 マルチェロは彼に自分の存在を認識してもらうため、また彼の屋敷に出向くことで他の貴族たちに自分の地位と誇りを示すためにパートナーを連れて参加するつもりだった。

 しかし、クリスマス以前からともに行動していたゴンターニ家の令嬢ベアトリーチェから、今日の夜会の付き添いを当日になって断られたのである。


“あなたと過ごした夜も素敵だったけれど、私はやっぱりレオナルド様を愛しているの。ごめんなさいね。彼からのお誘いなんて夢みたい! あなたも素敵な女性と出会えるといいわね。幸運を”


 マルチェロは先ほどの手紙の内容を思い出して歯ぎしりした。一体私がどれだけ君に時間と労力を費やしたと思っているんだ。今夜のためにたくさんわがままに付き合ってやったのに。


 運河をくだると二本の柱が見えてきた。ようやくサン・マルコ広場に到着のようだ。

 見渡す限り人、人、人である。それもほとんどが仮装して仮面をつけているから、誰が美人の高貴な未婚女性かわかったものではない。

 眉をしかめている主人を見て、船頭は櫂の手を休めて言った。


「旦那、この中からパートナーのいないご令嬢を探し出すなんて無理ですよ。そりゃあいないことはないかもしれませんがね、なにしろみんなが仮面をつけてる」


「ここがだめなら修道院で探すまでだ。ダンドロ様に夜会に行くと言ってしまった以上、絶対見つけてやる。ひとりくらいめぼしい女がいるだろう」


 船頭は肩をすくめて櫂を漕ぎ、ゴンドラを桟橋へ近づけた。


「まあ、旦那がそういうなら止めはしませんがね……綺麗なドレスを着ていたとしてもここには娼婦もいますから、間違えないようによくよく気をつけるんですよ」


「わかっている」


 マルチェロは舌打ちをしながらゴンドラを降りると、広場の方へと向かった。

 全くあいつは無駄口が多い。屋敷を出るときはいつもあの男を使っていたが、お節介が過ぎるなら別の船頭にかえてしまおうか。

 そんなことを考えながらマルチェロは広場の入り口に来ると、腰に手を当てて仁王立ちした。

 人混みの中を探し出すのが困難であることくらい承知の上である。しかし、“堅気”の美しい女性を見つけるのは自分の得意とするところだ。マルチェロはさっそくかたっぱしから声をかけることにした。



 結果はというと惨敗だった。さすがにこの時期にはカーニヴァルの騒ぎもたけなわ、貴族の装いをした女たちは皆もう運命の出会いをしたパートナーを連れており、付き添い人だけの令嬢は見つからない。

 ひとり、上等なレースでできたバウタに仮面をつけた婦人を見つけて「美しいお嬢さん、おひとりですか」と声をかける。彼女は曖昧に小首を傾げるだけで返事をしない。と、突然背後から殺気立った声で「彼女は私の妻だ、このフォスカリーニの馬鹿息子め」と聞こえた。

 振り返ると、名高い大貴族のボニベンティが、仮面を外した状態でこちらを睨みつけていた。

 マルチェロは心の中で悲鳴をあげた。


「こ、こ、これはボニベンティ様の奥様であらせられましたか……! た、大変失礼を……」


「カーニヴァルのときは仮面くらいつけておけ、でないとお前の礼儀知らずがすぐにわかってしまうぞ」


 ボニベンティの言葉にマルチェロは頭を下げると、そそくさとその場を離れたのだった。




 マルチェロは旧政庁前の石造りの階段に座り込むと、ため息を吐いた。

 だめだ。これではパートナーを探している間に他の貴族と出くわして恥をかいてしまう。先ほどは寡黙で有名なボニベンティであったからよかったものの、他のおしゃべりな貴族に会ってしまったら噂にされ、パートナーを必死に探しているとモテない男のレッテルを貼られてしまうだろう。

 それだけはなんとしてでも避けたいマルチェロだった。ただでさえ名門ゴンターニ家の令嬢から乗り換えられた身だ。あの女にそれだけの価値があったという体面がせめてもの救いだが……。


 目の前の広場をぼんやりと眺めていると、ふと偶然にこちらを向いた若い女と目があった。そして互いが知った顔とわかると、二人とも目を見開いた。


「あぁら! あんた、マルチェロじゃない!」


 マルチェロはしまったという表情を浮かべ、ふいっと顔を背けた。なぜ私は仮面をつけてこなかったんだ。明らかに顔を逸らした彼に、女はむっとした顔でこちらの方へずんずん歩み寄ってくる。


「ちょっとちょっと! 私のこと覚えてたくせに、その態度はなによ!」


「……忘れた。思い出したいとも思わない」


「ひどいわね、クリスティーナよ!」


 マルチェロは、ぷりぷりと怒りながら手を腰に当てているクリスティーナをちらりと見た。

 前に会ったときより気品のある美しいドレスを着ている。外出用であるためか落ち着いていて、髪も花で飾り、こうしてみればパートナーとしての貴族令嬢に見えなくもない。しかし、彼女は論外だ。


「今日はお前の相手をしている暇はない。他を当たれ」


「まっ! そんなつもりで声をかけたわけじゃないわ。それにこんなところでぼうっとしてるっていうのに、なにが暇じゃない、よ」


 マルチェロはため息をついた。うるさい女だ。貴族令嬢ならこんな風に男の揚げ足を取ったりしない。


「私が探しているのは高貴な生まれの令嬢だ。お前のような娼婦がいたら来るものも来ないだろう、どこかへ行け」


 そう、この美しく化粧を施した彼女は、この国の公認娼婦であった。それもまだ駆け出しで、正式にこの職業に就いてから半年も経っていない。

 数週間前、マルチェロは彼女を買ったらしい。というのも友人と飲んだ酒のせいで全く覚えていなかったのだ。朝起きたらうるさい女が隣にいたなど、マルチェロにとって極力思い出したくない出来事であった。



 しかしクリスティーナの方はどこ吹く風で、マルチェロの低く冷たい言葉にも冗談交じりに答えた。


「ほらほら、そんな険しい顔をしていたら娼婦だって寄ってこないわよ。そうじゃなくっても、貴族のお嬢さんはもう単独では広場にいないと思うわ」


「……くそっ」


 マルチェロは本日2回目の悪態をついた。

 今夜はツキがない。いつもならこうして顔を明かしていれば努力せずとも寄ってくる女はたくさんいるのに。そう、自分は若く見目麗しい容姿をしているから、仮面をつけずにいた方が良いと思ったのである。先ほどはそれが裏目に出たわけなのだが。


 クリスティーナは少し気の毒そうな表情を浮かべた。


「日が悪かったのよ、灰の水曜日まであと1週間だもの。日の高いうちから私はここにいるけど、ジュデッカから来た修道女達だってみんな相手を見つけていたわ。今から修道院に行ったとしても空振りなんじゃないかしら」


 マルチェロは両手を顔に当てた。ここ数ヶ月あのゴンターニ家の令嬢にばかり会っていたことがほんとうに悔やまれる。

 クリスティーナが「それにしたって」と言った。


「貴族っていうのはよくわからないわ。カーニヴァルよ? 相手を決めずに毎夜違う相手と楽しめばいいし、それがどんな人間でもいいじゃない」


「お前たちと一緒にするな。たとえカーニヴァルだろうと威信は示さねばならない。それに私たちにはヴェネツィア貴族であるという誇りがある」


 マルチェロはクリスティーナを睨みつけて言ったが、彼女は目を細めて肩をすくめた。


「誇り、ね。生きにくい人生を歩んでいるのね。もっと楽に生きればいいのに」


「私はお前みたいに刹那的に生きていないだけだ。しかし……」


 マルチェロは諦めたような表情で賑やかな広場を見つめた。人は大勢いるが、めぼしいパートナーは見つからない。今日はもう諦めた方がよさそうだ。

 マルチェロはため息を吐いてから腰を上げた。


「え? もしかして帰るの?」


「仕方ないだろう。パートナーがいないのだから夜会に行っても独り者のレッテルを貼られる。わざわざ恥をかきにいくつもりはない」


 ダンドロ邸の主人には今度あった時にお詫びしよう。何か理由をつけて行けなかったことにすればいい……悔しいことだが。

 マルチェロの伏し目がちな顔を眺めながら、クリスティーナは手を口に当てて少し考えて言った。


「ねえ、こういうのはどう? 私はご存知の通り、この仕事を始めたばかりだから貴族の方々には名前も顔もあんまり知られていない自信があるの。だから……」


 マルチェロは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「だめだ。お前に貴族令嬢のふりなんかできるものか。今回うまく皆を騙せたとしても、お前が売れるようになって連中の間に顔を知られてしまっては、私が後になって恥をかくだけじゃないか」


「ばかねえ、仮面を買えばいいじゃない。私は諸外国から来たお忍びの貴族令嬢になるわ。あまり話さなければいいし、ダンスもしない。礼儀だってそこまで必要ないじゃない。第一に今は無礼講よ」


 確かにクリスティーナの言い分ももっともだった。

 多くの貴族紳士は高貴な令嬢を連れていることを誇りとしている。しかし彼女たちはお忍びでやってきており、皆が仮面をつけているので、正体を探ろうとするのは野暮なのである。

 クリスティーナは楽しそうに続けた。


「せっかく招待されているのに行かないなんて失礼よ。来年は招待されなくなってしまうかもしれないわ。ね、行ってみましょうよ!」


 マルチェロは眉を寄せて顔をしかめていたが、やがて「恥をかかせたら承知しないぞ」と頷いた。




******************




 ダンドロ邸内は見事な彫刻と装飾で覆いつくされていたが、それらが見えなくなるほどに大勢の人でごった返していた。

 中央一階のダンスホールも、脇にある賭け事の行われる部屋もとにかく人でいっぱいだ。

 ダンドロ邸の主人は、二階の廊下からその様子を眺めていた。


「旦那様」


 老執事が後ろから主人の耳に口を寄せた。


「バレッティという名の男で間違いありません。バウタ姿ですが赤胴色のタバッロを着ております」


 ダンドロ氏は刻みこまれた皺をぴくりとも動かさずに、ただ「ごくろう」とだけ述べて執事を下がらせた。

 やはり来たか。騒ぎを起こすことはないだろうが、警戒は必要だ。何より今夜はあの方がいらっしゃるのだから。




***************




「ねえねえマルチェロ、あれは? あれはなに?」


 マルチェロは、耳元で大きな声を上げるパートナーに、バウタの垂れた肩をがっくりと落とした。


 マルチェロとクリスティーナはサン・マルコ広場近くの売り場で買い上げたバウタと帽子、仮面を身につけていたので、顔は完全に覆われていた。貴族を意味するその姿の二人を、ダンドロ邸に入る際に門番はなんなく通してくれた。

 しかし、ロビーに入るなりクリスティーナは豪華絢爛な屋敷の装飾に感嘆し、物珍しげにあちこちを指して矢継ぎ早に質問の嵐を始めたのである。


「まあ、きれいねえ! あら見てよ、あの柱の飾り……あれは何のモチーフなの?」


「静かにしろ」


「あそこ見て! きらきらしてる!」


「黙れ」


「あの天井の女の人、なんていうのかしら、ねえマルチェロ」


「おい、聞け」


 マルチェロはクリスティーナの腕を掴んで低く唸るような小声で言った。


「ここはダンドロ屋敷だ。特に賭博場の近くは静かでいなければならない。おしゃべりできる場所は一階のダンスホールときちんと決められている。あまり騒ぎ立てるな」


「騒いでないわ、いつもよりずっと小さい声で話してるんだから。それに私より大きな声の人もいるじゃない」


 クリスティーナが目を向けた方には、きゃあきゃあと興奮した様子ではしゃいでいる若い男女の姿があった。あの様子だと賭けでうまいこといったのだろう。しかしああいう輩は早く外に出ないと、また賭け事を持ちかけられてすぐに金を失ってしまうものだ。

 マルチェロは彼らに冷たい視線を向けた。


「私のパートナーを務める人間を、あんなのと比べたくない」


 その言い方にクリスティーナはめんどくさそうに言った。


「はいはい、わかったわよ。今日は遊びに来たんじゃないんですものね……ああ、でもあれを見て!」


 クリスティーナは美しいロココ調の絵を指して駆け寄ろうとし、マルチェロは舌打ちをして掴んでいる腕に力を込めて引き止める。


「わかっていないじゃないか。そんな様子ならもう帰るぞ」


 クリスティーナはふてくされたように、仮面越しにじとっとした目を向けたが、無言で肩をすくめた。


 マルチェロは、ようやく大人しくなったパートナーにほっと胸を撫で下ろしながら、二階へと続く階段をのぼった。

 階上の廊下は暗く、ひそひそと囁くような声ばかりで、クリスティーナは怖くなったようで組まれた腕に力を込めてきた。

 ここには賭博場が並んでいるが、談話室もあるはずだ。先ほど出入口にいた召使いがダンドロ邸の主人は談話室にいると言っていた。まずはそこでダンドロ氏に挨拶をしなければならない。


 その時だ。


 右側の賭博場の扉がバンッと勢いよく開き、男が「うわああっ」と声をあげながら転ぶように飛び出してきた。

 彼は、マルチェロとクリスティーナのすぐ前をひゅんと通り過ぎると、すぐ前の廊下の壁に顔をダンッとぶつけた。仮面はその衝撃で床にカラカラと落ちた。


 クリスティーナが「うわ、痛そう」と小さく呟いたが、本人は痛みなど気にも留めずに忙しなく辺りを見渡す。そして目の前にいたマルチェロとクリスティーナの間を割るようにして通り抜けると、慌てたように廊下を走り、階段を下りていってしまった。なんだ今の男は。

 それからすぐに、開いたままのその右側の部屋から、非常識な怒声が響いた。


「まてえ! この野郎、いかさましやがって!」


 先ほどの若い男に続いて、今度はやや中年に差しかかった男が怒りの形相で出てきたーーシャツ一枚と白い下着しか身につけていない姿で。

 どうやら賭博で金どころか衣服まで剥ぎ取られたらしい。中年の男は顔を真っ赤にさせたまま、廊下にいたマルチェロにギロッと鋭い視線を向けた。


「貴様、逃げられると思うなよっ!」


 マルチェロは突然言われてぎょっとした。


「え? ま、まってくれ、人違いだ。さっきの男ならすでに下の階へ……!」


「歯あ食いしばれ!」


 男が拳を振り上げた次の瞬間、マルチェロは後ろの方まで吹っ飛び、クリスティーナの悲鳴が廊下に響いた。




****************




 部屋の外でパタパタと慌ただしそうな音が聞こえる。沈黙がルールのこの邸では珍しいことだ。

 ダンドロ氏は談話室の赤い絹の椅子に腰かけていたが、騒がしい様子に眉をひそめ、扉を開けて入ってきた執事の方を見た。


「何事だ」


「どうやらモディアーニ氏が若い男に謀られ、乱闘騒ぎになったようです。男は逃げ、モディアーニ氏は別の若者を間違えて殴ったと」


 ダンドロ氏はギリ、と歯を噛み締めた。


「モディアーニめ、この大事な日に騒ぎを起こしよって」


 そのとき、部屋の扉が叩かれて召使いが入ってきた。彼はダンドロ氏の前で頭を下げてから言った。


「旦那様、かの方がお着きになりました」


「よし、わかった。八の間で応接する」


 主人の言葉に召使いが出ていくと、ダンドロ氏は立ち上がった。


「……バレッティは捕らえたのか?」


 主人の問いに執事は頭を下げた。


「申し訳ありません、門番の報告から屋敷内にいることは確かですが、騒ぎに紛れて見失ってしまったようで……」


「やむを得ん。ダンスホールに隠れたのかもしれんな。とにかくかの方とは合わせてはならんぞ」


 ダンドロ氏は唸るように怒りの息を吐いた。

 この屋敷は冷静沈着、品の漂う空間として時間をかけて作ってきたのに、賓客の来る肝心の日にこうなるとは。モディアーニは今後一切出入り禁止にしてやる。彼を騙したという若い男とやらも決して逃しはせんぞ。




***************




「いつつつつ……!」


 マルチェロは、冷たい水を含んだタオルから顔をそらした。左側の頬が腫れ上がっており、ジンジンと痛みを感じる。


 あの中年の男は、マルチェロを拳で吹っ飛ばした後に駆けつけた召使い達によって取り押さえられ、階下に下りていった。彼らのうちの一人に休める部屋はあるかと尋ねると、空いている部屋を使って良いと言ってくれた。マルチェロとクリスティーナはそのまま廊下の奥へ進み、そしてこの誰もいない部屋を見つけたのである。


「ほらほら、少しでも冷やしておかないと」


 クリスティーナは長椅子に座るマルチェロの隣に腰掛けると、水で冷やしたタオルを嫌がる青年の頬にそっと押し付けた。


「痛いと言っているだろう!!」


 ほんの少し触れただけで走る痛みに、マルチェロは座っていた長椅子からうさぎのように逃げた。クリスティーナは座ったまま眉を寄せた。


「でも冷やさないと、腫れはなかなか引かないわ。最初は痛いかもしれないけど、当ててしまえばもう大丈夫よ」


「当ててしまえばって……それが痛いんじゃないか!」


 クリスティーナは呆れたように肩をすくめると、自分の隣を手でトントンと叩いた。


「とにかく座って。タオルをただ当てるくらい我慢なさいよ。全くほんとに温室育ちなんだから」


「な、なんだと!? 卑しい身分で生意気言うな、 売女のくせして、よくもこの私を……」


 クリスティーナは侮辱の言葉にすっと目を細めた。


「……あぁらそう。まあ、それだけ元気なんだから大丈夫ね。タオルもなんにも必要ないわよ」


 クリスティーナは冷めたような声で言うとタオルを手に立ち上がった。脱いでいた仮面と帽子をかぶりなおしている。その様子にマルチェロは戸惑ったように言った。


「お、おい、もう行くのか? ま、まさか、私をこのまま置いて?」


「それがお望みなんでしょ? せいぜいその腫れた顔のままお一人を楽しんでちょうだい。仮面もさっきの衝撃で割れてしまってお気の毒さま。でもタオルで冷やさなくてもすぐ治るんだったら大丈夫ね」


 扉の方へ向かうクリスティーナの言葉に、マルチェロは口を歪めようとしたが、腫れた頬が引きつりそれも難しい。涙さえ出てきそうなくらいだ。マルチェロはその顔を見られまいと後ろを向いた。


「くっ……わ、わかった! もうさっさっとどこへでも行ってしまえ!」


 あぁくそっ、今日はほんとうについていない! こんなことならはじめからこの屋敷に来るのではなかった。マルチェロは奥歯を噛み締めた。


 マルチェロの怒鳴り声が響いた後、しばらく沈黙が続いたが、後ろからは一向に扉の開く音、閉まる音がしない。

 おや、どうしたのだろう。不思議に思って振り返ると、顔のすぐ前にクリスティーナがにんまりとした笑みを浮かべて立っていた。手には先ほどの濡れたタオルがかかげられている。マルチェロはぞっとした。まさか。


「や、やめ……!」


 次の瞬間、マルチェロの悲鳴が部屋に響いた。






 タオルを当てたときはその衝撃から焼けるような痛みがあったが、クリスティーナの言った通り、確かに当ててしまってからはひんやりとしたタオルが頬に心地よかった。

 しかし、マルチェロはその事実を認めたくなくて、ぶすっとした顔のまま長椅子に腰掛けていた。


 クリスティーナは彼の顔にタオルを当てながら、その様子ににやにやと笑っていたが、やがて「それにしても」と言った。


「この後はどうするの、談話室で他の貴族と会う? ダンドロ邸のご主人への挨拶もするつもり?」


 マルチェロは表情を変えずに答えた。


「いや、まさか間違って人に殴られたなんて絶対に知られるわけにはいかない。賭博の乱闘騒ぎに関わっていたと噂になるのはごめんだ。ダンドロの主人は騒ぎの処理で今夜はお忙しいかもしれない。一応門番には私の顔と紋章は見せたから出席したという報告は上がるだろう」


 クリスティーナは頷いた。


「そう。それなら腫れがもう少し引いたら帰りましょう。仮面は私のを使うといいわ」


 マルチェロはクリスティーナの気遣いに、一瞬目を丸くしたが、素直に礼を言うことはできずに俯いて小さく頷いた。


 そのとき、突如部屋の扉がガチャッと開き、誰かが足音も立てずに入ってきた。


 マルチェロとクリスティーナは顔を見合わせると、慌ててこっそりと長椅子の背もたれに隠れるようにし、かがんで向こうを盗み見る。

 長椅子は入り口から少し離れた窓際に置いてあるので、闖入者はそこにいたマルチェロとクリスティーナの存在に気づいていないようだ。


 入ってきたのは一人の男で、帽子とバウタ、仮面、タバッロを外し、それらを椅子にかけているようだった。黒い髪に上等な緑の礼服を身につけているのが見える。蝋燭の灯りで金のボタンと刺繍は光り、緑のベルベットも艶々としていた。あれは相当のものだぞ。一体どこの仕立てだ。マルチェロはそれが気になった。

 だが同時に服装の割にはこの男の所作には貴族らしい品がないなと思った。背筋は曲がっているし、動きや歩き方は手慣れた泥棒のようだ。

 そのうち男は部屋の左側に寄ってなにやら壁をペタペタと触り始めた。

 彼のおかしな行動にマルチェロとクリスティーナは眉を寄せて顔を見合わせた。


 男は壁づたいにそのまま部屋の奥ーー長椅子の隣まで来ると、ようやく足を止めた。

 何か見つけたのかしら。クリスティーナはぐっと首をのばした。よく見ると男が立ち止まったところは壁ではなく、壁に模した扉になっている。男はしゃがみこんで膝をつくと顔面をそこへ押し当てた。

 その様子にクリスティーナはピンと来た。娼館でよく見かける光景だ。


『わかったわ、彼は隣の部屋を覗いているのよ』


 きっと小さな鍵穴か何かがあるんだわ。小声でひっそりとマルチェロに囁いた。


 男はしばらくそうしていたが、やがて扉の向こうを確認し終えたのか、すっと立ち上がると出入り口の方へ歩み寄った。そしてタバッロやバウタ、仮面などを手早く全身につけると、再びわずかな音を出すだけで部屋を出て行ってしまった。

 同時にマルチェロは立ち上がり、音を立てないように部屋の扉を開け、顔だけ出した。目を細めると、先ほどの男が階段の方へ歩いているのが見えた。

 彼は黒いタバッロをなびかせて、廊下をまっすぐ進むと蝋燭に照らされた薄暗い階下へすすすっと降りていった。


「まるでネズミだな」


 ガチャリと扉を閉めたマルチェロは、眉をひそめながら「ふん、一体なんのつもりで……」と言いかけたがクリスティーナの方を向いて口を閉ざした。

 彼女も先ほどの男と同じようにしゃがみこんで壁柄の扉に顔面を押し当てていたからだ。


「お前も大概だな」


 歩み寄って来たマルチェロに、クリスティーナはひっそりとした声で言った。


「やっぱり、ここに小さな穴があるのよ。彼はきっとここに穴があることを事前に知っていたんだわ」


 マルチェロは腰に手を当てて呆れたように彼女を見下ろした。


「おい、もうやめておけ。あの男はどうせろくな奴じゃない。めんどうごとに関わるのはごめんだ」


 しかしクリスティーナはわくわくした笑みを浮かべ、覗くのをやめようとはしなかった。


「ちょっとくらいいいじゃない。ええとね、何人か人がいるみたい。みんな仮面を外しているわ。とてもきれいな女性がいる。豊かな金髪で青い目……あんな豪華なドレス、見たことない。ヴェルサイユのものかも」


「クリスティーナ、もうやめるんだ。早くここを出よう」


 マルチェロは声に怒りを含ませて彼女の腕を掴んだが、クリスティーナはそれでもなお覗きながら言った。


「わかったわかった。ふふ、意外とよく見えるのね……あら、ちょっとまって。あんなところにバウタと仮面をつけた男の人がいたみたい。こっちを見ているのかしら。や、やだ、こっちに歩いて……!」


 クリスティーナが慌てて立ち上がろうとした瞬間、ガッと目の前の壁柄の扉がこちら側に開かれた。


 立ち上がれずに勢いでしりもちをついてしまったクリスティーナと、その二の腕を掴んだままのマルチェロは、「しまった」という顔を浮かべておそるおそる目の前のバウタ姿の男を見上げた。


「何者だ、何をしている」


 仮面から漏れるその低く恐ろしい声に、二人はびくりと全身を震わせた。


「も、ももも申し訳ありません、決して悪気は……!」


 震える声でそう言ったマルチェロに、バウタの男はギョロリとした目を向けた。


「お前はフォスカリーニの息子か? こんなところでなにを……いや、その顔はどうした」


 マルチェロは、自分が仮面をつけていないことを心から後悔した。





 マルチェロとクリスティーナは、再び同じ部屋の長椅子に座っていた。先ほどと違うのは、部屋の隅に屋敷の執事らしい初老の男が立っていることと、目の前にバウタ姿の男が座っていることだ。


 彼はいくつか執事に指示を出すと、怯えた様子の若者たちの前に腰を下ろして仮面を外した。

 あらわになったその顔に、マルチェロは驚きの声を漏らした。


「ダ、ダ、ダ、ダンドロ様……!」


 マルチェロの言葉に、クリスティーナは目をぱちくりさせた。

 彼がこの屋敷の主人なの? クリスティーナはしおらしく目を伏せるふりをしてこっそりと男を観察した。なんて大きな目。あれでひと睨みされたら動けなくなりそう……あまり目を合わせたくない顔ね。高い地位に就いていると、こういう目になるのかしら。


 主人はマルチェロに言った。


「お前がこの七の間にいる理由を正直に言え」


 マルチェロは青い顔をしたまま、賭博客に間違えて殴られ、この部屋で休息をとっていたことを正直に話した。


「それは…………災難だったな」


 ダンドロ氏の同情の言葉を述べた。目元もやや和らいでいる。この口調からすると、どうやら彼は自分のことを悪くは思っていないらしい。

 その事実にほっとすると、マルチェロは続けた。


「それでその、ここで休んでいたら突然一人の男が入ってきたのです。我々に気がつかないまま、男はバウタと仮面一式を脱いで……いや元々脱いでいたかもしれません、とにかくその服の一式をそこの椅子にかけた後、男は壁の扉の穴を覗いていました。その後はまた仮面やタバッロを着つけて、階段を下りていきました」


 ダンドロ氏は目を細めた。再び獰猛な恐ろしい目つきになり顔も険しくなる。マルチェロは彼のこの目が苦手だった。急に自分の手が震え出すのを感じる。


「ほう……その後、お前はその男と同じことをしたのだな。覗き穴を見て、様子を伺っていたというわけだ」


 マルチェロが慌てて首を振ったが、震えているためか声が思うように出てこない。代わりにクリスティーナが声を上げた。


「ちがいますわ、旦那様!」


 ダンドロ氏は眉を寄せ、マルチェロの隣にいる彼女に初めて視線を移し、不機嫌そうな表情になった。

 この目の前の男は明らかに私がどういう人間かわかっていて、そしてこの屋敷にいるということを疎ましく思っているとクリスティーナは直感した。

 しかし彼女は腹を立てることなく小さく礼を取ると、しっかりとダンドロ氏を見据えて答えた。


「一介の商売女が口を挟んでしまって申し訳ありません。ですが、その謎の男の後に穴から覗いていたのはこの私。マルチェロは私を止めようとしましたが、私がきこうとしなかったのです」


 主人は細めた目で「ほう」と彼女を睨みつけた。


「それで? お前は、その穴から何を見た?」


 クリスティーナは眼光鋭く射抜いてくる瞳に涼しい顔で言った。


「……何も。何も見ませんでしたわ」


 マルチェロは奇異な物を見るような目つきでクリスティーナを見た。ダンドロ氏は彼女の強い瞳を見つめた。

 少しの間沈黙が流れたが、屋敷の主人は鼻で笑った。


「ふん、まあよかろう。狡猾な娘よ」


 クリスティーナは「恐れ入ります」と座りながらもすまし込んだように頭を下げた。


「それよりもその謎の男について、何か他にわかることはないか。タバッロは……赤胴色であったか?」


 赤胴色? マルチェロは首を振った。


「いいえ、黒でした。去るときの後ろ姿をしっかり見たので間違いありません。ですがタバッロの下は大変上等な緑のジュストコールでした。あそこまでの鮮やかな緑のベルベットはこの国で見たことがありません。しかも金の刺繍が見事でした」


「刺繍にアルファベットは? 紋章はなかったのか」


「あ、いえ……そこまでは」


 ダンドロ氏は険しい顔のまま顎に手を当てた。


「黒いタバッロ、高級礼服の男……ブリオスキ、何か知っているか」


 主人の呼びかけに、後ろに控えていた初老の男は首を振った。


「いいえ、何も。かの者も、騒ぎのせいで見失ったままです」


 かの者? 赤胴色のタバッロを着た者は密偵か何かの類だったということだろうか。それなら私が見た先ほどの男はまた別の密偵なのだろうか?

 マルチェロがぼんやりとそんなことを考えていた横で、クリスティーナが突然言った。


「……変だわ」


「変?」


 マルチェロは聞き返すと隣に座っていた彼女は頷いた。


「ええ、怪しい男がここにいたのはほんの少しの間だけでしょう。穴から覗くために、邪魔な帽子と仮面は取るとして、その下のタバッロまでわざわざ脱ぐ必要がある?」


 マルチェロは眉を寄せた。


「わざわざ脱ぐ必要って……単に暑かったのだろう。別にこれと言っておかしいわけでもあるまい」


「暑かったですって? それなら脱ぐだけに決まってるじゃない。それに確かに外に比べればこのお屋敷は温かいけど、彼がここにいたのはほんの数分だわ。タバッロまで着直すなんて不自然よ。別の服に変装する様子もなかったし、他に着替えも持ってなさそうだったわ」


 マルチェロは頷いて顎に手を当てた。

 

 それはほんの小さな違和感だった。気にしなければ大した問題でもない。だがクリスティーナの言う通り、わずかな時間で隣の部屋を覗くことが目的なら、なぜタバッロまで脱ぐ必要があったのだろうか。わざわざわざわざ脱ぎに来たのか? 何の目的があって?



 腑に落ちない点が残ったが、ひとまずマルチェロもクリスティーナも知っている限り話したので、ダンドロ氏によってようやく解放された。

 屋敷を出る前にマルチェロは、例の賭博客によって壊された仮面の代わりに、クリスティーナの仮面をつけた。おかげで通りすがりの者たちに腫れ上がった顔を見られることはなかった。

 屋敷を出て、再びサン・マルコ広場の騒がしい旧庁舎前の岸辺まで歩くと、二人はようやく一息ついた。

 ここで空いているゴンドラを待つのである。


「……全く、散々な夜になった」


 マルチェロががっかりと疲労したように言うと、クリスティーナはおかしそうに口元に手を当てた。


「ほんと。マルチェロったらついてなかったわね。おかげで退屈しなかったわ」


 ゆかいそうに笑う彼女をマルチェロは仮面越しに睨みつけたが、もう悪態をつく気にもなれない。マルチェロは力が抜けたようにため息をついて、後ろの大きな広場を振り返った。

 もう真夜中を過ぎているというのに、ここはあちこちがランタンで照らされており、そしてまだまだたくさんの人がいた。仮装をして酒を飲み、歌い踊り、楽しそうに騒いでいる者たちを眺めると、マルチェロは自分の憂鬱な気分が一層辛かった。

 結局貴族令嬢のパートナーは見つけることができず、ダンドロ屋敷に来た貴族たちに自慢することもできなかったし、屋敷の主人には最悪の形で顔を合わせることになってしまった。何より仮面の下の顔が痛い。


 クリスティーナはすっかり落ち込んでいる様子のマルチェロの肩を叩いてわざとらしく明るい声を出した。


「明日には腫れが引いているといいわね! 眠った後はいくらかすっきりするものよ……ほら、ゴンドラが来たわ」


 ゴンドラに乗り込んでもマルチェロは頬が痛くて行き先も言わずに黙り込んだままだった。

 クリスティーナは困った顔でマルチェロの方を見ていたが、漕ぎ手が咳払いをして「どこへ行きやしょうか」と言ったので肩をすくめて「とりあえずランパーネ邸までお願い」と答えた。


 ゴンドラは暗い水路をゆっくり進んだ。夜だというのにどこへ行っても街は騒がしく、笑い声も怒鳴り声も途絶えることはなかった。

 クリスティーナは時折岸辺で目にする大道芸人たちが見世物を行なっているのを目にして笑っていたが、マルチェロの方はぐったりと下を向いたまま顔を上げようともしていなかった。


 クリスティーナの所属する娼館、ランパーネ邸に到着すると、彼女は立ち上がりマルチェロの肩を叩いた。

 彼はゆっくりと顔をあげた。


「マルチェロ、私は帰るから。明日は自分の家でゆっくりしていなさい。顔は冷やさないとだめよ……ダンドロの主人から信頼されてるだけよかったじゃない。よく眠って、もう今日のことは忘れてしまうのよ、いいわね」


「あれ、旦那はここでは降りないんで?」


 漕ぎ手の言葉にクリスティーナは頷いた。


「ええ、彼の屋敷までお願い。フォスカリーニ邸はわかるかしら。カルミニ教会の奥よ」


 クリスティーナが十分な賃金を払うと、漕ぎ手はもらった金額を手のひらに並べて満足そうに微笑み「かしこまりました、お嬢さん」と恭しくお辞儀してみせた。






 マルチェロがふと気がつくと、ゴンドラはフォスカリーニ邸のポーチに着いていた。

 召使い達に出迎えられいろいろと気遣うように声をかけられたが、答えられる状況にはなかった。

 ぼんやりとしながら部屋までたどり着き、帽子とバウタ、仮面を外す。外したはずみで仮面が腫れた左頬に触れ、思わず「いたっ」と声をあげた時、マルチェロは一瞬だけ頭がはっきりしたのを感じた。

 おかしいな、酒を飲んだわけでもないのに。顔が燃えるように熱く、頭もぼんやりしている。

 マルチェロは召使いが用意した水を左頬に含ませてから飲むと、そのまますぐにベッドに横になって眠り込んでしまった。




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