変異
『セイジ......セイジ。』
自分の名を呼ぶ声で徐々に意識が浮上する。
俺は......そうだ。魔石を吸収したら突然胸が苦しくなって......気絶したのか。
(何が起きたのか説明をしてくれ。)
『わかる範囲でならある程度。』
(それでいい。)
『了解』
アストの説明によると、魔石を取り込んだ瞬間全身のCC内のエネルギーを生産するための分子機械が一つ増えた。その分子機械は魔石と同じ分子を含み、発生と同時に稼働を開始、体内のエネルギーを消費しながら例の未知エネルギーを生産し始める。『魔石』の力を生産するエネルギー生産回路という意味でアストが勝手に名付けたその回路、『魔力回路』が作り出す未知のエネルギーはどういった原理か体内を巡り全身のCCを爆発的に活性化させた。その結果心臓のスペックは跳ね上り血圧は急上昇、脳の血管まで破裂しそうになったため強制的に代謝を抑制、当然脳活動も低下して俺は気絶した、と。
(命の危険とか無縁のものと思っていたけどな......。)
『迂闊でしたね』
(これ以上は控えるか。)
『その方がいいかと。』
もうちょっと情報を集めてからやるべきだったと反省しながらセイジは討伐証明部位である左耳を一匹一匹ちぎって集め、街のギルドに戻っていった。