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お金の使い道(7)


 いろいろあったが、とりあえず治癒魔法で全身を再生させたセイジは半日かけて飛行、朝日で空が白みかけた頃にセブネーレへ帰還した。

 報酬はすでに受けとってあるので依頼完了をギルドに報告する。


 そしてさらに金を稼ぐべく依頼を吟味し始めた。

 

 (なんだかんだ言ってまともな食事を口から摂ったの初めてだな。)

 『そうですね、まさか「手から食べれますよ。」なんてカミングアウトするわけにもいかないですし。』

 (ま、結局担ぎ込まれたときはゾンビレベルの見た目だったし、十分変なんだけどさ。)


 『そういえば、セイジ?』

 (なんだ?)

 『家を買うとは決めましたが......家事出来ます?』

 

 ......あ。

 (確かに。俺はできないぞ?)

 『開き直らないでください。セイジができなければ僕にもできないんですから。』

 

 (じゃあ......どうしよう?)

 『人を雇うにしても金はかかりますし......その線で行くと......奴隷ですかねぇ?』

 (奴隷ねえ......)

 『少なくとも給与云々の話は無くなりますし、日常生活に必要な金を渡して家を維持させればいい話なので。今の日収だったら十分現実的かと。』


 この世界にある身分は大まかに、王族、貴族、冒険者、商人、一般市民、奴隷、犯罪奴隷の7つに分けられる。その中で犯罪奴隷は文字道理犯罪を犯した囚人が落とされる身分で、こちらはほとんど使い捨てのような仕事に就く。身分としては最底辺だということだ。ただの奴隷は貧しい家庭が口減らしに子供を売ったり借金が返せなくて身分を落としたりといろいろあるが、商品になるとはいえまあ常識的な扱いが一般的。どちらにせよ人間ではなく商品として扱われることには変わりない。国に認められた奴隷商が販売し、その値段は性別、美醜、年齢、状態等の様々なパラメーターによって決定される。


 (でも前覗いた感じだと、一人当たり10万ルナはあったぞ? 高すぎないか?)

 『そこで、です。全身がズタボロになっているような最安値のを狙うんです。具体的に言えば四肢の欠損、病気、臓器不全、何でもいいです。そちらは奥の方にいたから見ていないでしょう?』


 (いや四肢が無ければ何もできないと思うんだが......?)

 『......え?』

 (......ん?)

 『忘れたんですか? つい最近までせっせと勉強していたというのに? CC工学を専攻していたじゃないですか。簡易的な義肢の十本や百本、材料があれば作れますよ? もっと言うならばついさ先程治癒魔法を覚えたじゃないですか。』


 (......あ。)

 確かに。それは失念していた。


 (じゃあそういう方針で行くということで......お?)

 アストとしゃべりながら依頼書を吟味していると、そのうちの一枚が良さげだったので手に取る。


 依頼内容は単眼の堅い外皮を持つ巨人、サイクロプス一体の討伐。貢献度は1000で報酬は500万ルナ。割が良すぎるので受付に持って行って詳細を聞いてみると、どうやら最近オークを乱獲しまくっていた森とは逆の方でサイクロプスが目撃されたらしい。そのせいで新人冒険者たちが採集をできなくて困っているため、ギルドが依頼を出してみたようだ。


 「なるほど......受けます。」

 「はあ......ちゃんと戻ってくることを願っています。」


 ****

 少し疲れたような受付嬢の声援を背に対象が目撃された場所に向かうと......


 「......あれか。」


 空から見下ろすように探していたら数分で見つかった。

 「でかいな。」

 『身長4メートルはありますね。希少らしいので目は余り傷つけない方がいいかと。』

 戦い方の基本がもろい目からの脳破壊だからな。


 灰色の犀のような外皮に赤くて大きな単眼。見るからに強そうだ。真正面から行ったら威圧感が凄いのだろうが......。



 「恨みはないんだけど、さようなら。」

 一気に魔力回路から汲み上げた魔力で全身を強化。下に加速しながら落下、気付かれる前にその首へ加速付きのかかと落としを叩きこむ。



 ゴキン、と鈍い音がして首の骨がへし折れたサイクロプスは絶命した。


 ......不意打ち気味とはいえなんともあっさり終わった戦い? に微妙な顔をしながらも納品するべく一緒に浮遊させて帰還するセイジ。


 そんなセイジにアストは声をかけた。

 『セイジ? ちょっと面白いことを考えたんですが。』

 (なんだ?)

 『前、魔力を加速に変えられるってわかったじゃないですか。』

 (それがどうかしたか?)

 『衝撃にも変えられると思いません?』



 (......確かに。早速試してみるか。)

 


 ちょっと機嫌が回復したセイジであった。



 

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