お金の使い道(6)
第十話の内容について。
ストーリーの都合上、主人公が強すぎるので多少の修正を加えさせてもらいました。
それでも強過ぎるくらいなのでご安心ください。
何でもない風に街を出たセイジは、人気が無いのを確認するとわき道にそれて座り込んだ。
「......はあ、やっぱり中身が無いのはきついな。」
『ここらで完全回復しておきましょうか。』
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セイジは既に外見の損傷は修復していた。
......外見だけは、だ。
食堂でセイジがしたのは、全身から不要なCCをかき集めて再分化、体表と最低限の筋肉を形作っただけだ。食事はエネルギー補給でしかなく、肉体の材料にはなっていなかった。さすがに金属をモシャモシャ食っていたら魔物扱いされそうだったので遠慮したのだ。
つまり現在、セイジの体は発泡スチロールのごとくスカスカなのだ。
セイジの体を構成するCCは普通の細胞とは異なり、水分以外の構成物質の半分は無機物で構成されている。
つまり普通の有機物の塊である食事をとった程度では大量に必要な無機物を補いきれないのである。
おまけにエネルギーを貯蔵してある主要臓器も腹部にあるせいでレッドサラマンダーに食いちぎられてしまった。
つまり現状においてセイジは極度の栄養失調というわけだ。
そういうわけでセイジはそこら辺の小石を手当たり次第吸収し、木からは不足分のエネルギーを補充し始める。
放射性物質以外の大抵の物は吸収して分解でき、必要なタンパク質は空気から合成できるので材料の補充自体は数分で終わる。
次に再生の工程に入るわけなんだが、ここでアストから一言提案があったため、魔法を使ってみることにした。
『魔力』
それは俺達がこの世界に来て手に入れた、全く未知の新しいエネルギー。
様々な実験の結果から、何故か元のエネルギーに釣り合わない程膨大な魔力に変換できることが分かった。一時期エネルギーを無限化できたとはしゃいでいたが、魔力を普通のエネルギーへと変えるとまた元の量へと戻ってしまう。そんな現実を知った少し後に、俺とアストはとある魔法を見て同時に目を剥いた。
その名も治癒魔法。これは傷ついた場所にかけると、かけられた傷は数秒で癒えてしまう魔法だ。少し魔力の操作が難しいらしく、あまりできる人はいない上に損傷具合で治らなかったりするそうだが、大事なのはそこではない。
かけられた本人の調子が健康体のそれへ戻っていることだ。
普通、生体を再生させるには相応のエネルギーと材料が必要だ。そして急速な分裂と分解は細胞に少なくない消耗をさせる。
つまり普通、再生すると疲れるはずなのだ。
......何が言いたいのかというと、治癒魔法は細胞の分裂による再生ではなく欠損した組織自体の再構築なのだろうということ。
というわけでそれを立証すべく、補充したエネルギーを惜しみ無く魔力へ変換、体内に集中させながら分子レベルで足りない部分が再構築されていくことをイメージしてみると......
ギチギチギチギチ......
あ......れ? なんか嫌な予感が......
『大丈夫ですよ。』
あ、そうなの?
『しかしすごいですね......これ、我々分子工学の粋を集めた存在をあっさりとコピーしてますよ? それぞれが持つデータまで再現されています。』
(じゃあさっきの音は? あとなんかむっちゃ汗が出ているんだけど。)
『あれですか? どうやら再構築するときに物質交換用の体液が邪魔だったらしくてそれを押し退けながら再構築した結果、皮下組織に体液が流入、水風船のように膨らみ始めた音です。そのままだと全身が破裂してしまうので急いで汗腺から排出しておきました。』
(治癒魔法、ヤバイな。)
『そうですね......体液は消費されていないし......どこから物質を持ってきているのか本当に謎です。』