お金の使い道(5)
「さて......と。」
戦いやすくするために足裏から魔力を地面へ浸透させる。こうすることで周囲の地形を掌握し加工、狭い坑道を広げる。
毎晩魔力を使ってあれこれ実験してきた成果だ。
当然一瞬思考はそちらへ取られるが、そのすきをついて奥から二匹顔を出したレッドサラマンダーから火球が放たれる。
しかし大気の酸素を使わない電力消費モードに切り替えたセイジの体は人の限界を超えるスピードで難なく避け、お返しだと言わんばかりに二つの弾を同時に加速した。
パンっと音速を超えるまで加速された金属塊は当然のごとく二匹の頭部を陥没させる。
「マジで?」
さっきの結果からさらに速く音速を超えたスピードで打ち出したのに、頭が少し陥没した以外特に目立った損傷を受けていない二匹の死体に驚くセイジ。
と思ったら、
「「キシャァァァァァ!!」」
と両サイドからその体を削るべく飛び出してきた二匹のレッドサラマンダー。
こいつ等、連携している!!??
と驚く暇もなく避けようとしたが、間に合わず、左肩と脇腹に噛み付かれてしまう。
そのまま内臓から焼こうとレッドサラマンダーが魔力を口に集中させた瞬間、セイジは体内に蓄えてあった電力の七割を開放する。
生体には耐えられない量の電撃を頭に喰らった二匹は瞬時に脳を破壊されて死ぬも、その強靭なあごの筋肉はその刺激に緊張、収縮してセイジの左肩と脇腹を食いちぎった。
「ぐっ」
即座に行われた止血により血液は失わずに済んだものの、体幹部の片方が全損したことにより、バランスを崩して倒れこむセイジ。
このまま再生するには材料もエネルギーも足りないので食いちぎられた左腕とレッドサラマンダーの死体を魔法で浮かせながら坑道を戻っていった。
坑道の途中で待機していたウルドに手伝ってもらって最低限使えるレベルに左腕をくっつけた後、担いで鉱夫達の食堂まで運んでもらう。
まあ当然右腕が焼け落ちて左腕はぎりぎりつながっており、脇腹が半分かけている奴がやってくればびっくりするわけで、最初はウルドにもアンデット扱いされた。そういえばこの世界にはゾンビなんて奴もいるらしい。
そこでぎりぎり動く左腕を駆使して食事を終えたセイジは外見だけ修復して報酬を受け取り、服を買い直してえらく感謝してくるウルド達に応じつつマインストンを出た。