お金の使い道(4)
ちょうど宿舎の前にすすけた筋肉だるまで、いかにも鉱夫っていう感じのおっちゃんが通りかかったので声をかける。
「ここが出した依頼を受けて来たんだけど、依頼内容について話を聞かせてくれないか?」
少しこっちを怪訝そうに見つつ、おっちゃんは口を開く。
「ボウズがか? ......確かにウチの出した依頼書を持っているし、冒険者なんだろうが......倒せるのか?」
「当てはあるさ。で、討伐対象のレッドサラマンダーは何処にいるんだい?」
「......こっちに来な。」
そう言って背を向けたおっちゃんについて行く。
坑道の中を歩いているうちにセイジはおっちゃん――ウルドというらしい――にいろいろ話を聞いていく。
「......着いたぞ。こっから先に奴等は居るはずだ。俺の案内はここまでだが......死にそうになったらとっとと戻ってこい。俺ぁもうこれ以上人死にを見たくない。」
外見の厳つさのわりに優しい心の持ち主らしい。
「ああ。わかっ『セイジ?』......ん?」
(なんだ?)
『その道の奥から高温を検知......気をっ!?』
アストらしくない焦った声。
(なんだ!?)
『回避して下さい!!』
「おいおっちゃん......」
反射的にウルドのいる前方を見ると奥から迫ってくる青白い火球が目に映る。
「チィッ」
間に合わないと判断したセイジは即座に魔力回路を起動してウルドを守るように魔力を纏わせた右腕を火球めがけて突き出す。
ジュゥッと嫌な音を立てて瞬く間に炭化する腕。事前に痛覚を切っておいたので痛みは感じない。
即座に生きている組織へ魔力を送り、傷口の血管を閉鎖することで止血しながら、移動中に弾丸へ成形して用意しておいた金属塊を加速して姿を現した赤い蜥蜴へ打ち出す。金属製の弾は頭部に命中して対象へ衝撃を伝え、その頭蓋を破壊する。
「おい......ボウズ、お前......」
「おっちゃんは下がってろ!! 邪魔だっ!」
「だが......」
「いいから離れてくれっ!」
少しきつめに言うと、ウルドは何かを振り切るように頭を振って、
「......わかった......生きて戻ってこいよ!!」
と言い残し、走り去っていった。
さて、約束もしたし、生きて帰りますか。