お金の使い道(3)
「......知らないでその依頼書を取ったんですか?」
「その通り。それで気になったから聞いてみた。」
記憶喪失だし?
「......はあ、今までは私が説明しましたが、これでも忙しいので奥の資料室で自分で調べてください。」
『振られましたね。』
(うるさい)
肩を落としながら資料室へ向かうセイジ。
目を潤ませながらも全力で資料を読み込み、脳内に保存し終えたセイジは件の依頼を受注した。
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セイジは今、空を飛んでいる。行先はもちろん依頼を出した鉱山のある町。
(どうやって倒す?)
『魔法で火を放つ熱耐性を持ったトカゲですからねえ。』
ギルドの資料によるとレッドサラマンダーは口から火を吐き、体表の鱗は鉄を溶かすレベルに赤く赤熱している。それゆえ魔力で強化しなければ生身では到底触れることはおろか、近づくことさえできないのだ。もっと言うと火山付近の洞窟内に生息しているため空気は淀み、恐らく二酸化炭素も充満している。
つまり普通は入れない場所なのだ。この世界では魔力を利用した魔道具と言う不思議アイテムもあるため多くない魔力を消耗してギリギリ入ることができるというレベル。魔道具についてはまだよく知らんけど。
(ま、代謝関係は全て電力駆動に切り替えて......感電させるか?)
『体表の温度にもよりますが......さすがに鉄を融解させるほどの温度は......耐えられませんね。』
(ゲームとかの硬い敵を倒すセオリーに当てはめれば、あとは......衝撃とか?)
『鉱物の塊を音速以上に加速させて当てたらどうです?』
(それでいくか。)
『分かっていますよね?』
(へいへい、頭を潰されたらどちらもお陀仏だってことぐらい分かっていますよ。)
大雑把な方針が決まったので道中に適当な街で金属塊を入手してさらに西へ加速する。
その後も道なりに飛び続けたセイジは半日程度で目標の鉱山がある街、マインストンに着いた。
近場の木から消費分を補給して万全の状態になったセイジは地面に降りて歩き始める。途中何人か着地するセイジを見て目を剥いていたが、まるっと無視して冒険者ギルドに直行。依頼主の居場所を教えてもらってから鉱夫達の宿舎前までたどり着いた。