お金の使い道(2)
『家でも買いますか? この世界の税金方面はよくわかりませんが......』
何気ないアストの提案。
しかし現状でそのくらいしかお金を使うことがない。
もともと地球でも生活の九割がバーチャルだったからお金を使わなかった。
この世界で依頼を受けているのは生きている証となる刺激が欲しいからという理由でだ。
地球にいたころはバーチャルでフレンドと遊んで生きていたが、この世界にはサーバーはおろか知り合いすらいない、究極的に無補給で数十年単位休眠できるセイジは何か現実で行動しないと生きていると実感できないのだ。
というわけでこの帰る場所を手に入れるという提案は今のセイジにとってとても魅力的に映った。
(じゃあそういう方向で行動するか。ま、明らかに家を買うには金が足りないからまずは金稼ぎだけどな。)
『そうですね、この世界の情報を集めることと同時進行でやりましょう。』
というわけで深夜の散策で見つけていた不動産屋に行き、家の購入に関するあれこれを質問してみた。
結果、わかったことは大抵二階建ての一軒家は相場が金貨五枚前後だということ。日本円換算した時一軒家が一件500万で買えてしまうことになるので少し疑問だが、電気とか通っていないしこんなものなのだろう。あと税金の有無について。これは毎年金貨一枚づつ納めないといけないらしく、冒険者ギルド経由で支払えるようだ。購入後に個人で手を加えるのは周囲に迷惑が出ない範囲で自由らしい。
(......じゃあ稼ぎまくりますか。)
オークの乱獲で貯まった貢献度は2000を超えている。これで報酬が良い代わりより高い信頼の必要な難しい依頼も受けられるようになった。
(実入りの良い依頼は......このレッドサラマンダー五体討伐ってのどうだ? 一体当たり貢献度200で報酬は200万ルナだぞ?)
『実入りは良いですが......やけに見返りが高いですね......レッドサラマンダーの存在含めて何か裏があるのでは?』
(確かにな、聞いてみるか。)
そして毎度おなじみの美人受付嬢に聞いてみると、
「レッドサラマンダーの依頼を受けるんですか? あまりお勧めはできませんが......。」
「それなんだけど、何が問題なのか教えてくれないか?」
「その依頼はこの街から西へ馬車で三日ほど行ったところにある鉱山の人が出した依頼なんですけど、レッドサラマンダーが五体出て鉱夫の人が何人か亡くなったそうで......。」
「なるほど。それで?」
「それでまあ、冒険者たちが何人も向かったんですけど、皆失敗して亡くなったり大怪我をしているんですよね。」
「ああ、それで誰も受けなくなったから報酬を吊り上げて受けてもらおうとしていると。」
「そういうことです。」
なるほどね、
「で、レッドサラマンダーって何?」