オーク討伐(1)
「ブヒィィィィィィ!!」
豚らしい雄叫びをあげながら突進してくる豚頭。
オークだ。
あの後、セイジは街の外に出て少し歩いてから一気に数多くのモンスターが住まう森めがけて一気に加速、突っ込んだ。木々から少しづつエネルギーを補給しながら加速移動の訓練をしつつ赤外線視をして探していたのだが、存外早く見つかった。
......俺がな。
まあそりゃそうだ。ひっきりなしにガサガサヒュンヒュン音をたてながら人が移動している訳で、逆にこれで見つかってなかったら向こうの本能を疑うわ。
というわけで現在進行形で俺をタコ殴りにしてミンチへ変えるべく、丸太と見間違うようなぶっとい棍棒を振り回しつつ迫ってくるオークがいるわけだ。
とりま心臓に電気ショックでも打ち込んでみるか。
オークが棍棒を降り下ろしたタイミングで超加速、向こうの胸骨等辺に腕のCCで産み出した電撃を打ち込む。
バチィッと青白い閃光が走る。
が、オークは少しフラッとしただけで倒れない。
マジかよ......ただの人類なら即死するレベルだぞ?
一方攻撃されてさらに怒りのボルテージが上がったオークは咆哮と共に再度突撃してくる。
(やっぱキレーに殺るにはレーザーで頭飛ばすのが一番か?)
『出力を上げれば眉間に一発ですむでしょうね。』
(精密作業は苦手なんだよね......撃つのは任せる。俺は回避に専念するから。)
『了解。』
『運動アルゴリズム変更。近接格闘アルゴリズム構築。』
小脳のCC構成が瞬時に変更、攻撃と回避に特化する。
地球の人類が作り上げた武術、その全てを反射的に繰り出せるこのアルゴリズムはセイジをオークの棍棒から逃れさせる。
「ブヒィィィィィィィィ!!」
己の攻撃全てを難なく避けられてイライラしてきたらしいオークは渾身の一撃でセイジを潰そうとする。
(今だッ)
その瞬間、セイジの体は微動だにしないまま横と上にずれるという変態的な動きで棍棒を回避する。
......と言ってもただ横と上に加速しただけではあるが。
しかし何も知らないオークからすれば顎が外れるレベルの驚愕であり、一瞬我を忘れて呆けた目で空中浮遊しているセイジを見つめた。
(『はいアウト。』)
その一瞬はスパコンを越える思考速度を誇るアストにとって十分な隙であり、レーザーの魔法がオークの眉間を正確に貫く。
ドウッと倒れるオークの死体。
それを石を拾うかの如く軽い動きで担いだセイジはぼやいた。
「これをあと数体分? 確かにめんどくさいかもな。」