どした?
「俺の名前はセイジ。ところで近接型ってなんだ?」
そう聞くとクルトは驚いた顔をして、
「君、冒険者なのに知らないの?」
「いや、な。今日冒険者登録をしたばかりでね。よかったら教えてくれないか?」
「いいよ」
そしてクルトは冒険者の型について教えてくれた。
型は冒険者だけではなく全ての人間の魔法の才能の方向性を表す指標みたいなもののようだ。分野によってそれぞれ種類があり、冒険者等の戦闘職は戦闘に使える魔法によって肉体強化特化の近接型、遠距離から魔法を飛ばすことに特化した支援型、どちらもそこそこできる中間型、どちらも高水準でこなせる万能型がある。主に魔力の体内生産量によってどの型が適しているのかが決まり、少ない方から近接型、中間型、支援型、万能型となる。体を鍛えるとなぜか魔力生産量が上がるので冒険者は鍛えている人が多いようだ。
「僕はまだ全然鍛えていないんだけどね。」と苦笑しながらクルトは言った。
だからギルドにはあんなにムキムキマッチョメンズがいたのか。恐らく筋肉の細胞数を増やして魔力回路と共に魔力の生産量を稼いでいるのだろう。
最後の万能型は圧倒的な魔力生産量を誇り、魔力を惜しみ無く使って全身を強化しながら魔法を放てる。その希少さからで国ごとに十数人位しかいないらしい。
簡単に言えばミトコンドリアが優秀だったりむっちゃ多い人は疲れにくいってこと。
「......という訳なんだけど、結局君って何型なの?」
「どうやって判定するんだ?」
「出せる最大限の魔力を一瞬で放出すれば大体分かるよ。」
そうか......
(アスト、よろしく)
『了解。残存魔力で魔力回路を活性化。稼働率を限界値に設定。生産開始。』
「解放。」
その言葉と同時にセイジの周りを土埃が円を描くように舞い出す。
『稼働率限界値到達。』
その脳内アナウンスと共にゴウッとセイジを中心とした魔力の濁流が柱をなして一気に空へと吹き出す。
薄く輝く光の流れはセイジの髪を舞い上げる。
圧倒的。
それが最も似合う光景だった。
周囲には激しく物理的な圧力を撒き散らし、それはギルドの中まで到達する。
目の前のクルトはその威圧に呑まれて身動きすらままならない。
街中の冒険者たちの、鍛えられている勘が激しく警鐘を打ち鳴らす。
しかし張本人であるセイジは全く気付かない。
そしてある程度魔力を解放したところで放出を打ち切った。
「どしたの?」
そして困惑。
魔力と型の見定めをしてくれるはずのクルトが気付けば自分を凝視しつつ生まれたての小鹿の如く足をブルブルと震わせ、恐怖を湛えた目をしているのだ。
何も知らない本人が、
......こいつどうしたんだ? 幽霊でも見た?
と思うのは無理もない。
「何があった!!」
と威圧から解かれたマッチョな冒険者が訓練所に飛び込んでくる。
それを見たクルトは安心したのか、ヘナヘナ~といった感じに地面に座り込む。
「そこの君達! 何か知っているかい?」
と声を掛けてくる冒険者。顔はイケメンなのに首から下は筋肉達磨という謎な外見だったが、何が起きたのかは俺も知りたいので質問に応じる。
「さっきこのクルトに魔力の最大放出量を見てもらうために魔力を放出したんだけど......なにかあったのか?」
「魔力を放出した?」
「そうだけど」
「ちょっと僕にも見せてもらえないか?」
「......? まあいいけど。」
「解放」
ゴウッ
「こんなもんかな? ......って二人揃ってどした?」
こうして二人目の犠牲者ができた。