膨大な力
言われた通りに裏に向かうと、そこそこ広い土のならされたグラウンドがあった。
(じゃあまず魔力のコントロールからだな。)
『そうですね。』
そうしてアストが全身の魔力回路を起動、出力を徐々にあげていく。
「おお......」
力が全身に溢れ、なんとも言えない全能感に満たされていく。
『エネルギー残量95% とりあえずここら辺で実験しませんか?』
「そうだな。」
体内のエネルギーは減ったがその代わり魔力は一ミリも消費されていないので暖かい感覚で留まっている。それを受付嬢から聞いた通りゆっくりと、前後上下左右に心の手で包むようなイメージで揺らしていく。
最初は少しだったが、徐々に動かす感覚を掴み、自由に動くようになったので全身にゆっくりとめぐらせ始める。すると流れた場所の分子間結合は強まり、化学反応は促進、分子機械は活性化されて全体的に肉体の出力と耐久力が上昇する。
(地球では考えられないような現象だな。)
『はい。エネルギー生産回路の効率も増幅されて理論上では今までの数十倍の出力に耐えられるようになります。』
増幅ねえ......ちょっと待てよ?
(魔力回路はどうなっている?)
『えっとですね......は?』
ん? どうした?
(どした?)
『そんな......あり得ない......エネルギー保存の法則は......』
(おーい?)
『あっ。すいませんちょっと混乱していました。』
アストが混乱した? 珍しいな。
(どうしたんだ?)
『えっと、はい。魔力回路も活性化。今までと比較すると魔力で強化した場合に限り1のエネルギーで10の魔力が生産できるようになりました。元手よりも多い生産量です。』
なるほど。大体人間と同じでも少しとはいえ昔のノイマン式の思考回路を内蔵したAIであるアストは既存の法則に当てはまらない結果に混乱したと。確かにエネルギー保存の法則に喧嘩売ってる結果だからな。実質これで魔力は無限みたいなものだし。
期せずしてセイジは膨大な魔力を手に入れた。