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2191年、人類は己の力で新たなる進化を遂げた。史上初の自発的な進化だ。それにより人々の体は大きく変化して、老化は止まり、飢餓は無く、身体能力は大幅に向上し、電脳空間と意識をつなぐことで仮想世界を作り出す。唯一必要なものは必要量の熱、光、電気などのエネルギーと少量の元素。太陽さえ存在すれば生きられるようになった。


 その進化を実現したのは人類史上最高の発明と言われるようになったサイバネティック・セル(通称CC)。これはナノマシンをコンセプトに治療目的で研究されていたが、とある製薬会社が他の機能も盛り込んで開発した機械に近い多機能型細胞だ。一つ一つの内部に本人のDNAを内包した核と細胞小器官を模倣した無機物と有機物で構成されている様々な分子機械が内蔵され、無機有機問わないあらゆる物質の代謝から細胞膜に再現されているイオンチャネルを通した電子的信号処理さらには生物としての特性、自己増殖まで行える。その能力から集まるとコンピューターやエネルギータンク、生体エネルギーと電気エネルギーの変換や生体素材としても使え、分子レベルの造形すら容易にした。素材を純水の中に入れてかき混ぜるだけで作れるため量産は容易で流通も早く安価なため、今や全人類が手にしている。これは人体に注入することで全身に行き渡り、宿主の生命活動や健康状態を正常にコントロールする。そしてCCをコントロールするために考案されたCC言語を用いて任意の活動をプログラムして行わせられる......。



 ......あ~つまんね。



 俺の名前は再桐 牲慈(さいとう せいじ)。ただいま仮想空間に作られた学校で歴史の授業中だ。このご時世、みんな生まれた時に脳機能補助用基礎CCを注入されて金を払えば仮想空間で授業が受けられる。この教師はCCのない最後の世代らしく、本人は不治の病で余命2年のところでギリギリ助かったらしい。そのせいかこの話になった瞬間に突然テンションアップして教える範囲外までペラペラしゃべりだした。


 生物の先生によると今の人類はホモ・マキナという分類だ。今のところ生まれてすぐにCCを脳に注入してゆっくり置き換えていく方式だけど、あと20年もすれば全身CCの状態で生まれるようになるらしい。CCの登場により少子化は加速したがそもそも人が減らないのでノープロブレム。おじいちゃんたちも若返って元気に働くか仮想世界に引きこもっている。昔は少子高齢化っていう問題があったらしいけど。昔はお金がいろいろ必要だったらしいけど今はほとんど必要がない。ぶっちゃけCCのおかげで日光の下に一日中新陳代謝を抑えて昼寝していれば生命の安全は大体保障される。



 ......お、どうやら授業が終わったらしい。早速ゲームしに行こう。


 次々と仮想空間の学校から人がログアウトしていく。俺も残ることなくログアウトしてネット上を漂う。


 ......あったあった。

 次々に現れては消えていくゲームサーバーの入り口の中に目当てのものを発見した俺は早速飛び込む。

今ゲーム業界で最も人気な感覚フルダイブ型人生体験ゲーム「Old Life」は、超巨大サーバーを持ちCCがなかった時代の暮らしを何でもありで体験できるゲームだ。農家をやるのもよし、サラリーマンになるのもよし、大統領になるのもよし、学生になるのもよし、買い物もでき、料理もでき、犯罪もできるが死んだらそこですべてがリセットされる。アバターはやっていることに合わせて成長するので筋トレすればマッチョにもなれる。ちなみに俺は暗殺者としていろいろ暗殺している。現実に限りなく近くシミュレーションされており、風とか物音とかもあるので相当難しく何個のアバターを無駄にしたか覚えてないほどだけどな。


 『OLサーバーがダウンしました』 思考を遮る唐突なアナウンス。サーバーがダウンした? おかしいだろこのサーバーは惑星4個分のシミュレーションを可能とするほどのスペックがあるはず......。


 『〇〇サーバーがダウンしました』

 『〇〇サーバーがダウンしました』

 『......がダウンしました』

 『......しました』

 『......た』


 『危険性のあるウイルスを確認』

 『全ネットワークを強制遮断』

 周りのアバターたちが瞬時に強制ログアウトした中で俺だけこの世界にいた。

 ......え、ちょっと待て俺は!!??


 そう一人でパニックに陥っていると『異世界転移』というゲームサーバーの入り口が突然現れて俺を強制ログインさせた。



 「ようこそ異世界に。新しい世界、楽しんでくれよ?」


 そう楽しげな声が聞こえた後、物心がついてからこの十数年途切れたことのなかった俺の意識は消えた。



面白かったらブックマークと評価、お願いします。その他誤字脱字、意見があったら教えてください。


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