第八話 勇者父親の屋敷に行く
前回は、養護施設の施設長が何処かへ電話をしていたという所まででした。
数日前からの勇者視点から始まります。
突然やって来た父親は施設長達と話をした後。
一緒にやって来た白い服を着た(ドクター)に何か命じた。いきなり抑えられて血を抜かれてしまったのだ。
従魔を召喚する訳でも奴隷紋を刻むわけでもないのに針を刺され血を抜かれてしまった。その時慌てて魔素子まで抜かれないように対応するのが大変だった。
血液を取ったら取ったで直ぐに何処かへ行ってしまった。
何かの検査に血を使うのだろうが、冒険者の頃は、出血量が多いと命取りだったので沢山採るのは勘弁して欲しい。
どうやら自分の事を本当に子供なのか確認して、引き取る手続きをしたいようだ。
父親自らの立会いで採血されて、中身に納得したのか数日後に父親は又やってきて施設長と話をしていた。
「再度の検査でも間違いなく親子とは判定されたのですがね。」
「なら、お顔はお母様に似ているのでは無いですかな。」
「いや似ておらん。多少彫りが深いというならそれでも納得できるがな。我が家には居らんのだ…。緑色の瞳の人間などは。」
「いや、それは、奥様の家系については余り分からないのでございましょう。おじい様かお婆様に欧米の方がいらっしゃったのでは有りませんか?」
「そうだな、それで納得するしかあるまい。」
二人は自分が親と似ている、似ていないで話をしていた。
鏡を見る最近になってからは自分でも気が付いていた、この地域の人間の瞳は黒ばかりで、時折他の色の人間がいるだけだった。
「学校へしっかり通わせていただいて、普通の生活ができるのなら私どもも安心してあの子を送り出せるのですが。」
「無論だ。あの子は跡取りとして引き取る、女ばかりで男が生まれないのでな。仕方ないのだ。」
手続きがされ、父親に引き取られることになった。 明日迎えに誰か来るそうだが、父親本人は来ない。
ずっとこの施設でも良かったのだけれど、ここから通わせてもらえる学校よりもトレーニング設備や、算術の教師のランクが上の<学校>に入学させてもらえるというので、父親の屋敷で暮らすことを納得した。
同室の男子二人は、またいじめられないか心配していたが、一緒にトレーニング(鬼ごっこや、ボール投げ)していたので殴られそうになっても直ぐ逃げられるだろうし、へな猪口パンチくらいなら避けられる様になっているから、心配はしていない。
迎えに来たのは屋敷の使用人(執事)だった。
施設長に挨拶して、自動車で父親の屋敷へやって来た。
建物に入るまで忘れていた。
昔、姉さんが読んでくれたお話を。意地悪な親戚に引き取らた女の子が、れひどい目にあう話だった。
そう、家に着くまでは忘れていた。急に心配になったが、今更戻るわけにもいかなかった。
前の世界の貴族の屋敷には及ばないが大きな家で、年配の執事やメイド(使用人というらしい)が何人かいた。見たところ二階建て。一部は三階が有るかも知れない。
玄関ホールから中に入ると、高そうな服を着て前に見たことがある女がいた。母親を<猫>とか<泥棒>とか言っていた女だ。こっちをチラと一瞥した後、嫌そうな顔をして何処かへ行ってしまった。
面白く無いのだろう。前の世界では娘に没落貴族の三男や四男を婿に迎えて家を継がせていたりしたから、同じようなことを狙っていたのかも知れない。
一人前になった後は、父親の世話になるつもりは無いので、その後は好きにすれば良いさ。
先ほどの執事に屋敷を案内される。白髪交じりの五十歳位の男性で、細身だけれど前の世界でも冒険者をやれそうな雰囲気がある。父親の運転手権用心棒なのかもしれない。
殆どの使用人から敵意は感じられなかった。継母と親しそうにする執事から僅かな敵意を感じるだけでどちらでもない人が殆どだった。
好意を持っている人も居ない様だ。もしどんな人間かも判らないのに、変に猫なで声で接して来る人間が居れば、それは何か企んでいるのだろう。
少し年上の女の子や年下の女の子がいたが、話しかけることも無く行ってしまった。彼女達からは良く思われていないようで、食事の時や広間であった時も挨拶だけでそれ以上話すことも無かった。貴族とのつき合いも似たようなものだったのでこれは気にならなかった。
同年代や、少し年上の男の子さえ居ない。
トレーニングは一人でやるしか無いのだろうか。
もしかすると、あの細マッチョな執事さんならトレーニングに付き合ってくれるかもしれないと思うのだった。
実際仕事の無いときには、トレーニングに付き合ってくれた。屋敷の周りを走っても僕から遅れなかった。大人と子供の体型の差はあるし、全力で走ってはいなかったけど、結構凄いと思う。
何日かして、何人もの家庭教師がつき始めた。算術や言語、音楽にマナー。音楽やマナーについては貴族とのつき合いで覚えさせられた事があるので、こちらの世界との違いだけ把握すればたいして大変ではなかった。
算術や言語も頑張れば何とかなりそうだ。家庭教師たちは口々に褒める言葉をなげていた。褒められて嬉しい気持ちは有ったが、もっと自分を喜ばせたのは「余裕が有るなら剣道や柔道も習わせるか。体力も付けた方が良いだろうしな。」という言葉だった。
執事さんと、屋敷の周りのランニングはしていたが、武術の訓練はうれしい。剣道を教わるのは執事さんお勧めの道場なのだそうだ。
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