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異世界勇者は帰り道を探す  作者: ゆたここ
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第五話 勇者、養護施設で暮らす

施設長が掛け合ったので、病院の費用は父親が出しています。

 庭に有った黒い鉄の馬車(じどうしゃ)で父親が行ってしまった後、新聞記者が鉄の馬車を走って追いかけていくのが通路から見えた。まだ入り口近くでウロウロしていた様だ。


 施設長に促されて施設の中を案内された。

 食堂やトイレなど大きかったが一番驚いたのが大きな風呂だった。病院でも体を洗う施設は有ったが、大勢で一度に入れる施設を実際に見たのは初めてだった。

 施設の職員は先生と呼ぶこと。

 就学(しゅうがく)年齢?になると学校に行って算術や歴史などの学問や体力トレーニングが行えること。

 学習で分からないことは、年齢が上の子や職員(先生だったか)が教えてくれることなど。

 学校という所に行かせてもらえるのは何年か先らしかった。前の世界のように師匠が弟子に仕事を教える事も少しは有るようだが、村や町の物知り老人が野菜や肉をもらう代わりに近所の子供に読み書きを教えるのでは無いらしい。

 施設長に言ったら「何時(いつ)の時代だね。」と笑っていた。


 子供達が順番で通路やトイレや庭など共用場所の掃除やゴミの片付けをする事も聞いた。この世界に転生して歩けるようになってからは、姉と二人で掃除だの片付けなどやってきたので問題なかった。前の世界でも下積み冒険者の頃はやっていた事だ。


 ただゴミを、生ゴミや燃えるゴミ、プラスチックや金属等で細かく分けるのはしたことが無かった。母親は全部まとめて袋にいれていて。部屋に置けなくなると何処かへ持っていっていた。

 前の世界でも金属はドワーフが集めて、金属の地金にしていたが、この世界は色々なものを再利用するらしい。


 この施設にいれば、前の世界の平民よりも贅沢は出来ないが今までよりまともな生活が出来そうだ。

 そして一番嬉しかったのは食事を作る職員の人がいて、必ず食事が出来るという事だった。そこだけは貴族並みの生活と言っていいだろう。


 自分が寝る場所は、2段ベットがある四人部屋だった。2段ベットがある狭い部屋を見た時冒険者時代を思い出して懐かしくなったが、今から戻れる訳も無かった。


 四人部屋だったが同室は二人の男の子だった。年齢的には多分自分と同じくらいなのだろうが、前の世界と合わせると、自分はそこそこの年齢だと思う。

 挨拶の後、話をしてみたが年齢だからなのか、今までの生活だからなのか二人と話は会わなかった。


 食事の時間だと言うので、二人と食堂へ向かった。

 食堂への通路で、体格の良い年長の男子が

 「なまいきだ。」と言ってきた。


 理由も無しに絡んでくるのは冒険者時代によく有ったけれど、どこの世界でも同じなのだろうか。

 冒険者時代に乱暴者は随分見てきているし、今の自分より体は大きいが強そうには見えなかった。


 無視して横をすり抜けようとしたらいきなり後ろから掴み掛かってきた。

 カウンターで殴り返すほどの力は無かったので、出して来た手を払ったのと同時に足を掛けて転ばそうとした。


 体重差からなのか転ばなかったが、よろけて顔を真っ赤にして「このやろー」と言っている。職員さん(先生だったか)が走ってきてそいつを連れて行って何か言っていた。


 その後もそいつは時々殴りかかってくるが、肉や野菜を沢山食べられる様になった最近は、よけるのも楽に出来る様になったし、拳があたってもそれほど痛くなくなった。

 なぜか同室の男の子が自分の後を付いて来るようになってしまった。自分の前に同室だった先輩が、年齢制限で施設を出て行った後に、あいつに殴られたり怒鳴られたりと、いじめられていたのだそうだ。


 まだ学校には行けないので、昼間は同じ年代の子供達でのトレーニングだった。順番を決めて追いかけあったり。柔らかい玉を投げあう投擲(とうてき)の練習をした。塀から出て建物の周りも回った。遠くへ行くなと先生に怒られたが、長く走るのは外の方が距離も長く走りやすかった。


 外を走ると、品物の取引をする店が有ったり、食事をする店が有った。もっともこの国の通貨は持っていなかったので、見るだけで買うことは出来なかった。

 果物を作っている畑も有った。何日か畑にいる人に走りながら挨拶をしていたら。傷物で売れないから持ってけと<梨>を幾つももらった。お礼を言って施設に帰ると先生に渡した。晩御飯のデザートは切り分けた梨だった。

 売り物にならないと言うので、あまり美味しくないのだろうと思ったが、とても美味しかった。これで売り物にならないなんて、この世界は贅沢なのか、貴族の様な人たち専用の農園なのか。それとも傷物を口実に自分の様に園で暮らしている子供達に果物を食べさせたかったのだろうか。


 走ってトレーニングしている時も、ダークウルフなどの魔物に襲われる事は無かったが、気配を感じる事は時々有った。ただ監視されているのか、襲うタイミングを狙っているのか、よく分からない状況だった。

 どちらにしても用心だけはしておこうと思う。今のうちに体力を付けたり魔素子を集めたりしておくことにした。

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