第十三話 夏休みの予定
前回は、いじめじゃなくて、トレーニングなの?というお話でした。
家に帰り学校で配られた紙を、僕の担当執事に渡すと、
「夏季休暇中の、合宿の案内ですか。海の家で合宿して、勉強と運動、リクレーションも行うようですな。」
執事に内容について聞いてみると、紙に書いてある事に加え、色々教えてくれた。
「夏季休暇は一ヶ月以上ありますので、人によっては勉強やトレーニングもせず、ダラダラとした日々を過ごし、怠け者になる者も多いのです。その為に、夏季休暇中は沢山の宿題や自由研究という、数日では出来ない課題を与え休暇中でも怠けない様にする学校が多いのです。私の時もそれで苦労いたしました。」
「……?」
「私の話はどうでもよろしいですね。坊ちゃまの学校は、自主性を重んじる校風ですので宿題等はございませんが、学習塾に通わせたり、家庭教師の集中講義を受けさせたりするご家庭が多いと存じております。」
「さらに、合宿予定の海の家の近くには旦那様の別荘も御座います。砂浜での坊ちゃまのトレーニングに私めも、ご一緒出来るやもしれません。」
なんか、さらっと出てきたけど、砂浜のトレーニングって絵が動く板で見た、何処までも続く砂の上を走り続けるあれか。昔砂漠で戦った時に、苦労した記憶がある。砂地でのトレーニングをして、砂漠の訓練が出来るなら、行かないと駄目だ。執事が言うには道場での訓練よりキツイらしい。
話をするのは気が進まないが、父親に話して合宿に参加するか、別荘に寝泊りして砂浜でトレーニングするか、どちらかは実行したい。
食堂で椅子に座り、父親に話しかけようとすると後にしろと言われてしまった。
向かいの席では母親が、ひらひらした服で椅子に座った娘の世話をかいがいしくやいている。
家に帰ると母親によって、学校の制服から直ぐに着替えさせられるのだそうだ。着る服も毎週の様に買いに行っている。
彼女はお人形のようねと母親は言っているが、お人形と言うより、着せ替え人形の様だとメイド長が言っていた。その上背も小さい彼女を、此処に来てからずっと妹だと思っていたが、姉だった。妹はいなくて、姉が二人(本当の姉を入れれば姉が三人だった事になるか)
上の姉は寄宿舎というのに入っているらしく、休みの日以外は屋敷にいない。それもあってか、母親は下の姉に対して世話をやいたり、ああでもない、こうでもない言っている。
「はい、お母様。」と返事をした後、
こっちを見て睨んでいる。
睨んでいても、それほどの敵意を感じないのは、本当は母親に反抗したいけど、出来ないから僕に当たってる感じだろうか。
学校にいる時は、姉は他の先輩達と、仲良さそうに話をしているし、彼女や彼女の関係者から何かされる事も無かった。
家にいる時は、彼女と親しいメイドが持ってくる食べ物から少し臭いがするくらいだ。臭いがしても腐ってはいないし食べても酸っぱくないので、気にしないことにしている。僕担当の執事さんが、気付いてメイドさんを睨んだりする事も有るけど、「気にしないで。」って言ってある。前の家ではもっと酷かったって言うと、黙って深々とお辞儀をするけど、あまり気にしないで欲しい。
食事の後父親の部屋に行って、合宿の話をした。
いつものように難しい顔で、
「そうか。」と言った後。
僕の担当執事を見て。
「どちらでもかまわん、手配は任せた。」と言った。
それだけだった。
次の日学校で、教授の娘と、小説家の息子に合宿の話をした。
教授の娘は海外で発掘する父親に付いて行くので行けないと悔しがっていたが、小説家の息子は一緒に参加するそうだ。
執事さんと決めた海岸での早朝トレーニングに誘ってみようと思う。話す前に授業になってしまったが、当日話せば大丈夫だろう。
こうして、夏休みの予定が、海の家での合宿に決まった。
寒い時期でも、ソフトクリーム買ってる人結構いますよね。どんだけ、燃えてるんでしょう。