第十話 剣術の修行と友達と
勇者の友達ができる。
その女の子とはあの後も何回か道場で試合した。強くて一度も勝てなかったけれど。休憩時間に話をしたり一緒に甘いお菓子を食べた。年齢も上だったし弟の様に思っていたのかも知れない。
前の世界の事とか話せない事も多かったけれど、この世界で始めて出来た、心を許せる友達。だと思う。
小学校に入学する準備が始まった頃だった。
急に彼女は行方不明になってしまった。
身代金の要求も無いから、営利誘拐でもなく道場の師範のお兄さんや叔父さんが探し回っているのだそうだ。
子の世界で、やっと出来た友達が急にいなくなってしまった。姉が死んでしまった以来の衝撃だった。
しばらくは家庭教師が来てオベンチャラを言っても勉強する気持ちになれなかったし、道場へ行く気にもなれなかった。
部屋で閉じこもりぎみの生活をしていたら、お友達候補というのが家にやってきた。悪い人間でないのは判ったが。何か秀でたものもなく、目指すものもない子供では真に友達として付き合おうとは思わなかった。
ただ、部屋でじっとしているのも馬鹿馬鹿しくなって、家庭教師の授業や、道場での修業は再開した。
そのうちに、入学試験というのに連れて行かれ、紙に書いた質問に答えたり、大勢の先生というのの前で質問に答えた。魔王の前に対峙した事を思えば緊張などするはずも無かった。
しばらくして小学校というのに入学した。いつの間にか合格していたようだ。家庭教師も沢山いたし。それなりに勉強もした。家に金があり多額の寄付をしたのも大きいのだろう。
小学校に合格して、通学が始まっても、今はそれ程嬉しくなかった。
ただ、ずっと家の中にて継母や義理の姉や妹達の傍にいるのも嫌だったので、学校へは毎日通った。
クラスの生徒は二十人ほどで、一般的なクラスの人数よりは少ないのだそうだ。
お金持ちや、貴族の様な人たちの子供と特待生という、特別試験の成績が良かった子供達のクラスなのだそうだ。僕は……。どちらでも良かった。
お金持ちの子達は、親に夫々の顔つなぎをしろと言われたのだろう、学校が終わった後で夫々の家にお邪魔しているらしい。僕も誘われたが、「剣の修行が有る。」と断っている。五月の連休に何処へ行くとか話しをしていた。
その子達やその親達から僕は。笑わない子、表情のない子と言われているらしい。
勉強で特待生の子達は、休憩時間も参考書を開いているし、昼休みもお弁当を食べながら参考書を読んで勉強していた。
そんな中でも例外は二人居た、
大学教授の娘で髪の毛が薄茶の子と、有名小説家の息子(どんな小説かは知らない)が、休み時間暇そうにして、僕のところへやってきていた。
特待生なのに、元々勉強が出来るのか、入学した後はどうでも良いと思っているのか。親のコネで卒業まで行けるのか、それは分からない。
小説家の息子は自分でも小説家になりたいのだと、自分で作った、冒険者がモンスターと戦う話を「どうだ、面白いだろ。」としてくるのだが、そのモンスターは、そんな攻撃してこないし、その攻撃はその盾では防げないと言うと、熱心にノートにメモを取っていた。
教授の娘は授業中に先生の質問が有っても全て答えているので、もうこの学年の知識は全て終わっているので、授業中も暇なのだろう。
正確に回答したと思えば、変な回答もする僕を、面白がっているようだ。
周りから見れば、この三人は友達グループなのだろう。
入学して、しばらくしてから、それは始まった。
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