第二話
呼び方は一応決まったが、もう一つ言わないといけない事があった。
俺はハッキリ宣言するように言う。
「山下さんに勉強で俺が教えられる事は何もない!」
あきれたように彼女が言った。
「開き直りですか?」
「いや違う。次からどうするって話?違う人にする?」
「私はカテキョなんて必要ないんですよ。親が勝手に頼んでるだけで」
相当嫌なようだ。確かに彼女には必要無さそうだ。
「頭良いもんな」
「イオリが辞めたとしても、どうせ親が別の人連れてくるんです。私に干渉しないなら続けて良いですよ」
「了解。次もくるわ〜」
「16歳でヒモを持つとは思いませんでした」
「ひど」
「さっき私がイオリをバカ呼ばわりしたのに、なんで怒らなかったのですか?」
「事実だしな〜。あ!もしかして、これまで来た家庭教師を怒らせたりして、辞めるように仕向けてたのか?」
「そうですよ」
「なるほど、工藤さんに何言ったの?」
「ナイショです」
「そこをなんとか?」
「まだイオリは、私の質問に答えてないです」
「あ、怒らなかったってやつね。だから事実だからだよ」
「でも普通怒りませんか?」
「例えば山下さんが、高校一年だと言われたとしても怒んないでしょ?」
「その例えはどうかと」
「じゃあ別の見方で、俺は勉強できる事に価値を持ってないんだよ。できる人を凄いと思うけどね」
「うん」
「できない事は格好悪いんかな? できる人に助けてもらえば良いじゃん。っで俺も何か違う事で助ければ良いじゃないかなと思う。そんな感じわかった?」
「なるほど、わかりました」
「っで山下さんの答えは?」
「工藤さんを呼ぶ時おばさんと呼びました」
それはえぐい。俺は笑いながら言う。
「グッジョブ」
2人で笑う。これならどうにか続けられるかな。
彼女が笑いながら言った。
「イオリは凄い人ですね」