第十二話
大学の授業が終わり。家へ帰ろうと歩いていると俺を呼ぶ声がした。
「進藤君」
声の聞こえた方を見ると工藤が立っていた。デジャブ?
「前もこんな事あったよね?」
自分が思っていたことを言われて少し戸惑う。
「……」
「少し付き合ってよ。歩きながら話そ」
「りょうかい」
最近、俺はこの前の事があったので、工藤を避けていた。けど工藤は俺を見付けて話しかけてきた。凄いな、俺には真似できない。
「この前ごめんね」
「いや、気にするなよ」
「うん……わかった。あのさ……」
「なに?」
雰囲気が変わるっていうのかな……次に来る言葉に備えて、俺は覚悟を決めた。
「私、進藤君の事好きだよ」
「うん。でも「ストップ!」」
俺が断りの言葉を言おうとしたら止められた。
「なんだよ」
「はぁ〜何で家庭教師のバイト紹介しちゃったかな〜」
すげ〜女って。
「何でわかるの?」
「女の勘?」
「マジで」
「まあ、それもあるんだけど、進藤君が楽しそうにバイトに行くのがわかるからかな」
「あ〜」
「その様子だと自分でも気付いたみたいだね」
「まあね」
「ロリコンだと」
「おい。ちがうから!」
「ちがくもないじゃ?」
「いやいや」
「はぁ〜」
「なんだよ?」
工藤が急に真面目な顔になって言う。
「私の事避けないで」
「……わかった」
「じゃまたね」
「おう」
話をしている間に、彼女の顔がどんどん暗くなっていくのが切なかった。
最後、泣くのを必死に堪えている顔が忘れられない。
優しく出来ないのが辛かった。