第十一話
昨日の事があって俺は何だかブルーだった。でも、仕事は行く。
彼女の家で背中合わせ勉強法(勝手に命名)を実施していた。
「イオリ何かありました?」
背中越しに彼女が聞いてきた。何だが顔が見えないのも話しやすいかも。
「女の子を泣かせてしまったので落ち込み中」
彼女が動揺しているのがわかる。
「げ、原因は何ですか?」
「腕に抱きつかれて拒否したというか?」
彼女の呟く声が聞こえた。
「私だって我慢しているのに」
「我慢してたんだ」
「いや、違います」
耳が赤い可愛い……って俺何考えてんだ。
「その人の事イオリは好きなんですか?」
「なんで?」
「落ち込んでいるのでしょ」
「周りにいる人が俺のせいで傷つくのが嫌なだけ」
彼女がほっとしてるがわかる。背中越しで話すと相手の事が良くわかるんだな〜。
凄くこの瞬間が大切に思えた。背中合わせって安心する。
どうしようもなく彼女の背中が愛おしかった。そして彼女自身も……。
自分の気持ちに気付いてしまった。
まあ、気付いたからって何も変えるつもりはないのだけど……。
「イオリ時間です」
終わりの時間になったらしい。俺は立ち上がって彼女を見た。こんなに可愛かったっけ?
つか、俺は何意識しているんだ。彼女は封筒を俺に差し出して言った。
「はい、今日の分です」
「いらない」
つい言ってしまった。
「え?」
彼女がビックリしている。そりゃそうだよな。あ〜何もかも面倒くさくなってきた。
「あ〜帰るから」
「ちょっと待って」
俺は彼女を振り切って、そのまま帰った。
彼女からメールが着た。俺が怒って帰ったと思っているらしい、否定するメールを送っておく。
俺は何やってるんだろうか? ガキだな。