第十話
最近工藤は、俺と同じ授業の時に隣へ座ろとする。そのおかげで? 工藤との噂は消える気配がない。はぁ〜何にもないのに……。
「おはよう」
俺の隣の席に座ると工藤が言った。
「何? 挨拶くらい返しなさいよ」
「……おはよう。最近遠慮なくなってきたな」
「え、そうかな」
「その方が良いよ」
「……」
うあ、なんで赤くなってんだ? また珍しいもん見た。
「あ、まだ、バイトつづいてるの?」
話そらした? まあいいか。
「つづいてるけど何で?」
「あの子は、二回以上つづいた人いなかったから」
「まじで」
「結構有名」
「それ紹介したのかよ」
「あはは……ごめんね」
やばい。一瞬かわいいと思ってしまった。
その後、工藤と授業中も小声で話をしていた。この授業、最近いつも聞いてないな……まあいいか。授業が終わり、次の授業は工藤と別なので別れる。
「じゃ待ち合わせは学食ね」
「は!?」
「さっき一緒に食べようって言ったじゃん」
いや、そんな話はしてない、つか今周りに聞かれてるから! さすが工藤策士。
「わかった」
負けましたよ。
工藤は笑顔で手を振って去っていった。工藤は傷付けたくないな〜。はぁ〜。
午前の授業が終わり。俺は学食へ向かって歩いていた。
「うあ」
突然腕に重圧が……工藤が腕に抱きついている。やばいって、嫌悪感が抑えられない。
突き飛ばそうとするのをどうにか堪える。
「びっくりした?」
「……」
工藤が抱えている俺の腕を抜き取る。工藤から少し距離を置く。
どうにか落ち着きたい。
怪訝そうな顔をしている工藤に言う。
「先行ってて」
「どうしたの?」
「何でもないから」
「何でもなくないじゃん」
俺は工藤から離れるように歩き出す。
「何で? 私のせい?」
後ろから涙声が聞こえる、振り向くと工藤が泣いていた。
はぁ〜。またやってしまった。自分を嫌いになる。
方向転換して、工藤に近づく頭を撫でながら言った。
「工藤のせいじゃないから」
工藤が何か言いたそうだったが、俺は歩いて側を離れ。