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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第六章 過去へのリスタート
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シェルターと狩り

 ダンジョンのような洞窟の先には地下施設があった。その地下施設は一種のシェルターのようだった。

 入ってから最初に見つけたのは非常食と思われる缶詰やドライフードに飲み水の箱。非常用発電機、最低限の生活用具。何故か置いてある医療品が入ったトランク。

 アルムが壁のスイッチを押して明かりをつけたようだ。だが非常用発電機はまだ稼働していないところを見るとどこかから電気が供給されているようだ。

 電気はどこかから来ているのだろうか?てか、ルルーンの街にあるサイボーグ女達の拠点も家電があったが、あれもどこかから電気を供給されているか謎過ぎる。それと今までに立ち寄った遺跡も電気が使われていたが、どこから電気を供給しているか謎だ。

 不老族の異常な文明によるエネルギー供給がされていることにしよう。

 誰が地下十メートルぐらいの場所にこんなものを作ったのだろうか。見た目は地下シェルターのような扉は薄暗くて狭い洞窟の中を数時間かけて進まないとたどり着けない場所にあるのも謎だ。


『世紀末漫画の主人公が暮らしていそうな部屋ね』


 俺の手を握っているスフィアがテレパシーで漏らす。

 世紀末チックな漫画はあんまり読んだことが無いけど何を言わんとしているかはなんとなくわかる。

 中は今までの遺跡と同じく綺麗なままで埃が蓄積されていない状態が保たれていて清潔で綺麗だった。


 俺達がいる場所は玄関と言うべきか小部屋になっていて道具を入れるスペースがある。そこに道具と一緒に何足か頑丈そうな靴が入っていた。

 小部屋内にはいくつかの箱が山のように積み上げられている。山の一部をアルムとミリが明けて中身を確認していた。

 アルムは未来から来ているから幼い見た目とは違い、精神年齢が高いと思うから危ないことは自分で判断できるだろう。ざっと視界で箱の中身をいくつか確認したが危険な物は無そうだし。俺もすぐそばにいるし、事故は防げるだろう。

 小部屋の奥へと続く廊下があり、廊下には幾つもの扉が設置してある。その先は何もないガランとした部屋が数部屋と布団のような寝具がある部屋が一部屋。最後に倉庫のような箱がいくつも置かれた大部屋が一部屋あった。

 後でミリ達と一部屋づつ見て回ろう。


 寝具がある部屋はここの持ち主が寝泊まりしていた物と思われる。が寝具と空っぽの食料と水が入っていたと思われる箱が置かれているだけでの寂しい部屋だった。寝具と空っぽの箱があるだけで何もない部屋と変わらない部屋だ。

 電気が生きているから電子機器があるかと期待して視界で地下施設を探索したが、なかった。倉庫みたいな大部屋にあるかもしれないけど。


 誰かが雲隠れの拠点として使っていたのか?寝具も一人分しかないがこんな施設は到底一人では作ることができない。倉庫には洞窟や入口よりも大きな金属の箱があった。それも一人では施設の中に入れることはできない。どうやって施設の中に入れたのかは謎だ。

 倉庫は空けていない箱が数えきれないほどがあるのでミリ達と中身を確認しよう。

 玄関に置いてあった食料の箱の量だけでも考えるに複数人の数日分の量だ。施設は複数人で生活するように設計してあるように見える。

 倉庫を確認すれば複数人分の生活に必要な用品が出てくるだろう。


「タカシさーんこんなものがありましたよ!先っぽに穴が開いてます。形的に不老族の武器に似てますよ」

「ミリお姉ちゃんそれは危ないから置こう。その穴を覗かない」


 ミリが自身の身長よりデカいライフルを持ってきた。あまりにもライフルが重いのか引きづっている。アルムはミリがライフルの穴を覗いたり、危ないことをするのでそれを一生懸命止めようとするが、ミリは無邪気に触れたりと好き放題している。


「ミリその辺にしておいて。それは危ないものだから元の戻して」

「そうよ。お兄ちゃんの言う通り。子供が持っちゃ危ないよ」


 アルムがミリを必死に止める姿はとても面白かったけど、謝ってライフルの引き金を引くかもしれないのでミリに元の場所に戻すように言いつけた。マガジンはついていないが、不老族の不思議技術の銃かもしれない。引き金を引いたら弾丸が発射するかもしれないから危ない物は触らないように言わないとな。

 ライフルは部屋の隅に置いてあった長方形の鉄製の箱に入ってあったそうでミリが戻すついでにその箱を見ておく。

 俺が興味持った者が気になるのかスフィアも付いてきた。


 ライフルが入っていた箱には複数のマガジンに銃弾が入った小箱が入っていた。


『狩猟用の銃みたいね。銃は詳しくないけどどこかで見たことがあるわ』


 箱と一緒に入っていた小冊子をスフィアが読んでいた。

 スフィアの頬に自分の頬を当てて小冊子を覗く。

 小冊子には見知らぬ文字が書かれていた。

 この世界の文字はまだ読めないが、ルルーンの街や王都でみた文字の形が違う。今までの遺跡で使われている文字とも違う気がする。

 文明が遅れた世界の中に存在する不老族の不思議テクノロジーがある世界だ。不老族は独自の文字を作ったり、言語を作るくらいはできそうな気がするが、言語の統一化は流石に超文明でもできないだろう。

 一つの国に複数の言語が使われていても別におかしくはないだろう。肌の色の他に耳が尖っていたり、角や動物の耳や尻尾が生えている人種がいるんだから種族それぞれに言語がある可能性あるかもしれない。

 ミリもアルムもスフィアも同じ言語でしゃべっているけども。


 剣と魔法の世界に銃くらいはあってもそう驚かない。この世界にルルーンの街に初めて来たときにチンピラが持っていたしな。あれは確か遺跡から盗み出された銃だったかな。

 この国は遺跡から出た銃は権力者に売る、もしくは献上しないとダメだったかな?今は金に困っていないから銃は持ち帰らず、試しに魔物相手に撃って、終わったら元の場所に戻しておこう。


『スフィアはこの本に書かれている文字が分かるのか?』

『ええ、不老族の国に住んでいたんですもの当然よ』

『なんて書いてあるの?』


 やっぱり読み書きができないのは痛いな。まずはミリにこの国の文字の読み書きを教えてもらうと考えていながらも一回も教わっていない。

 今はスフィアが小冊子に書かれている文字を読むことができるから読んでもらおう。


『銃の使い方の説明が書かれているわ。セーフティーが上を向いている引き金が引けないとか、マガジンの外し方とかね。銃なんて今の私達には必要ない物だわ』


 と言ってスフィアは小冊子を箱の中に戻した。

 スフィアが読み終わるのを待っていたかのようにミリが小冊子を取り出して開いた。


「うーん。読めません。これは何について書かれている物なのでしょうか?」

「スフィアによると銃の取り扱い説明書のような物らしいよ?」

「この本を読んでいたということは、スフィアちゃんはこれに書かれているのを読めたのですね」


 小冊子のことはスフィアから聞けばいいと思うのだが、まだミリとスフィアの間には壁があるようだ。アルムも同じようにスフィアとの間に壁がある。

 原因はスフィアがテレパシーで会話をするのが原因だ。

 こんどテレパシーでコミュニケーションを取るのではなく、言いたいことは口で話す練習をさせないとダメだな。

 スフィアが言いたいことを言うのは簡単だ。相手に触れるだけでテレパシーが可能だからいうだけなら問題はないが、ミリもアルムも俺みたいにテレパシーで返すことができない。

 そういう能力を持っていないからだ。

 ミリ達とスフィアで会話できるようになれば距離も簡単に縮まるだろう。


 玄関周りはこのくらいでいいだろう。


「廊下の先を進むよー」

「「はーい」」


 俺が廊下の先に進むと言うと少女達がテトテトと擬音が聞こえそうな足取りであれの後に続く。

 廊下には何もなく。面白みもないので一部屋づつ中に入って調べてみることにした。


「さっきの部屋と今いる部屋には何もありませんね」

「入口のところしか使ってなかったのかな?」


 ガランとした何もない部屋を目にしたミリとアルムがそんなことを口にする。

 何もない部屋を隅々まで探したが何もなかった。視界で見たから何もないと分かっていたけど。

 同じような部屋があと何個もある。何もないと分かっているなら中だけ見て次に進もう。


 次は寝具がある部屋だ。

 その扉を開く。


「ここも何もないですね」

「へえ?」


 俺はマヌケな声が口から出て行った。

 寝具があったはずの部屋には他の部屋と同じようにガランとしており何もなかった。

 おかしい。確かに視界で見たときには寝具や食料が入った箱が置いてあったはずなのに今はない。

 隣の部屋と間違えたか?


「お兄ちゃん次の部屋行くよ?」

「ああ、ごめん。今行くよ」


 アルムが声をかけてきたのでそれに応じて次の部屋に行く。

 次の部屋にも行って中を見たが寝具はなかった。その次の部屋も見たがやはり寝具はなかった。

 俺は一度寝具があったはずの部屋に戻った。でも寝具はなかった。

 どうなっているんだ?さっき視界で見た時は確かに部屋に物があった。他の部屋は何もない部屋で一部屋だけ寝具が置いてあったから見間違いでもないはずだ。

 どういう仕掛けになっているんだ。


『どうしたの?何か見つけたの?』


 スフィアやミリ達が俺の顔を窺うように見つめていた。

 一部屋だけ寝具が置いてあったのにこうして部屋の中に入ったら、寝具がないことを話した。


「それはおかしいですね」

「そうおかしいんだ。確かに誰かが生活していた痕跡があった。でもないんだ」

『部屋を間違えたのじゃなくて?』

「俺も最初はそう思って次の部屋と間違えたかと思ったが、見ての通り寝具が無いんだ。ここはおかしい」


 スフィアがテレパシーで話していることも忘れて、俺はそのまま話し出した。


「じゃあ部屋の中に物があったことを確認した方法と同じやり方で確認したら?」


 アルムに言われて部屋を視界で確かめる。

 視界は扉を通り抜けて部屋の中に侵入する。でも部屋の中は何もなかった。


「ない。でも本当に中にあったんだ。信じてくれ」

「と言われましても私達は確認しようがないのでなんと言ったらいいのか」


 困った顔のミリにそう返された。

 倉庫がある大部屋も何もない部屋になっていた。

 何か仕掛けがあるかもしれない。不法侵入した俺達だから何もない部屋にしか行けないのか。


「まあまあ、タカシさんそう落ち込まないで」

「お兄ちゃん元気出して」


 と励ましてくれた。

 ポンとスフィアが優しく叩いてくれた。


「みんなもう出ようか」

「うん」

「アルムお願い」

「わかった」


 俺達はアルムの能力でシェルターをあとにした。テレポートする前にアルム達が足元にいくつかの箱を置いていたが気にしないでおこう。

 目ぼしいものなんて何もなかったからな。大したものは持って行かないだろう。

 シェルターの中はしょうもなかったけど不老族のテクノロジーの片鱗に触れて一瞬だけ不老族の国にテレポートで来て不満だったミリは満足しただろう。

 アルムやスフィアは中のしょうもなさに退屈だったから多少のお土産は目を瞑ろう。


 テレポートの先は洞窟の前だ。

 脱線したが街の外に来た目的はミリ達の能力を確認するために来たのに俺が洞窟の奥にシェルターなんか見つけたせいで、いいや。ミリ達は案外楽しんでいたからそれで良しとしよう。


「本当の目的の狩りをしようか。俺は見ているだけだから三人で好きに狩っておいで」


 そういって俺はミリ達が持ってきた箱に腰かけた。ミリ達は蜘蛛を散らすように森の中へ入っていった。

 ミリ達が迷子になるかもしれないから視界で見守ろう。

 視界でミリ達の頑張りを見守りつつしばし待つこと数十分。

 最初に戻ってきたのはアルムだ。狼の魔物を二匹仕留めてテレポートで戻ってきた。


「お兄ちゃん取ってきた。褒めてー」

「よくやったな。どうやって仕留めたんだ?」


 ぎゅうと俺の腹に頭を押し付けて甘えてくる。それに答えるようにアルムの頭を撫でる。

 アルムは見た目が最年少だから視界で見ようとしたが、いきなりテレポートをして見失ったからどうやって仕留めたかと聞いてみた。


「魔物も生き物だから肺と心臓を抜けば死ぬの。だから魔法を使わずに簡単にできた」


 微笑みながらエグイことを言うアルムに少し引いた。見た目が幼女で最年少なのにそんなエグイ方法で獲物を仕留めるとかどうやったらそんな発想にたどり付くんだとさらに聞くと漫画とアニメと答えが返ってきた。

 漫画とアニメであんなエグイ方法を思いつくのか。生きたまま臓器を取り出すのはサイコチックなことだと思うが、最も効率的で安全な仕留め方だ。

 重い剣を振るうことができないアルムは自分が狩りで最も楽にできる方法を選んだに過ぎない。

 魔法を使ったら綺麗に仕留められるのに毛皮が焦げたりするから嫌なのだろう。魔力を使ったら疲れるだろう。


 アルムを膝に乗せてさらに待った。アルムは身体を俺の胸に預けて寝てしまったようだ。

 スースーと可愛い寝息と寝顔が実に微笑ましい。


 次に戻ってきたのはスフィアだった。

 しかも大所帯でゾロゾロと戻ってきた。スフィアが連れ来た連中はここら辺を仕切る盗賊達らしい。その盗賊達は常人とは思えない顔をしており、白目をむいて、口から唾液をまき散らしながらわしょいわっしょいと掛け声を言っていそうな勢いで人間サイズの蛇を盗賊達に抱えさせていた。

 ドヤ顔で褒めろと言いたげに駆け寄ってきた。


 視界で見ていたけど見つけた盗賊達を背後から近づいて無力化していたところまで見ていたが、最初はただ気絶させていただけなんだなって思っていたけど洗脳していたとは夢にも思わなかったよ。


『スフィアこれは何かな?』

『私を捕まえようとした盗賊達を洗脳して彼らに魔物を倒してもらった』


 盗賊達を洗脳して魔物と戦わせたのか。近くに盗賊達のアジトがあったことをすっかり頭から抜けていた。

 盗賊を元居た場所に戻してきなさいと言いたいが、犯罪者だから元の場所に戻すのはやめといた方がいいだろう。洗脳を解除したら再び被害者が出るだろうし、このまま街に行って衛兵の人に引き渡した方がいい。

 スフィアには何もなくてよかったよ。


 戻ってこないミリは何をしているか視界でミリを見ていた。

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