表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第六章 過去へのリスタート
123/126

スフィアの能力

いやー眠いよー。

 サイボーグ少女達の監視をしていたら、スフィアは俺の手を握っていたのでどうかしたのかと問いかけた。


「・・・」


 スフィアは何も言わない。しかし、スフィアの目には迷いがあるように見えた。スフィアの心拍数は少し上がってきている。

 スフィアは何か俺に伝えようとしているが、それを伝えるべきか迷っているのかもしれない。


『タカシ・・・』

「え?スフィア!お前喋れたのか!」


 脳内に話しかけられた。

 これはテレパシーだ!そうか、これがスフィアの能力か。

 脳内に直接話しかけられたのはこれで三人目だ。一人目、二人目はパスとリンだが、どちらも人じゃないな。片方は腕輪でもう片方は木だしな。


「お兄ちゃんどうしたの?」

「タカシさん?大声を出してどうしたのですか?スフィアちゃんがついに喋ってくれましたのでしょうか」

「ちょっと待って」


 部屋の中を調べていたミリとアルムが駆け寄ってきた。俺は二人を静止した。

 スフィアの能力を二人に伝えるべきか迷ったからだ。自分から言った方がいいのだが。


『タカシ、この二人は誰なの?浮気相手?獣人の子は私のことを知っているみたいだけどこの子達はタカシの何なの?』

『え?スフィア二人のことを知らないのか?』


 このスフィアはミリもアルムのことを知らないようだ。ただ俺のことが分かるなら未来から来ているのは確実だ。

 ミリ達のことが分からないならミリ達と出会わなかったルートから来たのだろう。アルムと同じパターンだ。


 二人を紹介することからになりそうだ。


『耳は問題ないだろうか。二人の名前は一緒に行動していたから知っているだろう』

『耳?ええ、ちゃんと聞こえていたから彼女達が話し合っている時に聞いたわ。それよりも彼女達とタカシの関係が知りたいのよ』

『彼女達はスフィアと同じ俺と旅をしてきた子達だよ』


 スフィアに俺達はそれぞれの未来から来たことをテレパシーで話した。


『ふーん、アニメみたいに未来は複数あるのね。この子達も私とは違う未来から来てそれぞれタカシから能力をもらったのね。だから獣人の子、ミリって子は私のことを知っていたのね。あの子の未来では四人で旅をしていたからって』


 スフィアが俺達の現状を納得したところで本題に入る。


『スフィアの能力はテレパシーなのか?』

『テレパシー?ああ、コミュニケーションを取る以外にも私の能力は相手に記憶を見ることができたり植え付けることもできるわよ?それに物の記憶も読むことができるの。結構便利なのよ。私がいた未来のタカシはその能力でいろいろ詐欺紛いなことをしていたわね。わがままを言うならこの能力以外で流用な能力がよかったわ』


 と言うスフィアは結構な悪用できそうな能力をお持ちのようだ。スフィアの詐欺紛いって未来の俺は何をしているんだ。スフィアを守るためにその能力を使っていたことを願いたい。


「お兄ちゃん、いつまでスフィアお姉ちゃんに触れて何している?今のお兄ちゃんってそういう子が好きなの?」

「そうですよ。タカシさん。私の尻尾と耳を触ってください」


 いつまでもスフィアと触れあって話し合っていたからかミリとアルムがプリプリと怒った様子で俺を見上げていた。

 二人にはスフィアとイチャイチャしているように見えたのかな。

 ミリとアルムは歩き疲れていると思い隠し部屋のベッドに寝かせて、俺とスフィアは隠し部屋から出て長椅子に腰かける。

 入口を見張りながらスフィアと手を繋いで夜遅くまで話を聞いた。


「アルムから聞いていたけど不老族の国ってSFチックな都市なんだな」


 スフィアから不老族の国について教えてもらった。

 アルムから少しだけ不老族の国について教えてもらった物と大差がないが、アルムは引きこもりだったから学校の話とネット通販の話ぐらいしか聞けなかった。

 スフィアは不老族の国の中でも田舎の方に住んでいたらしい。田舎と言っても高層マンションが並ぶ街の回りに畑があり、地下には商業施設や住民の働き口である工場などがある街らしい。

 その街のほとんどが耳が退化してテレパシーでしかコミュニケーションを取ることができない異星人や異種族が住んでいるという。それで普段からテレパシーでコミュニケーションを取っていたから思うように喋れなかったようだ。


「そっちの私は寄生虫の実験で廃人になったのね」

「ミリ達は死なせてしまったけどなんとかスフィアは助け出すことができたのだけどそのあとすぐに不老族の人達に掴まちゃって、それから空気のクソ野郎がダンジョンに連れられて、それっきりだったんだ。そっちの俺はどうなの?ミリ達の未来みたいに死んだの?」

「わからない。一か月ほど都会に行くって言ったきり音信不通なってタカシの足取りがつかめなくなったの。都会に行く目的が仕事で行ったのかもわからない。タカシがいなくなって数か月後に男の子が現れて、気が付いたら檻の中にいたわ」


 音信不通になったことはスフィアのルートの俺は死んだのだろう。

 研究所から脱出してからできた友達を放置することはないと思うが、十中八九俺は都会へ行って死んだのだろう。

 スフィアは俺がいなくなった原因や目撃情報をかき集めていたようだが、何も集まらなかったそうだ。警察にも捜索願いを出してもダメで、俺の知り合いになんで都会に行ったのか聞いてみても誰も知らなかったようだ。

 無駄に時間が流れて数か月経過、見知らぬ男の子が現れたっと思ったら奴隷商の檻の中だったらしい。

 檻の中で健気に俺が来るのを待っていたそうだ。


『そういえば、過去に来てもおかしいの』

『何がおかしいの?』


 未来での話が終わり、スフィアの過去から今に至るまでの話に変わった。ほとんどが檻の中で過ごした内容で早く来ないのかと遠回しに責められた。その後、スフィアは過去に来てから疑問に思ったことを思い出したらしく俺はそれをスフィアに聞いてみた。


『起きないならそれでいいんだけど、魔物の群れが街に来ないの』

『魔物の群れ?』

『そう。魔物群れが街に来たのに今回は起きないの。なんで?』


 俺の前のルートでも魔物の群れがルルーンの街に押し寄せてきた。俺がすべて掃討したから街の被害は皆無だったけど、スフィアがいたルートはルルーンの街は魔物の群れによって壊滅状態になったようだ。

 俺のルートも魔物の群れが押し寄せていたから魔物の群れの原因はおそらく俺と空気のクソ野郎が殺し合いをしたから魔物の群れが街に押し寄せていたと思われる。

 スフィアのルートでも俺と空気のクソ野郎は殺し合ったようだ。だが、スフィアの認識では俺と空気のクソ野郎の関係は良好だったようだ。


『俺と空気の野郎が喧嘩したから起きたと思う。過去に来てから今に至るまで空気とはまだあっていない』

『あんなに仲が良かったのに喧嘩を?それに魔物達が逃げ出すほどの喧嘩ってどんな喧嘩よ』


 原因は俺と空気による能力を使った喧嘩とスフィアに説明した。

 俺達の四人の辿ってきた時系列がバラバラだから今の段階で魔物の群れが発生した要因がすでに排除したかもな。現在進行形でパラレルワールドってヤツで新しい時系列に進んでいるけど、もしかしたらパラドックスっていうヤツが元の時系列に戻そうと明日か明後日に魔物の群れが発生するかもしれない。

 それと魔物の群れがルルーンの街に押し寄せてきた原因が別にあるのかもしれないし、それかスフィアのルートと俺のルートの原因は違うのか。今となってはその原因を調べられることができない。

 今の段階では魔物の群れが無いのだから、原因は俺と空気のクソ野郎の殺し合いにしとこう。

 なんで発生したのか気になるけど現場検証で人為的に魔物の群れを発生させたら犯罪者で指名手配される恐れがあるから、今は起きなかったことをラッキーと思っておこう。


 次の日、自分の食い扶持を稼ぐためにルルーンの街の外に出てみた。所持金が当分暮らせるほど持っているが、お金が沢山持っていても困りはしないだろう。

 アルムとミリが俺からもらった能力をお披露目したいと言うので人目がつかない場所まで移動しているところだ。


「お兄ちゃんここら辺でいい?」

「街から十分離れたし、他の人もいないから好きなところへ連れてってくれ」


 街から徒歩で数キロほど離れた場所に移動してところでアルムが聞いてくる。

 街の近くで魔物が出てくるはずもなく、魔物が出る場所までアルムの能力であるテレポートで移動するらしい。

 視界で周囲に人影がいないことを確認し、アルムに許可する。


「アルムちゃんの能力で移動するのですね。話を聞きましたが、一瞬で遠くの場所に行けるなんて便利ですね」


 不老族スキーであるミリがアルムの能力を体感できるとワクワクしている。


『これから何が起きるの?』

『アルムの能力で魔物がいる遠くの場所までテレポートするよ』


 これからアルムが何をしようとしているのかいまいち状況が把握できないスフィアが手を握ってテレパシーで聞いてきたので説明する。

 そういえばミリやアルムの能力を話してなかったな。スフィアが二人に心を開いた時に情報交換みたいな感じで自分の能力を言ったり、聞いたりした方がいいだろう。

 大方、これから目にすることで察するだろうけど。


「みんなアルムから離れないで。飛ぶよー」


 俺達はアルム近くに集まってすぐに目の前が歪み始めた。テレポート中に起きる視界の歪みだ。テレポートが終わればこの歪みも治まるはずだ。


「とうちゃーく。ってあれ?」


 視界の歪みが治まると同時にアルムの疑問の声が聞こえた。


「気持ち悪いですー。ここはどこなのでしょうか?」


 ミリは視界の歪みがダメなようで顔を青くしていたが、すぐに治ったようで自分達がいる場所に疑問の声を出した。


 俺達がテレポートした場所は見覚えない場所だった。

 この場所は白くてのっぺりとしたコンクリート状の建物がコンクリートジャングルのようなビル群が立ち並んでいた。

 まるで近未来の都市にやってきたみたいだ。

 俺達が立っている場所もビルの屋上だ。


『学校の屋上?』


 手を繋いだままだったスフィアもそんなことを漏らしていた。

 どうみても学校の屋上には見えない。ビジネスビルやマンションの屋上と言った方がしっくりくる。


「ごめん、間違えた。昨日夢で学校にいた時のことを見ちゃったから」

「ということはここがあの不老族の国なのですね」


 アルムの話を聞いたミリの目が輝きだす。

 ふーん、ここが不老族の国か。話して聞いた通り、近未来な都市だな。

 今は特に用はないからミリが良ければすぐにでもテレポートするのだがな。


「本当の目的の場所に行くね」

「ちょっと待ってアルムちゃん!もう少し見て回りま」


 ミリが制止しようとしたが間に合わず、焦ったアルムがテレポート開始した。

 再び視界が歪み、次に目に映った光景は森の中だ。しかもこの森は見たことがある。


 周囲を確認して、誰か置いてきてないか確認して、問題ないことを確認した。

 誰一人ビルの屋上に置いてきてないが、ミリが落ち込んでいた。


「もう少しいてもよかったじゃあないですか!」

「ごめんね。アルムはちょっと嫌な思い出しかないから早く離れたかったの」


 憧れた不老族の国にちょっとしかいられなかったからか温厚で沸点が低いミリが怒っているのは珍しい。

 アルムは引きこもりだったから学校は辛い場所だったらしい。俺がいなくなったから不登校アンド引きこもりになった経緯だったはずだ。それなのに学校が辛い場所というのはどうなんだろう。

 俺がいなくなったこととは別に原因があるのだろうか。嫌なことは言いたくないだろうし、俺がいなくなったことで嫌な出来事が起きたのかもしれない。

 そっとしておこう。

 ってスフィアは能力で見てこようかとか言わない。気になるけど、人の心の傷を見るほど人間として俺はまだそこまで汚れていない。


「まあまあ、今ので分かっただろう。アルムがいればいつでも不老族の国に行けるからさ。それよりも俺に能力を披露して魔物を狩るんだろ?今日はそのために街の外にでたんだろ?」

「わかりました。今度行った時はゆっくり見て回りましょう。今日は私がタカシさんにいただいたお力を見てもらいたくて街の外に気のでした。アルムちゃんもごめんなさい。私がわがままを言って困らせてしまって」


 ミリを慰めつつ、今日の目的を言う。

 ミリは目的を思い出して、自分がワガママを言ってアルムを困らせていたことに気づいて、アルムに謝った。

 アルムがいれば好きな場所に行けるから暇な時を見つけてみんなで行こう。行くとしてもアルムが嫌がらない場所以外で学校とかね。


 後方を見たら、洞窟があった。この森ってアルムと出会った森だ。

 もしかして、アルムのテレポートって一度行った場所にしか行けないのかもしれない。


 ☆


 ルルーンの街のとある民家の地下で。

 一人の少女がパソコンで作業をしていた。

 パソコンの画面に不自然な現象を見て疑問の声を上げた。


「あれ?」

「どうしたの?」


 ドーナツを食べていたサイボーグの少女がパソコンで作業をしていた少女に反応した。


「街の外で誰かが空間転移をしたんだ」

「それって被験者じゃないの?どこに向かったの?転移先を本部に連絡しないと」

「それが、転移先は私の母校に転移しているんだ。それもピンポイントで」


 パソコンで作業をしていた少女が言う学校は不老族の国にある学校を指していた。彼女達は不老族の国から被験者を保護するために派遣されたエージェントで、今いる場所もひっそりと活動するための拠点。

 拠点で活動するメンバーはゲームをしたり、映画を見たりと自由に過ごしている。リビングにはゲームのパッケージや私物の雑誌が散乱してとても他国で活動するエージェントの拠点には見えない。


「学校って高等?」

「いや、初等科学校。それも屋上に。誰かが別の任務で来たのかな?」

「そうなんじゃないの?上から直接の任務で来たかもよ。気にしない方がいいよ。それよりも早く被験者を探してよ」


 危険性の高いの力を持つ被験者を保護する場合は階級の高い凄腕のエージェントが派遣されて保護施設に連れていかれる。


「そうなのかな?なんで初等科の学校に転移しているんだろう。ううん、ガーナちゃんの言う通り気にしなくていいよね。昨日見つけた被験者の子は街の外に出て行ったな。どこに行ったんだろう。衛星の映像は」


 何者かが不老族の国に転移したのは不要と決めつけて再び作業に没頭し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ