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異能者は異世界に来て何をする  作者: 七刀 しろ
第六章 過去へのリスタート
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アシュティアの友達

7月になる中で体調が少しずつ良くなっている。

まだ頭痛いけど。

「タカシ様方、フローレイティ家の屋敷はこちらです」


 うん、アシュティア達の屋敷がどこにあるか行ったことがあるので場所はわかる。ミリ達もルルーンの街に何日かいたはずだから領主の屋敷くらいはどこにあるか知っているはずだ。


 奴隷商を後にした俺達はルーカの案内でアシュティア達の屋敷に向かっていた。

 屋敷に着く前に古着屋に寄ってもらった。俺達四人の中で俺とスフィアの服装がヤバい。血が付いた患者服に、裸同然の奴隷の服。うん、普通にお屋敷に行く服装じゃないな。前ってどういう服装で屋敷に行ったのだっけな?ちゃんとした服装で行ったような気がするけど、この世界っていうか時代の服ってゴワゴワして落ち着かないんだよね。ティーシャツやジーンズがやっぱりいいや。デザインも豊富だし。

 あー、前に行った遺跡から服を取っていきたいな。


 騎士であるルーカと一緒にいたから誰にも絡まれずに屋敷に到着した。古着屋で買った服装もザ街の人って感じの物を買ったから大丈夫。


 屋敷の中に入ると複数人のメイドがお出迎えしてくれた。そしてその奥からアシュティア達のお父さん、この街の領主様が出てきた。

 ミリ達のルートではこの人がアシュティア達のお父さんだと言うことが分からないだろうから小声で教えてあげた。今の時点では俺含めて初対面だからね。


「不老族の方々、娘達の護衛をありがとう。不老族の方々を私の書斎に案内してくれ」


 すぐに片づけなくちゃならない仕事が急にできたルーカに代わってメイドの一人が書斎に案内してくれた。

 書斎か。ここでフローレイティ家の家紋がデザインされたメダルをもらったな。あのメダルにはいろいろ助けてもらった。またもらえるだろうか?それにアシュティア達のお父さんからもらったお金はあんまり使わなかったな。使う分よりも稼ぎのほうが上回ってほとんど手に付けていなかった。

 前のルートと同じとはいかないが、馬車に近づく魔物はミリの能力によって瞬殺したから前のルートみたいにアシュティア達を助けたわけではないから護衛料をもらってバイバイといった感じになるだろう。魔物の群れを片づけたわけでないのだからきっとメダルはもらえないだろう。


 メイドの案内で書斎に入り、アシュティアのお父さんと対面する形で座る。


「まずは娘達を護衛料だ」


 テーブルの上に小袋が置かれる。置かれた小袋を受け取ってミリへ渡す。金銭の管理はミリに任せているというよりも魔物を倒したのはミリだ。俺はミリが剝ぎ取った魔物の素材の荷物運びしかしていない。

 だからこの金はミリが受けとるべきだと思ってミリに渡した。


 一方ミリはタカシから渡された金は管理しろという意味を込められて渡されたと勘違いした。

 勘違いをするのは当然、ミリは前のルートでは金銭の管理から食料の調達に武器の手入れをしていた。だからミリは前のルートと一緒で今回も自分が管理が金の管理からいろいろをするもんだと思った。

 ミリもタカシの為に何かをするのは嬉しいから自分から進んでする。そして自分がタカシを守ると決意している。こんどはタカシが死なないように、無理をさせないように。


「これから本題なんだが」


 アシュティアのお父さんが今から重要な話をするかのような雰囲気を醸しだし始めた。

 護衛料をもらったから話はもう終わりと思っていたから内心驚いた。


「本題ですか?それは?」

「娘から話を聞いたのだがな。ルルーンの街の遺跡の中があるのは本当かね?あの遺跡は一部屋だけの遺跡なのではなく。奥には我々が見たことが無い物が沢山あると」

「はい。まあ、街では見られない物がありますし、俺達は中に入れますよ?」


 そういうことか。アシュティア達にあの遺跡のことを話したから、娘経由で遺跡のことを聞いて興味を持ったのか。


「じゃあ、依頼としてその遺跡の調査に行ってもらいたい。今すぐではない。街に来たばかりであろう?街でゆっくりした後に我が騎士と一緒に行ってもらいたい」

「まあ、それは構いませんがたぶん望んでいる物はないと思いますよ?中にある物はここでは使えなくなりますから。質問を一つなぜに遺跡に興味があるのでしょうか?あの場所は宿泊施設のようなものでして対した物はない」


 中に入れる俺達に中の調査をしてもらいたいようだ。アシュティアのお父さんは遺跡の中にお宝があると思っているのだろうか?遺跡の中に家電製品があるが、家電製品には電気が必要で、電気が無ければ家電製品はただのでかい電気機器が入ったゴミと化すから電力が無い屋敷に持ち帰っても意味がないと思う。

 この世界の人にとって数世紀先、地球の技術はどんな宝石よりも価値がるのだろうけど。

 その気持ちはわかる。俺も電子レンジに似たデリバリー何とかという家電製品がタブレットの簡単操作で料理が中に出来上がるのは凄いと思った。ただそれを持て帰ろうとは思わない。持ち帰って家の宝物にするのかな?嫌だな冷蔵庫が宝物なんて。

 それになんでアシュティアのお父さんが遺跡に興味があるのか逆にそっちが気になる。なので質問してみた。


「それはだな。あの遺跡を発見したのは私のご先祖様なのだからだ」


 アシュティアのお父さんは語り始めた。

 今から六百年ほどの昔の話で下級貴族だったアシュティアのご先祖様は奇妙な扉を発見したと言う。扉は固く閉ざされてあったからご先祖様は中に宝があるに違いないと思い、部下にあけるように命じた。扉を開けるのに三十年以上もかかったらしい。

 その中には見たことが無い武器や品々があって、発見したご先祖様の息子が当時の王に献上して今の爵位をいただいたらしい。

 それで遺跡の調査が何十年にも渡って調査されつくされて、もう何もないと分かってからはずっと放置されたという。

 だから入口には何もなかったのか。

 そして誰もがその遺跡の存在を忘れ去られて今になってさらに奥があると言う事実が浮上したということ。

 アシュティアのお父さんが遺跡に興味を持った理由を聞いてみたが、そうなんだってしか感想が出ない。ただ単に中が気になるだけなのだろう。


 報酬をもらったことだし、宿を取るか。

 アシュティアのお父さんに一礼して書斎から出てところ、アシュティアとメイドが待っていた。


「あのタカシさん、私の友達の目を治せす話はどうなったのでしょうか?」


 あー忘れていた。馬車の中でそんなことを言っていたな。アズサとは出会えなかったけど、病気や怪我ぐらいなら俺もできる。

 約束をしてしまったからな。やるか。ルルーンの街の目的だったスフィアとも合流できたし、もうこの街でやることは無い。

 アシュティアのお父さんからの依頼までの間は暇で冒険者登録でもして金を稼ごうかと思っている。それかなんちゃって治癒屋も継続して稼ぐのもいい。


「その話ね。忘れていないよ。俺の仲間が奴隷になってひどい目にあっていたからそっちを優先させてもらったんだ」

「そちらのエルフの方がですか?いいえ、皆さんと同じ不老族の方なんですよね?」

「そうなんだ。彼女は酷い目にあったらしくてね。疲れているんだ。そうだ。ミリ、三人で宿をとって来てくれないか。俺はアシュティアの友達のことを治してくるから」


 そういえばスフィアは再会してから一言も話さないな?スフィアだけは未来から来ていないのだろうか?それとも未来から来ているけど俺達と出会わないルートでから来ているのかもしれないな。


「え?私もついて行きます!」

「アルムも」

「・・・」


 ミリもアルムもついて行くと言った。それとスフィアは黙ったままだが、俺の裾を掴んで自分もついて行くと言っているようだ。それと俺に何か聞きたそうな感じがする。

 ゆっくりできるようになったら口をきいてくれるだろう。


「俺は大丈夫さ。友達の知り合いの怪我を治すだけのこと。お願いだから先に宿とってくれないか」

「わかりました」


 アシュティアの友達のところへ四人で行ってもよかった。でもミリ達は旅で付かれているだろうから宿を取らせた。三人の身の安全は俺が守る。視界で三人の周囲を監視してトラブルが起きれば排除する。しかもミリとアルムは能力を持っている。街のチンピラや冒険者に絡まれても自分達でなんとかできるだろう。


 今は一通り街の中を視界で見回ったが、街で失明している人物は四人ぐらいいた。アシュティアの友達と思われる人物を絞ると一人だけだ。

 その人物は町娘で家の中で盲目ながら兄妹の手伝いをしていた。

 その他の人物は巨漢で盲目の冒険者だったり、ご老人だったりするからそっちが友達な訳があるはずないだろう。


 ミリ達と別れた俺はアシュティアの案内で友達の下へ向かった。

 当然、貴族が移動をするときは必ずと言って街中でも馬車を使うようで俺とアシュティアに、護衛と思われる騎士が馬車に乗った。

 騎士はルーカではなく青年の騎士だ。俺のことジッと見てくる。アシュティアのお父さんに俺を見張れとでも命令されているのだろうか?どうでもいいか。


「ところでこれから向かうところって」

「はい、私達が行く場所は屋敷のメイドの家になります。目を治してもらいたい友達というのは屋敷メイド見習いの子なんです。怪我した原因が」


 アシュティアにこれから行く場所のことを聞く。アシュティアはついでとばかりに治療する子についてのことを追加で説明してくれた。

 屋敷で働いていた子が怪我が原因で目が見えなくなったのか。


「タカシさん着きました。こちらです」


 着いた場所は視界で目星をつけていた盲目の少女のところだった。

 馬車から降りてアシュティアが案内する。俺はアシュティアの後をついて行く。すでにいる場所は知っている。

 盲目の少女が住むと思われる家に到着した。


 アシュティアが扉をコンコンとノックする。


「誰?アシュティアお嬢様!?母はお屋敷にいると思われますが」


 出てきたのは兄の方でアシュティアが訪ねてきたから驚いている。そして訪ねてきた理由は母だと思い、母がいる場所を上げた。

 盲目の少女はアシュティアと同じくらいの女の子で、兄の方は俺と同じくらいか一個上くらいだ。


「今日はリリに会う為に来ました。中に入ってよろしいですね」

「はい、妹もアシュティアお嬢様が来てくれて喜ぶと思います」

「タカシ様もご一緒に」


 とアシュティアと一緒に家の中に入った。


「リリ、アシュティアお嬢様が遊びに来てくれたぞ」

「アシュティアお嬢様が?兄さんどうしよう。お嬢様に大したおもてなしができません」

「リリ、お気遣い無用です。今日来たのはあなたの目を治す為に来たのです」


 中で兄妹は家内職をしていたようだ。造花や木製の道具がテーブルの上に置いてあった。

 不安そうに俺を見ている少女の兄は部屋の隅に立ち、様子を見ている。

 俺みたいな急に現れたぽっと出の子供に何ができると心配しているのだろうけど、アシュティアが信頼しているからか逆らうこともせずに見守ることにしたのだろう。俺が変な動きを見せたらすぐに止めにかかると思うけど。


「私の目をですか?私達には治療してもらうお金なんてありません」

「お金の心配は大丈夫です。私に任せてください。タカシ様、お願いします」

「わかった」


 俺はリリという少女の目元に触れる。少女の両方の眼球に傷があってそのせいで目が見えなっている。その傷を治して目の神経も傷ついていないか視界で確認する。その確認は彼女の体液を摂取すれば、リアルタイムで彼女の身体情報が嫌でも頭の中に流れ込んでくるけどそこまでするほどの怪我ではない。彼女との関りもこの瞬間だけで家から出たら顔も合わすこともなくなるだろう。


「はい、終わり。目を開けてごらん」

「「「え?」」」


 俺が終わりと言ったら周囲から驚きの声が上がった。それもそうか。周りにはただ触れただけに見えるだろうから治療にしてみれば早すぎる。


「本当です。目が見えます。アシュティアお嬢様!あなたが私の目を治してくれたのですね。ありがとうございます。うう」

「リリ、本当に見えるのですね。タカシ様、友人の目を治してくださりありがとうございました」

「妹の目をありがとうございました」


 治療した少女がお礼を言いながら泣きだして、友人の目が治ったからアシュティアがすごく喜んでくれた。

 棒立ちで不安そうに俺を見ていた少女の兄は驚愕して、少し固まった後ぼそりとお礼を口にした。


「タカシ様、お礼は?」


 アシュティアがそう訪ねてきた。


「お礼なんて別にいいよ。アシュティアの友達なんだから無償でいい。ただ俺達が街ですること、俺達が人攫いに狙われるかもしれないからそれらを追い払う為に街を壊すかもしれないし、誰かが怪我をするかもしれない。人攫いが死ぬかもしれない。無関係な人が傷ついたらできるだけ治療するけど、目を瞑ってほしいとアシュティアのお父さんにお願いしてほしいんだ」


 できるなら無関係な人を巻き込みたくはないしけど、この街には地球の一部屋みたいなのがあった。

 テレビなどの家電製品がとある一軒家の地下にあった。ヒロ達が所属する国の拠点なのだろう。もしかしたら俺だけではなくミリ達も狙われる可能性もある。能力を得たのだから絶対狙われる。

 街の中で刺客と戦うかもしれない。相手も未来から来ているかはわからないけど他者に能力を与える俺をどう見ているかがネックになる。

 今は俺もミリ達も誰かに見張られていないから今のところは大丈夫そうだ。


「じゃ、俺は行くね」


 ミリ達がいる場所はずっと視界で見ていたからわかる。俺はミリ達の下へ小走り気味な足取りで向かった。


 タカシと別れたミリ達は泊まれる宿を探していた。分かれていたからもずっとスフィアは黙ったままだった。


「タカシさんはどんな宿がいいのでしょうか?アルムちゃん、スフィアちゃんはどう思いますか?」

「高い宿はアルム達だけじゃ泊まれないと思う。普通の宿もだけど」

「そうですよね。子供だけじゃ泊まれる宿は限られますよね?スフィアちゃんはどう思いますか?」


 と言った感じでミリが話を振ってもスフィアは黙ったままだ。

 それに自分達はまだ子供だ。タカシに宿を取るようにお願いされたが、自分達三人が宿を取ることはできないだろう。

 取れないならいい宿の前でタカシが来るのを待つしかない。タカシも自分と変わらない年齢の見た目をしているから宿を取れるか怪しいけど。


「アルムちゃん、やっぱりあれなのでしょうか?未来から来ていないのでしょうか」

「うーん、未来から来ているかどうかは本人から聞かないと分からない。アルムみたいにミリお姉ちゃんと会わずにお兄ちゃんと二人だけで旅をしたかもしれないし、アルム達が知らない人と旅をしたかもしれない。アルムのことも知らないかも。アルムもスフィアお姉ちゃんについて何もわからないから何を言ったらわからないよ」


 もしかしたらスフィアは自分達やタカシとは合わなかったルートの未来から来ているかもしれない。それで知らないの自分達に買われて警戒しているかもしれない。自分も初対面のスフィアに対して何も知らないとアルムが語る。

 ミリは違う。未来でスフィアと旅をしたからスフィアがどんな子で何が好きか知っている。そして自分と同じで不老族のことに興味を持っていることも当然知っている。

 それはただ相手のことを一方的に知っているに過ぎない。相手からしてみたら知らない人に絡まれている。


「そうかもしれませんが、さっきタカシさんがアシュティアさんと行かれる際にスフィアちゃんはタカシさんの服を掴んで引き留めていました。タカシさんのことを知っていると思います。どうしたらスフィアちゃんは口を聞いてくれるのでしょうか?」


 ミリは黙っているスフィアに対してどう話をしてくれるか考えていた。先ほどの一件でミリはスフィアがタカシのことを知っていることを確信している。タカシのことを知っているならば、奴隷商でスフィアは自分のことを買った自分達、得に不思議な力を持ったタカシを警戒するだろう。

 スフィアはそういう子だ。


 奴隷にされてさらに警戒心強めているだろうスフィアを見つめながらミリはタカシを待つのであった。

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