ギルドでの騒ぎ
明日はなんとゼルダの伝説の新作の発売日!
これは買わなくちゃ!
「ふー。終わりっと」
「ありがとう。あの魔物を倒したのは君達なのか?魔物の首が落ちたのは何かの魔法か?」
大猿の攻撃を受けた騎士以外にも怪我人がいた。大猿の攻撃に驚いて転んだ騎士が一人足を骨折していたのだ。
骨折のした騎士の治療を終え、骨折を治した騎士に問われた。
「ああ、獣人の女の子がやったけど魔法を使ったわけじゃないぞ」
何か勘違いしそうだったので先に訂正しておいた。
俺の訂正を聞いた騎士は俺の腕に付いているパスを見て何やら納得したようだ。
俺達が不老族のシマシマの腕輪をつけていたからミリもアルムも不老族と思ったのかもしれない。
大猿の攻撃を食らった騎士と骨折を治した俺はミリ達に視線を向けた。
ミリ達は大猿を解体していた。
ギルドで魔物の死骸をそのまま売ると解体の手数料を取られるからか、ミリは俺が騎士の治療をしている間、ここで魔物の解体を決めたようだ。
ミリの隣にはやることがなく暇そうなアルムが作業を見ていた。
「タカシさーん。解体がもう少しかかりますので待ってくださーい。アルムちゃん、私が穴を掘っていらない物を穴に入れるので、アルムちゃんは魔法で燃やしてください」
「わかった」
最初はどうやって掘るのかと思ったら、ミリは能力を使って地面を抉るように切った。穴を掘ると言うより地面を切ったので穴が細長い亀裂のような穴は解体から出たいらない物が入らない。
穴を大きくするためにどんどん能力を使って細長い亀裂のような穴を縦横に拡張していく。
それを解体している合間に行っている。
ミリは能力を使い慣れているようだ。
できた穴に最初の一体を入れて、アルムが穴に火の球を打ち込んで燃やしていく。
アルムの能力は、本人曰くイメージできるものなら何でも作り出せる能力。そしてアルムはもともと魔法が使えるから今放った火の球は魔法によるものなのか、それとも能力で作り出したものなのかは見分けがつかない。
アルムは生まれ持って魔法の才能は凄いものらしい。(スフィア談)能力のなんでも生み出せる能力は形がないものも出せるのかは知らないけど。アルムがイメージできるのなら出せるだろう。
てかいらない物って毛皮と魔石以外か。それ以外はいらない物なのか。肉とかは固くて食えなさそうだしな。
ミリは魔物の解体について詳しいからミリがいらないと言ったら売れないものだろう。
それとミリが取り出している魔石をスライムが食べないように見張っておかないと。スライムは俺の身体にしっかりと張り付いている。
前に魔石を全部ベスに食べられた事件があったからな。魔石は高い値段で売れるから食べられないように気を付けないとな。
洞窟でお宝があるから魔石を食べられてもそこまで困らないけど。
「終わりましたのでタカシさんこれを」
解体作業が終わり、いらない物も焼き終えた。
穴を隠すようにアルムが土を作り出して穴に被せた。
ミリが畳んだ大猿の毛皮を差し出してきた。
毛皮を念力で馬車の上に浮かせて、やることを終えたら馬車の中へ戻る。
「すごいです。あんな強そうな魔物を倒すなんてすごいです」
「すごいわね。お姉様興奮し過ぎ、騎士達の怪我を治してくれてありがとう。さすがはチート持ちの転移者ね」
俺達が馬車の中に戻るや否や先ほどまで大人しかったアシュティアが興奮気味に称賛していた。フォスティアは姉であるアシュティアを横目に恥ずかしそうにこそっと感謝された。
俺は怪我人の治療しかしていない。ただ俺が何もしなければ騎士が一人死んでいたのは間違いない。
魔物に襲われたおかげでアシュティア達一行の信頼を勝ち得たようだ。
そいえば、前にアシュティア達と出会った時、最初から信頼されていたのは魔物を倒して助けたからではないのだろうか。
信頼を勝ち得たら、アシュティア達に今までの冒険のことを話すようにお願いされたので暇つぶしがてら話すことにした。
ミリやアルムの未来の出来事を聞いといて自分の未来で起きたことを話していなかった。
ミリ達にはスフィアと再会したとき話すつもりだったが、アシュティア達にお願いされては断る理由もない。
俺は未来で体験した出来事、ルルーンの後のことを話した。
これから向かう場所のことを話しても混乱するだろうからな。ルルーンの街にアシュティア達も出てくるし、魔物の群れの話を知ったら不安がるだろうからな。
今回は魔物の群れは起きないからな。派手に暴れていないしね。
ルルーンの街に着くまで冒険の話は続いた。
ルルーンの街の近くにある不老族の遺跡の話はアシュティア達は知っていた。表の方は小屋のような小さな建物で不老族が持つ腕輪を使うと扉が出現して、扉の先を進むと真新しい宿泊施設が現れたとか、ルルーンの街と王都の間にある森に言葉が通じる植物の魔物がいたとか二人は目を輝かせながら俺の話しを聞いてくれた。
王都に向かう途中で不老族の友達と再会した話や王都からエルフの里に向かう途中に大規模な不老族の遺跡を発見したなど話した。
俺が体験した未来の話をしゃべっている間、ミリとアルムは黙って聞いていた。
俺がしゃべり終わると不老族についての話題が上がった。
アルムによる不老族の国についての話が始まり、俺はその話を静かに耳にした。
さっきアルムの体験談の話ではなく、あくまで不老族の知識だったり、どんな種族が住んでいるのかという、不老族のディープな話だった。
不老族の国は身体が鉱石や光でできた種族がいたり、性別が三つ存在する種族がいると言う。そしてなんと身体が人の形とはかけ離れた種族からいろんな技術を学んでいるようだ。
静か聞いていた俺はまるでエイリアンみたいな種族がいるんだなって思った。もしかするとこの星は様々な種族が住んでいるのかもしれない。リンのような植物チックな種族から鉱石で体ができた種族に、端から見たら魔物と思ってしまう種族も住んでいる。中には地球よりはるか先に言っている技術をもつ種族もいる。
不老族の国はそういった種族を保護しているのかもしれない。どういう基準で保護しているかはわからないけど。そういった保護活動をしているみたいだ。
それらの種族も俺達みたいな被験者のように転移によってこの星に流れついたのかもな。もしくは宇宙船に乗ってやってきたとかもあり得るな。
ほんとこの世界はファンタジーよりもSFな世界だ。
不老族がなりよりもSFチックな存在なのかもしれん。
アルムが住んでいた場所は人型の種族が多く住んでいた地区だったらしく、普通の人以外にエルフに魔族に獣人、その他の種族達が平和に暮らしていた。
家に出なくても買い物もできてお金も国から支給されて何も不便はなく快適だった。
アルムは学校に行くのをやめて世界を拒むように自室に籠るようになっていたから国から出る金は何かの保護制度による支給と思われる。引きこもりになっていたとはアシュティア達には言っていない。俺がそう思っただけだ。
「あの国は本当にいい国だったの。ご飯は全部デリバリーだったけど、人に頼むんじゃなくて機械で操作して、すぐにデリバリーマシンに暖かい食べ物のから冷たい食べ物がすぐに転送されて食べられたの。誰にも会わずにできたの」
「じゃあどうやってご飯は給仕されるのでしょうか?」
「そうですね。誰がそのご飯を作ってアルムちゃんに届けるかわからないです」
アシュティアとミリがデリバリーのシステムがいまいち理解できないようで、可愛い顔でハテナを浮かべていた。
「ようするにこうだろう。例えば、このタブレット端末で食べたい料理を注文するとしよう。それで誰かが注文を受けて料理を作る。できた料理は一瞬でここに届くっといった感じだな。それが注文してすぐに届くだけのことだ」
「ルルーンの街の遺跡にあったあの箱のようなものがそうだったのでしょうか?」
「転移の魔法を使っているのですね。その板でそんなことができるのですか?」
「このタブレットは今はできない」
俺の雑な説明でミリとアシュティアは理解してくれた。
ミリが思い出したようにつぶやいたルルーンの街の遺跡に電子レンジみたいなやつがそうだったのかもしれないな。タブレットで注文した料理が無限に出てきたから。たぶんそうだろう。
話をして、魔物が出たらミリが倒して売れる物がはぎ取って、馬車の揺れに身を任せている内にルルーンの街に到着した。
「俺達はここで降りるよ」
「待ってください。タカシ様達もこのまま屋敷までついて行きたいです」
目的だったルルーンの街に着いたから降りようとしたらアシュティアに止められた。
止めた理由を聞いてみると助けられたお礼をしたいから屋敷までだそうだと。
ただ俺にもルルーンの街に用事があって来ているからその後にしてほしいと交渉を持ちかけた。
アシュティアはこのまま俺達を屋敷に連れていきたいと。俺達は早くスフィアと再会したいからのんびりと屋敷に行っている暇なんてない。
「お嬢様、私が彼らについて行きます」
お互いの主張が平行線だった俺とアシュティアに騎士の中の一人が声をあげる。
その騎士はルーカという女騎士だ。前だとアシュティア達と行動していた騎士でお父さんがルルーンの街の門番をしているだったか。
彼女が俺達の用を済ませた後屋敷に案内するようだ。
「ではルーカ、タカシ様達が用事を済ませたら屋敷まで案内するのですよ。それとこれを持って行ってください」
「これは?なるほど、はい。お嬢様。必ずや案内しますので」
俺達とルーカはアシュティア達と別れた。
ルーカはアシュティアから何かを受け取ったようだ。屋敷の鍵かなんかだろう。俺達には関係ないから街中に消えていく馬車を見送る。
「では用事を済ませましょう。まずどこに向かいますか?」
「まずは魔物の素材を売りたいから冒険者ギルドに行きたい。その後は知り合いを訪ねたい」
魔物の素材を売るために冒険者ギルドに向かった。
ルルーンの街までの道中十回以上も魔物と遭遇した。ミリの能力で一瞬のうちに魔物を倒したおかげで魔物の素材が大量に手に入った。それを俺の念力でルルーンの街まで運んだ。
その魔物の素材が俺達の後ろに浮かんでいるから街の住民達の視線の的になっている。
騎士のルーカがいるから俺達に絡んでくる輩はいない。
冒険者ギルドまでの道は自分自身の記憶を頼りに足を進めてたどり着いた。
まあ、ほとんどは街の住民であるルーカに案内してもらったけど。こっちの道を通った方が近いですよって感じで。
流石に街に住んでいるから街の入口から冒険者ギルドまでの最短ルートで行けた。
ギルドの中に入ると冒険者やギルド職員が一斉に俺達を見る。そして俺達の後ろの魔物の素材の山を見て驚いた表情をする。
周囲が驚愕でフリーズしている中俺達は買い取り台にまっすぐ向かう。
「後ろの魔物の素材と魔石を全部買い取ってもらいたい」
「え?は、はい!買い取りですね。お待ちください」
買い取りの受付の女性がギルドの奥に行って同僚を連れてきた。
「こちらの魔物の素材はどちらの方が討伐されたものでしょうか?」
と年配なギルド職員が聞いてきた。
「この子が討伐から剥ぎ取りまで全部やった」
「え?」
ギルド職員にミリを出す。
本当にミリが全部やったからな。本人を前に手柄を奪う、心臓に毛が生えたことはできない。
「そちらの獣人の子が?」
「これはみんなで倒した魔物じゃないですか!」
「いや、俺はここまで運んできただけだ」
「アルムはただ見ていただけ」
ミリが魔物を倒したのにミリはみんなで倒したと言う。
「そこの騎士様、この話は本当ですか」
ルーカにギルド職員が確認して、こくんとルーカが頷いた。
ルーカ達騎士から見たら自分達が何もしていないのに魔物の首が勝手に落ちて死んでいったようにしか見えなかっただろう。
俺達が魔法かなんかで倒したと思ってギルド職員の確認を肯定したのだろう。
「わかりました。これだけの量を査定するとなるとしばらくお時間をいただきますので少々お待ちください」
ギルド職員が査定している間、暇になった。
この空いた時間にスフィアの下へ視界を飛ばそうと考えているとギルドに酒を飲んでいると思われるチンピラ数人が入ってきた。俺達を見て何やらニヤニヤしている。
他の冒険者は俺達を見ながらこそこそと仲間内で話している。俺達が持ち込んが持ち込んだ魔物の素材を怪しんでいるかもしれない。でも絡んでくるようなことはしないようだ。
俺達を見てニヤニヤしていたチンピラ連中が俺達近づいてきた。
「そこの別嬪さん、俺達と遊ばないか?」
ルーカをナンパし始めた。
「いえ、主の命で来ているのであなた方の相手をしている暇なんてない」
チンピラのナンパをきっぱり断った。
「おいおい、命って子守かい?」
「そんなのより俺達と遊んだほうが楽しいぞ」
俺達を一瞥したチンピラ達は断られたのに諦めずにしつこくルーカに言い寄る。
そしてルーカはチンピラ達を鬱陶しそうに見て、俺に助けてほしそうに見てくる。
騎士なんだからチンピラ相手にできるでしょ?もしかして法律とかで一般人に手を出してはいけないとかあるのか?
「てかさ、ギルドに子供がいるぜ。いつからここは子供が出入りするような場所になったんだよ」
「いっちょ前にナイフとか。子供がナイフなんかもちゃダメだな。こんなのくらい売ったら酒の肴くらいにはなるか」
「返してください」
チンピラの一人がミリのナイフを取り上げた。男はニヤニヤとナイフの刃に布を巻いて懐にしまうその瞬間。ミリのナイフを取り上げた男の手どさっとナイフと一緒に落ちた。
「手がー!俺の両手が落ちたー!イデー!誰だ!」
男は周囲を見渡すが自分の手を切り落とした人物を探すべくキョロキョロと周囲を見渡すが、誰も刃物なんか持っていない。
自分の手を切り落としたと思われる少女を男はギロリと見る。
「このガキ!ナイフに何か細工したなっ!おい、テメーらこのガキ共にシツケっていうヤツを教えなくちゃな」
「私何もしていません。戦うというのならこっちもそうせざるおえません」
男はチンピラ達をまとめている人なのか男の声にチンピラ達が腰につけていた剣やナイフを抜く。
まったく物騒な連中だ。
当然、ミリは何もしていない。男の両手を切り落としたのは俺だ。
ミリの未来で能力を授けたのが俺だからミリができることも俺ができると思ったからやってみた。
「手を落としたよ。床もこんなに血で汚しちゃって後で掃除するんだよ?俺が落とした手をつけてあげるよ」
「なんだよ。おい、俺の手触んじゃね!っぐ!身体が!」
「遠慮せずにほら」
俺はミリのナイフと男の手を拾って、手につけてあげようと言うのに男はそれを拒む。なので念力で動きを止めさせてもらった。
これでつけやすくなった。
「あっ!間違えて反対につけちゃった。ごめん」
「あのガキ何をやった?取れた手がもとに戻ったぞ」
「おい何を言ってやがる。アニキの手が逆さまになっているぞ!」
間違えて左と右を逆につけてしまった。人だから何事も間違えはあるよね。
でもこれで床の掃除ができるよね。
「手ももとに戻ったことだし、ちゃんと床の掃除してね。それとお仲間も」
念力でチンピラ共を床にゴキブリのように這わせる。
「はい、ミリ。ナイフ。今度は取られないように」
「え?ありがとうございます」
ミリが引き気味にナイフを受け取った。
少しやりすぎたかな?一度ミリ達を失ったからそのせいでミリ達が攻撃を受けたり、嫌がらせを受けたりしたら過剰な報復をしてしまう。
次は押さえないとな。周りが見えていなかったし。
「あのー」
絡んできたチンピラ達の対処を終えたところギルドの職員の人が声をかけてきた。
「査定終わりましたか?」
「いえ、ギルド内ではこういうのはちょっと控えてもらいたいのですが。相手が絡んできたのは見ていたのであなた達が被害者なのはわかってます。次から」
と職員の人から注意を受けた。俺も少しはやり過ぎたと思うけど、あっちが絡んできたのが悪いのに。
その後は誰にも絡まれることなく査定が終わる前まで待てた。
金額は230万ニヤドだった。
「これで用事は終わりましたか?終わったのなら屋敷まで案内します」
「まだです。まだ用事は終わっていません」
「そうだね。この後は友達を迎えに行くので屋敷に行くのはその後になる。それが終わったら行くから」
ルーカは俺達の用事が終わったと思ったらしい。この後が重要なイベントだ。
早くスフィアに会いたい。
ギルドで買い取ってもらって得た金を持って俺達はスフィアがいるところに向かった。