二人の少女の未来とフォスティア
もうすぐグリザイアの新作が出るよ!
「どうしてミリはアルムを襲ったの?」
「タカシさんがアルムちゃんに殺されないようアルムちゃんを殺したかったのです」
アルムが俺を殺すだと?なんの冗談だと思うが、ただの冗談でミリがアルムを襲うはずがない。しかも本人を前にして殺すと告げているから本気で殺す気だったのだろう。
アルムはアルムでミリをおちょくっていたけど。
アルムが俺を殺す話だが、ミリから詳しく聞いてみた。
「ミリがいた未来ではそんなことがあったのか」
ミリが体験した未来の話が長かったので要約すると。
ミリがいた未来ではピイール王国とハハン帝国間での大規模な戦争が起きたそうだ。ミリがいた未来の俺は国家間の戦争には参加せずに、戦争から逃げるようにピイール王国の隣国のダーシャ王国にみんなを連れて向かったそうだ。
みんなと言うのはアルムやスフィア達のことらしい。アズサやジュンのことは知らなかったが、空気の野郎のことは知っていた。その未来では空気と俺が親友のごとく親しかったらしい。
空気のクソ野郎と親友とか、何それキモいわ。ミリの未来の俺は脳みそが腐っていたのではないか?
話しが脱線した俺達はダーシャ王国に向かう途中でとある一団に襲われたらしい。その一団とはハハン帝国の人達で、俺が不老族であると噂を聞いて、この戦争で自分達の方に加担させようとして、交渉に失敗したそうだ。
交渉を失敗すると事前に見ていたようで誘拐しようと作戦を立てていた。
誘拐作戦は見事に成功。成功とは言ってもアルム一人だけを誘拐されてしまった。
何をやってんだ。その時の俺は。今の俺よりはマシか。今の俺は五人も連れていかれたのだからな。その時の俺はミリとスフィアを守れていた。ミリとアルムの二人を殺されてしまった俺よりかは数百倍はマシだ。
そしてハハン帝国はテレポート装置でアルムを誘拐したが、その場に残った帝国の人達は俺の怒りに触れて皆殺しして、アルムを連れ戻すべくハハン帝国に向かった。
連れ去られて帝国に行くのは同じか。
向かう途中で、ミリ達に何かあるかもしれないということで二人に能力を与えたそうだ。
帝国に到着した俺達一行は、アルムの救出するために帝国の帝都の中を探し回った。
ようやく見つけたアルムは帝国の手によって洗脳をされていたらしい。
洗脳されたアルムはスフィアを殺して、次に俺を殺したそうだ。殺した理由はピイール王国に手を貸さないようにするために、自分達に手を貸さないのならいっそ人質に取った娘で隙をついて殺してしまえと言うことで殺されてしまった。
俺とスフィアはミリの前で殺されてしまった。
深い悲しみについたミリは姉妹と思っていたアルムを殺した。
すべてを無くして自害を心に決めたミリの前にアイツが現れたそうだ。アイツとは空気の野郎の連れだ。俺やミリはアイツの名前を知らないからアイツとか空気さんのお連れの方としか言えない。過去に送ってもらった方とミリから聞いたそいつだろう。
過去に着いたミリはこれらの出来事を繰り返さないようにアルムと再会したら必ず殺すと決めていたらしい。例え俺の前であっても。
そういうことでことに及んだそうだ。
「それでなんでアルムがお兄ちゃんを殺さないといけないの!」
「そう怒らないでミリは俺を思ってのことをしようとしたんだ。アルムにとって理不尽だと思うけど。俺に免じてミリを許してくれないか?二人には未来で起きたことは俺がそうならないように二人を守るからさ。次はアルムがいた未来について教えてくれるかな?」
とミリの話を聞いたアルムがぷんぷんと怒っていた。
アルムの気を逸らす為にアルムがいた未来について聞いてみた。自分が体験した未来のことを聞いてもらえば多少の怒りは収まるだろう。
アルムが来た未来について聞きたかったし、アルムはどんな体験をしてきたのかな?アルムの未来でも俺は死んでいるのだろう。俺が来た未来ではミリとアルムが無残な死を遂げてしまったように。
「お兄ちゃんが聞きたいというなら聞かせてあげるよ」
アルムの未来はミリよりさらに長かったので端折って説明する。幼い口調で説明するアルムはとても可愛かったけども。
アルムの未来ではミリもスフィアとは出会わなかったようで、俺とアルムの二人旅を数年してきたそうだ。旅の目的はアルムの両親を探す旅に。でも数年も探しても見つからない。
アルムは思い始めた。
両親は自分を捨てた、もしくは死んだのだと。そう思うと心が軽くなった気がしたらしい。
俺に頼み込んで不老族の力を頑張っておねだりしてもらったという。
その能力はイメージできるものならなんでも生み出せるのと空間を操る能力を俺からもらったようだ。
そしてアルムの未来でも空気の野郎とは親しかったらしい。
その時の俺は頭が腐っているな。それにおねだりされただけで能力を渡しているんだよ。ミリのように襲われないように能力を与えるのは百歩譲っていいとしても危険が無いのに、ただおねだりされただけで能力を与えるのはどうかと思う。
能力は変な大人に目を付けられるし、普通の人としての人生を送れなくなるんだ。よく考えてって、魔物が闊歩する世界だから自衛で与えたかもな。俺もミリムに能力の全部を与えたから未来では好き勝手に生きているかもな。
俺に能力の使い方を教わりながら旅が続いたが、ある日俺とアルムは不老族の集団に捕まったそうだ。
捕まって数週間、アルムだけは自由を与えられたそうだ。自由とは言っても監視は付くし、不老族の施設の外へ出れなかったらしい。
ただ、その設備は自由に使用してもよかったそうでいろいろなゲームや本を読めたそうだ。ただ幼いアルムは不老族の言葉も文字を読めなかったので暇そうな職員を捕まえて一緒にゲームをしたり、本を読んでももらったりしたらしい。
ただ不老族の人達は俺に関して聞いても何も答えてくれなかった。
月日が経ち、アルムは不老族の国の学校に通うことになった。
俺の安否が分からないまま、学校に通い続けた。
空高く立ち並ぶ不老族の国の建物がアルムに対して何もできないちっぽけな存在だと語っているようで不老族の都市が嫌いだったそうだ。
俺がいない心の隙間ができて不老族の学校では浮きまくって友達ができなかったそうだ。クラスメイトもアルムを腫物として扱うが如く、自ら話しかけることも関わろうともしなかったそうだ。
地獄だったとアルムは語っていた。それでも学校に通い続けた。もしかしたら俺が転入するかもって思って、それだけが希望で地獄のような学校生活を送ったそうだ。
学校生活が地獄なら漫画では不登校になるパターンじゃん。俺は学校に行ったことが無いからわからないけど。
希望を抱いて学校に通い続けて数年、不老族の言葉も完璧に覚えて、読み書きもできるようになって、寂しさを紛らわすように毎月支給されるお小遣いでゲームを大人買いして、次第に学校に行かなくなって部屋に引きこもるようになった。
その後は覚えていないという。
いつの間にか檻の中にいて能力を使って外に出てみると自分が幼児化していることに気づいてもしかするとこれはタイムトラベル?と思った。
よくよく思い返してみるとここは俺と出会った洞窟だと気づいてまた俺と旅ができると狂喜乱舞したそうで、ここで待っていれば俺にまた会えるということで待って、今に至ると言うらしい。
俺が死んだことはわからないが、アルムも過去に来たということは空気の野郎の連れがアルムを過去へ飛ばしたのだろう。やっぱり、アルムも能力を持っていたから過去に。
不老族の国で暮らし始めて数年経って過去にと疑問が残った。不老族の国へ入るにも空気の野郎やその連れが入るのは難しいのかもしれない。あとは他に事情があるのかは俺が考えても意味がない。
今はミリとアルムと再会したことを喜ぼう。
二人がいた未来のことについて分かった。
ただ分かったことだけでこれ以上は何も進まない。ミリがアルムを襲うのをやめないし、襲われたアルムはミリに反撃するかもしれない。
何も解決はしていない。
俺が二人の行動に目を光らせなくてはいけないな。ミリもアルムも、今の状態で数か月ほど一緒に暮らせば落ち着いてくるだろう。それまでは様子を見て、以前の二人のように仲良くなるまで見守るしかないか。
「アルムちゃん不老族の街に住んでいたのですか?どんな場所でしたか?詳しく教えてください!」
「えっ?何?急にどうしたの?」
ミリはアルムが不老族の国に住んでいたことを聞いて、目を輝かせてアルムに詰め寄っている。急に詰め寄られたアルムがミリに困惑している。
出た。ミリの不老族スキーが。未来が別でもミリの不老族好きが変わってなくて安心した。
アルムよ。ミリとは初対面でこんな子とは思ってなくてびっくりしているだろうけど、もう一人不老族好きがいるんだ。その子も根掘り葉掘り聞かれると思うぞ。頑張ってくれ。
ということは、ミリもアルムも未来から来ていることはスフィアも未来から来ているのだろう。未来から来てない可能性もあるけどから決まったわけじゃないけど。今頃、スフィアは奴隷商にいるのだろうか、それとも抜け出しているのだろうか?
ルルーンの街に行けばわかるか。街にいなければ自力で奴隷商から抜け出して自分の故郷に帰ったと分かる。スフィアがいる方向は分かるんだ。スフィアの反応がルルーンの街になければそういうことで、ルルーンの街に残っているなら未来から来ていないか、俺達を待っているかのどちらかだ。
「今度はタカシさんの番ですよ」
「そうだよ。アルムも話したし、今度はお兄ちゃんが話す番だよ」
「今度は俺の番なの?聞かない方がいいよ」
俺がいた未来ではミリとアルムが死んでしまったから二人には聞かせたくなかったが、二人の圧に負けて話してしまった。
友達の不老族のジュンやアズサと一緒に旅をしたことやハハン帝国にみんなを攫われてミリとアルムが殺されてスフィアが廃人と化してしまったことを隠さず話した。それとダンジョンがある街で奴隷の少女を買ってミリムと名付けた。
隠しておきたかった気持ちはあったが、二人は隠さずに話してくれたから俺も正直というか隠さずにすべてさらけ出した。
みんなを守れなかったことを、ミリとアルムの二人を死なせてしまったことを許してもらいたかったからだ。
二人の反応は。
「タカシさんは私達の他にその不老族の子と旅していたのですね。今度紹介してくださいね」
「ジュンお姉ちゃんとアズサお姉ちゃんね。会ったことは無いけどアンジェリカお姉ちゃんには会ったよ?ミリムって子もあってみたい」
すべて話したが思っていたリアクションではなかった。酷いとか見損なったとか言われると思って覚悟していたのだが、彼女達の口からは罵倒は帰ってこなかった。
「それだけか?俺は二人を見殺しにしたんだぞ?」
「タカシさん私達の反応に不服があるのですか?思っていた反応と違うのは私も同じですし、アルムちゃんだって同じです。それにタカシさんは私の未来の話を聞いてどう思いましたか?」
「それはミリも酷い目にあったのだな。とか俺が守らないと思ったぞ」
「そうです。私もタカシさんの話を聞いて同じことを思いました。私がタカシさんを支えないといけませんねと。だからお互い思っていることや求めている物は同じなんだと思います」
そうか。ミリもアルムも俺と同じで自分のせいで俺を死なせてしまったと思っているから許してほしいと思っているのか。二人の話を聞いて、二人それぞれの未来で俺が死んだのは二人のせいではない。
二人からしたら俺がいた未来で二人が死んだのは俺のせいじゃないと思っているのだろう。
そして二人に謝ったところでお門違いの上に、俺の中では気が済まない。ミリムを買ったのは穴を埋めるのとミリ達に対して罪滅ぼしの為だったと思う。
それならこの世界に来る前に何をしていたのかを言おう。いた未来でミリ達に話したかな?別の世界から来たとは言った覚えはあるが研究所で人体実験の被験者をしていたことは言っていなかった気がする。二人は別の未来から来ているからもしかしたら俺が化け物として生きていたことも友達を殺したことがあることも知っているかもな。
いや、話すのはスフィアがいないからスフィアと合流してから話そう。
話し終わって、いざルルーンの街へ行こうとしたとき、俺達の前に馬に乗った騎士を引き連れた馬車が横切った。
馬車に描かれている紋章どこかで見たことあるな。どこで見たっけな?ってフォスティアの家の紋章だ!そういえばあの時、ここら辺を通ったな。空気のクソ野郎に喧嘩を吹っ掛けた時に偶然に出会った。あの時のフォスティア達も災難だった。魔物に襲われているところで空気のクソ野郎の流れ弾が来たんだっけな。だが、今はそんな状況にはならない。
空気の野郎とは戦う気はない上に、空気の野郎が来ても無視をするつもりだ。
馬車の窓から女の子が顔を出している。あれはフォスティアの姉のアシュティアだ。
思わず手を振ってしまった。
振って少し考えたけど、あっちは俺達のことを知らないはずだ。未来から来ている可能性は無くはないけど
「あの場所に乗られている方々はタカシさんのお知り合いですか?」
「あの馬車に乗っている子はミリ達は知っている人だと思うよ。これから行くルルーンの街の領主の娘だよ。まあ、向こうは俺達のことを知らないと思うけど」
ミリ達に馬車に乗っている子達のことを説明する。
説明していたら馬に乗る騎士の一人が近づいてきた。
「そこの子供達!なぜ!手を振った!何かの合図か!」
騎士が怒鳴りつけるように言い放つ。
見知らぬ子供が手を振ったらいけないのか?それとも俺達を盗賊の一味だと思ったのか?後ろの洞窟は盗賊の根城のようなものだし。そこから持てるだけ盗んできたから盗賊とやっていることはさほど変わらない。
殺して奪った汚れた金だろう。俺達が有効活用するつもりだ。
ここらへんは盗賊がよく出るのだろうか。森のど真ん中に子供達だけいるのは不自然か。盗賊の一味と思われても仕方ないのかもな。不審な動きをしたら子供でも怒鳴りたてるのも納得だ。
「合図ではないですけど、ただ俺は知り合いが乗っているから手を振っただけですが?それに俺達はこういうものですけど」
俺は騎士に話しながら、パスを見せた。
「シマ模様の白い腕輪?お前達は噂に聞く不老族という輩か?っまいい、知り合いというのは、馬車に乗られている方を知ってのことか?」
「知っているよ。馬車に乗っているのはルルーンの街の領主の娘、アシュティアとフォスティアですよね?」
「そうだが」
騎士の人は困惑しながら人目に馬車をチラリと見る。
騎士の人は何を考えているのだろうか?
貴族令嬢の友達だという子供を保護したのかいいか困っているかな。それともまだ俺達を盗賊の一味と思っているのかな?
騎士の人が何を考えているかは正直どうでもいい。
視界を馬車の中に送って、馬車に乗る人物を確認。乗っていたのは知っての通りアシュティアとフォスティアだ。
二人が未来から来ている可能性はあるが、本人達から聞かないと確認できないから未来から来ているのか含めての確認の為にフォスティアにメッセージを送ることにした。
フォスティアは本人曰く日本で暮らしてきた記憶があると言うのでひらがな、カタカナを読めるのでフォスティアだけが俺のメッセージを読めるので最適の人材だ。
メッセージを送る方法はフォスティアの目の前に炎の文字を生成させるだけだ。