ダンジョン街の奴隷商
新作ポケモン
一番最初に水のジムを選んだのだけど。
レベル30ってマジかよ。
何とか勝ったけど。強すぎー---
パスに手伝ってもらい、空気の野郎が倒したと思われる魔物の死骸と俺が倒した魔物の死骸を持って冒険者ギルドの買い取りカウンターに行く。
ニーレにも一体は持ってもらっている。空気の野郎が切り刻んで胴と頭しかない奴だ。重さは7キロくらいの重さだ。
ニーレは女性なのに意外と力持ちだ。自身の下半身を食べていた魔物なのにタフだ。
地球の女の人だと持てないどころか虫だから触れられない。触れる人はいると思うけど。
「買い取りカウンターってどこ?」
「買い取りならこっちだよ!よいっしょっと!」
胴体だけの虫を担いだニーレの後についていく。
「ここだよ。タカシの友達もいるみたいだよ。カウンターのおやっさんが困っているみたい」
空気の野郎はカウンターの人と揉めていた。
この時間帯はみんなダンジョンに潜っているのかギルド内は冒険者はいるものの数えられるほどしかいない。買い取りの人以外のギルド職員はみんな暇そうにしていた。中には野次馬で空気の野郎と買い取りの人のやり取りを遠目で見ている人もいたりした。
空気の野郎はこっちの世界の言葉をしゃべれないみたいだから揉めるのは見えていた。そもそも話が通じても意味不明なことを言うから言葉のキャッチボールが成立しない。
「贄、を富に」
「贄?おい、お前さん何を言っているんだ?それを買い取ってほしいのかい?」
空気の野郎の相手をしているオジサンがかわいそうになってきたので助け舟を出した。
空気の野郎のイントネーションが片言でおかしい。もしかしたらこの世界の言葉を話しているのかもな。
「おい空気、てめぇな。店員の人を困らせるのはやめろよ。買い取りだろ?それにお前一人で持ち運びできないほど魔物を狩るな。俺の仕事を増やすな。店員の人、申し訳ない。これ全部買い取りだそうだ」
今度、俺を荷物運びさせようとしたらその荷物をすべて燃やしてやる。
カウンターに空気の野郎が狩った魔物を乗せると買い取りのオジサンが度肝を抜かれたような表情をした。
「買い取りね。はぁ?よく見たらこれは光食らい胴体じゃないか。しかもこんな良い状態のが四体も、そっちのも全部合わせて屋敷が買える額になるぞ。一匹、銀のパーティーが何人か犠牲を出してようやく倒せる魔物だぞ。それを三人で、その上そんな軽装備で倒せる魔物じゃね。どうやってこんな数を?」
「早く富を」
顔を引きつかせるオジサンをよそに空気の野郎は急かしているが、オジサンは驚きすぎて空気の野郎の声が届いていない。
オジサンは査定しているんだから急かすなよ。
「っち!答えないか。わかった。冒険者だし、自分のやり方を簡単に教えないよな」
「あ、コイツのと俺らのは別々でお願いします」
あらかじめ別々でと言った。空気の野郎と同じパーティーって認識されたら嫌だし、一緒に査定する方がギルド側は楽だと思うが、金を俺らと空気の野郎とで分けるのが面倒だから別々にした。
「買い取り金だ。解体料や税金、金にならない素材の引き取り料は引いてある」
「感謝」
数時間後、魔物の死骸の買い取り査定が終わり、オジサンから空気の野郎はひったくるように金が入った革袋を受け取ってギルドから出て行った。
結構大きい革袋でパンパンに入っていた。視界で確認したが全部金貨だった。
税金とかいろいろ引かれてあんな額になるのか。
凄いな。俺らもあのぐらいの金額になるのか?
「次は私達の番だね。オヤッさんよろしく!」
「ニーレの嬢ちゃんか。そっちの連れは見かけない顔だが、新しいパーティーメンバーか?さっきの奴も」
「違うよ。パーティーメンバーじゃないよ。この子はタカシって言うの。さっきの子はタカシと顔見知りみたいだけど組んでないみたい」
オジサンは俺が倒した魔物の死骸の査定をしながらニーレと世間話しを始めた。
世間話っていうか、俺と空気の野郎の話がほとんどだが。
自分が俺に助けられたことや持ってきた魔物の死骸は俺が倒したことなど自慢げに話していた。
「しかし中層の光食らいが上層に出るなんて珍しいな。下層から魔物が来て居場所を追い出されたのかもしれんな」
「違うの。オヤッさん、私が中層に降りて光食らいに襲われたの」
「バカか、低ランクのお前がなんで中層に行くんだよ」
「だって、兄さん達を逃がそうと思って囮になったのはいいんだけど間違えて中層に迷い込んじゃって、災難って思ったけどそれでタカシに出会えたよ」
空気の野郎の査定でも数時間はかかったから俺はニーレとオジサンの他愛ない世間話に耳を傾けながら、視界で外の様子を見てこよう。
俺はゴツゴツした壁に背を預けて、視界を飛ばした。
町並みは今までに訪れた街並みと変わりはしないが、ダンジョンで栄えた街ということで冒険者が多い。奇抜な鎧姿で街を出歩く人も度々見られるし、麻布でできたラフな服装の人が武器屋や防具屋でウィンドーショッピングをしている。
ギルドの外にいる人達は今日は休みなんだろうな。
表通りにいる人達はそんな感じだ。この街はだいぶ賑わっているが、賑わっている分路地裏や街の端を見るにいかにも貧困層に属している人達も少なからずいた。
そんな人達は手足が欠けている。特に子供が多い。酷い生活を強いられているだろうなと思う。中には数人の子供達が表通りの一角を陣取り、「お恵みください」って悲痛そうに道行く人に話しかけている。当然、道行く人は無視して通り過ぎていく。何人かは硬貨を子供達の前へ放り投げる。腹を空かせた数匹の魚が久々の餌に群がるみたいに子供達が醜く奪い合う。
酷く醜くて見ていられない。
そんな子供達より表通りの奴隷店の奴隷達の方が健康的で身綺麗だと思うほどに。
どうやらこの街は社会格差が激しい街というか、国なのかもしれないな。
飢えないようにしてあげたいが、金銭的に俺は無一文なのもあり、あまりにもかわいそうなので視界を表通りに戻した。
ニーレの提案を受け入れなちゃ、俺もあの子達の仲間入りになっていたかもしれない。
気を取り直して、まずはこの街の物価を確認してみよう。
最初は出店や定食屋をみて見よう。会計しているところ見れば、これがこのくらいの値段かってわかるしな。
出店の肉串は先ほどの子供達が奪い合った硬貨三枚で売られているみたいだ。店主と冒険者の話を盗み聞きてみたら、出店の肉のほとんどがダンジョン産の魔物の肉みたいだ。肉の種類が豊富で鳥からカエルの肉らしい。高い肉はダンジョン街の外から持ち込まれた物らしい。
ダンジョンって虫以外の魔物もいるんだ。今まで見た魔物はすべて虫だったから虫しかいない物かと思った。
何かに引き寄せられるように目についた奴隷商の中を覗いた。
中には多種多様な種族の奴隷がいた。奴隷商の奥に傷ありの奴隷がいる部屋があるのに気付いた。売り物にならない奴隷達を置いている部屋だろう。
その部屋の一番奥に綺麗な金髪の猫耳の獣人の少女が窮屈そうな檻の中でニコニコと窓越しの空を見ていた。彼女は両方の二の腕の先が無く、右目がない。
この子はアルムみたいにゴミみたいな金持ちに飼われ右目と両腕を失ったのだろう。弄ばれて、奴隷商に売られたのだろう。
食事も最低な物しか与えられていないのかガリガリに痩せこけている。それなのに彼女は気でも狂っているのか、そういう風に教育をされたのか、ニコニコと空を眺めている。何かに期待して待っているように見えた。
かわいそうに。いいや、俺は何をしているのだろう。ミリやアルムが死んでその代わりを求めているのだろうか?そんな考えはくだらない。俺のせいで死なせてしまったのに何も償いをしないであの子達の代わりを?
ただ彼女から目が離せなかった。
やはり俺は死なせてしまったミリとアルムの代わりを求めているのだろう。
査定が終わり、俺とニーレの前に空気の野郎と比べて一回り大きな革袋いっぱいの金貨が置かれた。
それを持って買い取りの部屋を後にする。
「タカシ、私は仲間達が戻るまでギルドで待っているけどどうするの?」
「俺はいろいろ買い物してくるよ」
「そうなんだ。街へ出るならスリに気を付けるんだよ。大金を持っていたら変な奴らに絡まれるから街の衛兵を頼るんだよ」
ニーレが世話うるさくそんなことを言ってくる。俺のことを思って言ってくれるのは嬉しいが余計なお世話だ。
「ニーレ、これお礼だから受け取って」
「え?ちょっと、タカシ!私何もしてないから受け取れないよ。ってどこ行ったの?」
ニーレにダンジョンから脱出させてもらったお礼として売った半分の金額を渡した。本人は受け取れないと言っていたが、この金はニーレが魔物の死骸を持ち帰ろうと言わなければ得られなかった金だし、ニーレと出会えなければ俺は空気の能力でダンジョンから脱出できたが、今頃は空気の野郎と過ごしていただろう。
道案内のお礼として半分渡すって考えていたしね。
俺は狩った魔物の死骸を売って得た金を持って獣人の少女がいる奴隷商へ向かった。
やはり、俺は空いた穴を埋めようとしている。マヌケでバカな自分を呪いたいぜ。
「いらっしゃいませ、ってガキかよ」
店の中に入ったら胡散臭そうな青年の店員が嫌な顔をして接客として出迎えた。いや、俺が子供とみて接客をやめたようだ。
来店したお客にその態度かよ。教育がなっていないな。俺がガキでも仮にも客だぞ。
「また身売りのガキかよ。そんなに赤の他人に飼われるのがいいのかよ。貧乏人はひもじい暮らしより変わり者の金持ち方がマシか。ほう?」
その店員は俺のズボンの膨らみに気づいた。その膨らみはさっきギルドで魔物の死骸を売って得た金貨がパンパンに入っている。その膨らみに気づいただろうし、歩くたびにじゃらじゃらポッケの中で硬貨がこすれる音が鳴っているから嫌でもわかるだろう。
パスは袖に隠しているから俺が不老族ってことはわかってなさそうだが、客だと分かってもらえただろう。
「奴隷を買いに来た」
短く店員に伝えた。
「何をお探しで?」
俺が客だと分かると掌を返すように態度が変わり、接客の対応をしてきた。金を持っているイコール客ってことか。
少しは教育されてるじゃん。
ただ、青年の店員は俺を凄く怪しがっている。怪しがられる要因がいっぱいあるからどれなのか知らないが、それでも客として対応してくれるのはありがたい。
「店の奥にいる両腕がない獣人がいるはずだ。そいつを買いに来た」
「わかりました。こちらで少々お待ちください」
レジに案内され少し待つと青年が連れてきたのは獣人の少女ではなく、さらに胡散臭いおっさんを連れてきた。
俺はこんなおっさんご所望じゃないぞ。
「資金をご確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
なるほど。俺が子供だから奴隷を買えるのかの確認か。他にも怪しい部分があるが、あくまで客として扱いということで子供の俺の財布の中身を確認ってことか。
見たいなら見せてやるよ。
俺はレジにポケットに入っていた金貨を全部出した。
俺が金貨を出したら少し驚いていたのが少し面白かった。
「これで満足?」
「いえ、少々失礼します」
青年が連れてきたおっさんが出した金貨一枚一枚丁寧に確認していく。偽金でも思われたのだろうか?
「全部本物だ。こんな子供が大金を、どこかの」
おっさんが小声で漏らす。
悪かったな。こんな子供で。
「オーナー、商品を連れてきます」
青年はおっさんの漏らした声を聴いてようやく獣人の少女連れてくるようだ。
おっさん達は気になっているだろうな。俺みたいな子供が大金を持っているのが。おっさん達が聞いてこないのは在庫を処分できるから聞いてこないのだろう。それか、金持ちや貴族のパシリでも思ったのかもな。
おっさんはここのオーナーなのか。
連れてくる間に。
「こちらにサインを。お買い上げになる商品は金貨10枚になります」
「その紙は?」
「こちらは奴隷の持ち主の証明書と領収書でございます」
「ふん、レシートか」
おっさんが動物の皮膚でできた紙を差し出したので困った。
俺は文字が書けないし、オッサンはレシートと言っているが、その紙に本当にそう書いてあるのか、何が書いてあるのか読めないので分からない。
こういう時にミリがいてくれたら、言ってもいない子のことを思ってもしょうがない。
困り果てて考えた結果サイン代わりに血を滲ませた親指の指紋をつけた。
ハンコの代わりに書類に親指の指紋をつけて契約するシーンを漫画で見たことがあるのでそれをやった。
おっさんは困った顔をしたが、何も言ってこなかったのでこれはこれでありなのだろう。
金貨10枚レジに残して、すべてポケットにしまう。
うーん。じゃらじゃらうるさいから財布を買おうかな。
これで契約完了だな。獣人の少女は俺の物だからいろいろやっても問題ないな。
「お待たせしました。こちらが商品になります。それとご存じかもしれませんが、注意しまして奴隷をダンジョンで囮として使うのは問題ありませんが、街中で奴隷を殺すのは罰金が発生しますのでご注意ください。それ以外は痛みつけるなりご自由に」
と言われた。
こんな可愛い子を殺すとか馬鹿のすることだ。俺がこの子を手にかけるとでも。
注意として事前の説明だろうけど。
「殺す以外はご自由か。じゃあ早速」
俺は初めても奴隷の獣人の少女の唇を奪う。これは唇を物理的にもぎ取るという意味ではなく、キスだ。彼女の口の中に舌を入れて、できるだけ彼女の唾液を口で採取する。
俺の口の中に彼女の唾液が入った途端に俺の脳に彼女の身体の情報が入り込んできた。胃や内臓、下腹部にひどい損傷が見られる。それらも治してあげよう。
今得た情報を活用して、彼女の右目や両腕、その他諸々の治療にかかる。ほんの10秒で完治ができる。
それを見た奴隷商の人達をあんぐりと口を開けて驚いていた。
獣人の少女は右目が見えるようになったことと、両腕がなくなって感じていた幻肢痛が引いて、指先の感覚が戻っていることにパチくりしている。自身の両腕を見て、何が起きたか理解していないようだ。
てか、ずっとニコニコして不気味で俺のことをジッと見ているから何を考えているかわからん。
心の傷はとても深そうだ。
金銭的に今は余裕だし、服を買いに行こう。その後はご飯を食べてどこかに泊まろう。迎えが来るまではここに止まろう。
それまでこの子には一人で生きていけるようにしよう。暇つぶしがてらに。
もうなんか、全部なんでもどうでもよくなってきたけどこの子を見ていると何かしてあげなくちゃって気持ちがわいてくる。
俺は獣人の少女を連れて奴隷商から出た。