エピローグ
家に帰ると、早速母が天ぷらうどんを作ってくれた。
食卓台に運んでくれたうどんと、私は目があった。
うどんと目が合う?おかしな話だと思うだろう。私も思ったのだから。
しばし見つめ合う。
というよりも、私は固まっているのだ。
つぶらな瞳のそれは、私の次の行動を待っているかのようだ。
目を逸らしてはいけないような、目を逸らせないと言った方が正しいのかもしれない。
とぐろを巻いた黒ヘビは、ペロペロと私を見ながら舌を出した。
もうここが限界だ。
「い……やぁーーーーーわあぅーーーー」
new houseで目覚めた。
誰もいないのか。珍しい。
いや、居る。
私の部屋のドアの前に。
グレーのスーツを着た男だ。
new houseでは、あまり不思議な事は起きないのに、何故、セキュリティが万全の部屋に入れたのか。
「あなたは誰ですか」
「お前にはもう分かっているんだろう。どちらの世界が現実なのかということを」
「今いる場所だと思います」
「そうだ。ここにずっといたいか?」
「……」
ここが現実で、もうold homeへは行かなくて済むという事なのだろうか。
「選んでもいいんだぞ」
選ぶ?
「今日は、現実の世界で一生暮らしていくのか、それとも向こうの世界で暮らしていくのか、決める日なのだ。さあ、どっちを選ぶ」
「ふたつからしか選べないの?」
「そうだ」
「3つ目の世界があるんじゃないの?」
「ははは」
「あなたは昔会った、あのロボットでしょ。私には分かるのよ。私が人の心の中が読める事は、あなたも知っているんでしょう。あなたがロボットでも同じ。あなたの心の中に、3つ目の世界があると出てるわよ」
「じゃあどうするんだ。早く選ばないとここに留まる事になるだけだぞ」
「私は……」
私が選んだのは……。