幸と不幸と仮説と退廃
ようやく簡潔です。短いですがどうぞ。
世界終了仮説という肯定も否定もできない理論を三人の少女の翻弄される運命に例える。ただメサイアが響けばそれで充分である。一人の少女がミキサーに飛び込み、断末魔と壮大な音楽の中、一人の少女が笑いながらそれを見る。それに絶望する少女もいる。さて、誰が不幸で誰が幸なのだろうか。少女たちは分かっているだろうが、人間の死に意味はない。いなかったものが生まれそして消え、また生まれそしてまた消える。それの繰り返しの中、文明が成り立つ。ともかく人間の死は精神の死だ。忘れられたときに人は死ぬ。我々はいつか訪れる万物の死を待ち続けるばかりである。
夕間暮れ、放課後に鳴り響くチャイムは部活動に励む生徒が帰る合図となる。それはわたし達バスケ部も同様である。
「疲れましたねー。」
初穂が汗をタオルで拭きながら言った。わたしも順子も着替え終わり家路につき始める。
「まあ大会近いからね。わたしは最後の大会だから頑張んないとね。」
「京香さんがいないとバスケなんてやってられないですよ。」
順子がいたずらに笑いながら言った。わたしも初穂も笑う。初穂が続ける。
「でも京香さんがいなくなると寂しくなりますね。」
「……でもほんとはうざい先輩がいなくなってよかったって思ってそう。」
「あはっ。」
わたしがふざけると初穂は笑ってごまかす。長いようで短い学生生活ももうすぐ終わる。時間の流れの残酷さに目を伏せたくなる。
「京香さん。」
初穂がいう。
「昨日の夜に頑張って人形作ったんです。最後の大会に向けて悔いとか残したくないですからね。」
そういってわたしに人形を手渡す。頑張って作ったのであろう。糸のほつれが目立ちいびつな形をしている。
「なにこれ。熊?」
「猫です。」
初穂はすかさず訂正する。
「あたしには鹿にしか見えないんだけど」
順子も初穂をいじめる。
「本気で泣きますよ?」
初穂は笑う。それを見てわたしも順子も笑う。初穂をいじめるのは面白い。きっと順子も同じことを思っているはずだ。
「ありがと。大事にする。」
わたしはロッカーの目立つ位置に人形を置いた。順子も初穂もその様子を優しく眺めていた。幸せとはこういうことを言うのだろう。
少しずつ夕陽が沈む。西日はわたし達の絆のように輝いていた。この先、世界が終る日が来てもわたし達の友情は死なない。そう信じてる。
「帰りましょう。明日も学校ですし。」
順子がそういいながらドアを開ける。わたしがそのドアを押さえ初穂が部室を出る。わたしが部室を出てドアを閉めたその瞬間、人形が笑った気がした。
イヒヒ。
ようやく終わりました。これは2年近く前に書いていたものですが、たまたまデータが残っていたのでなんとなく投稿してみました。後悔しています。公開して後悔とはうまいことを言ったものですね。自分で投稿しといてなんですが、出来ることならだれの目にも触れずに忘れ去られていってほしい作品です。




