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悲鳴なんて、出るものか。
代わりに中に詰まってる、出ちゃいけない内臓系が口から出そうになってる、この現状。
ちょ、ま、待って・・・!
この幼児体型に、ボン・キュッ・ボンを作ろうとするのはおかしな事だと思うのよ!
辛うじて、ほんの少し、いや、腫れてる?くらいの膨らみ始めた慎ましやかな胸があるだけで、全体的にまるっとこの体は発展途上なわけでしてね⁈
出る!
出る出る出る出るっ!
出ちゃう、飛び出しちゃう・・・‼︎
ほ、骨がっギシギシいってますよ‼︎
ギリギリギリ・・・
おぅふ・・・。
締め上げてるメイドさん、私、そろそろ意識飛ばしても良いかしら・・・?
『シーアももう10歳ですものね、社交界デビューの準備をしなくてはいけないわね。』
事の発端は、母様の一言でした(遠い目)
いずれは、とは思ってはいたけど、ちょっと早くありませんか⁈
早くない?
・・・そうですか(遠い目)
とはいえ、まだ夜会に出るには早いので、人前に出る練習と称して茶会をするとの事。
茶会、茶会かぁ。
・・・茶会で、こんな内臓絞るようなコルセットって必要⁈
てか、10歳にコルセットって必要⁈
「おっじょっおっさっまっ!もう少しっ!お腹をっ!引っ込めて!下さい!」
ちょっ!
失礼なっ!
腹なぞ出とらんわよ!
・・・という心からの叫びは、音になるはずも無く。
散々絞められ、その後に化粧や髪を弄られ。
結構な時間を費やし、着飾られました。
「お嬢様、お綺麗ですよ」
締め上げてくれたメイドさんが、くたびれ気味に褒めてくれます。
「あ、ありがとう・・・」
副音声として、お疲れさま、だわね。
しっかし。
鏡に映る全身図を眺めてみれば、可愛らしい美少女が佇んでいました。
父様譲りのプラチナブロンドは、柔らかく艶やかに背中を隠すように揺れます。
メイドさん力作の編み込みプラスα(複雑過ぎてどういう構造か分かりません)は、まるで精巧な髪飾りをつけているようです。
その髪型を活かし彩るように小さな宝石を散りばめた髪留めをアクセントに頂いて、私の髪は完成。
誕生日に兄様に頂いたこの髪留めは、小さな宝石をたくさん散りばめた繊細な花のモチーフとなっていて、だけど必要以上に華やか過ぎないセンスの良さが伺える一品です。
母様譲りのアメジストの瞳は、光の加減で濃淡が変わり、神秘的だとよく褒めて頂きます。
私自身、大好きだもの。
・・・ナルな意味では無くてね?
そして、ほんのりメイクをしてもらって、いつもとほんの少しだけ雰囲気の違う私がそこにいる。
淡いピンクのドレスは、少しだけ大人っぽくなりたい女の子を演出するように、丈は僅かに長め。
かといって、野暮ったい長さでは無く、将来の淑女をイメージさせます。
惜しむらくは。
あんだけギュイギュイ絞められたくびれは、ほとんどその用途を成してないことかしら。
仕方ない、キュッを作っても、最初のボンッが存在してないのなら、結果は・・・そうなるよねー。