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少年神様が言った通り、この世界はインシディアという名前を冠していました。


インシディアは1つの大陸と、7つの島の世界です。

大陸の中に3つの大国と2つの小国、そして2つの島国で成り立ちます。

私が生まれたのは大国のうちの1つ、東のラスヴァトニア。

その中でも自然豊かな肥沃な大地に恵まれたミアグノリアム州を治める、グノリアム家。

ミア、とは爵位を持つ者の中の、さらに特別な役職にある者が治める地域に付けられた総称らしいのです。


「シーディアお嬢様、それではラスヴァトニアの北にあるのは何という国でどんな特徴があり、何が特産として扱われていますか?」


白を基調とし、淡いグリーンで模様付けされた部屋は、私に用意された勉強部屋。

家具も基本は白で整えられ、それでいてさり気ない細工が各所にちりばめられている。

例えば、タンス。

例えば、今使用している机に椅子。

これ一つで、きっととんでもない金額になりそう。

小市民の私には、おっかなびっくりですよ。

未だに慣れません。

公爵家の財力スゴイ。

そんな環境で、私は目下勉強中なのであります。

恰幅のいい、といえば聞こえはいいけれど、出っ張ったお腹でおへそ辺りのボタンが飛びそうで、つい目がいってしまいます。

家庭教師のバトス・ウェスター先生は優しく教え上手。

勉強が嫌・・・苦手な私に根気よく教えてくれています。


「ラスヴァトニアの北は大国ヤーナガナドがあり、主な特産は鉄鋼をはじめとする鉱物や宝石、それらを加工し細工する事も特産というのに相応しい。

そして何よりそこに住まう人々に最大の特徴があり、彼らは獣の力を有する獣人が多くを占める、でしたかしら。」


「はい、30年程前までは特にこれといった物はなく、武力にのみ特化し、不毛の地だと言われておりました。

が、鉱山などが立て続けに発見され、近年は特にその発展は目覚ましく、他国が羨む程です。」


特産が無かった時代、ヤーナガナドは内戦や侵略ばかり繰り返し、侮蔑を込めて付いた二つ名が『泥棒の国』。

北の土地は痩せすぎていて、作物も育ちにくい。

森もありはするが、北の寒く凍えた大地で育つのは、寒さに強い針葉樹ばかり。

動物も限られたものしか生息せず、狩りもままならない。

一度雪が降り出せば、人々に為す術なくただ、雪がやむのを待つしか無かった。

食料も慢性的に足りず、一度の冬の訪れに、民が多く亡くなった年も珍しくない。

そんな大地に住むのは、人に追われ、人よりも強靭かつ環境適応力のある種族しかありえなかった。

結果、出来上がったのが獣人の国だ。


「有名なのがフェルシナ銀山ですな。

フェルシナ山脈にて発見され膨大な銀が、今日まで発掘されております。

そして、近年名を上げておるのが、細工師達。

中でもルオル工房、ザガリア工房あたりが有名ですな。」


鉱山開発のおかげで交易が進み、徐々に物流が増え人々の生活は向上しつつある。

ただし、まだまだ発展途上の為、国民全ての生活が安定したかというとそうではない。

その為、多くの獣人が冒険者という形で、各国に出稼ぎに行く。

また、国家間の遣り取りは、人と獣人という種族的な事を始め、多難を極めており難航。

そんな現状がある。


「もっと、友好的になればいいのに。」


「おや、シーディアお嬢様は獣人が、怖くないのですか?」


「怖い?」


先生の問いかけに、脳裏に描く。

もふもふの耳や、もふもふのしっぽ。

肉球とかあるのかしら。

あらやだ。

触ってみたい。


「私は是非、是非!お友達になってみたいです!」


握りこぶしを握っての主張に、一瞬先生は気圧されましたが、すぐにニッコリと笑いました。


「そうですな。

皆が友達であれば、幸せなのやもしれませんな。

さて、次は・・・」


そうは問屋が卸さない事は、重々承知です。

そうでないからこそ、国交が未だ整わないのですから。

民間レベルのやり取りと、保証の無い交渉。

それらがうまく整えば、あるいはより良い発展が待っているのではなんて思います。


「シーディアお嬢様。」


紙の上に広がる広大な大地と、神様と(一方的に)

交わした約束。

お子様な状態の私には、知識を増やすしか現状出来ることはなく、こうした日々を送ります。

シーディア・グノリアム、6歳になりました。


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