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「おめでとう飯島柚子さん。貴女はこの度、厳正なる選抜の結果、とある世界の神代行として選ばれました。」
はぁあぁあぁぁ⁈
真っ白な部屋で、全力で声を上げましたとも。
少年は微動だにせず、ニコニコしてます。
こういう反応をするのが分かってたようです。
無理無理無理無理無理無理無理!
何言ってんの、意味わからない!
神代行⁈
選抜ってどう言う事⁈
とある世界って、異世界って事⁈
てか、ここドコあんた誰よ⁈
その瞬間思い付いた質問を、勢い任せにぶちまけて。
すると少年は、我慢出来なくなったと言うように、腹を抱えて笑いだした。
笑う要素がどこにあったのよ⁈
「いいね〜、その反応。」
一通り笑って少年は座り直した。
「まず、僕は神の末席にあたるモノかな。
で、ここは神の力により簡易的に作られた部屋。
世界の狭間みたいなトコかな。
僕たち神があんたたち『神代行候補』を、様々な方面から観察しその資格有りと判断して集めた。」
つまり、この少年は神様って事で。
その、様々な方面とやらを詳しく説明して貰いたい。
「因みに先に言っとくけど、拒否権はないからね。
決定事項の説明みたいなものだから。」
なんだって⁈
説明聞いて、断ろうと思ってたのはバレバレだったって事⁈
いやいや、拒否権くらい下さいよ!
「だって、仕方ないじゃない。
あんた以外の候補者は神気に当てられて消し飛んじゃったんだから。」
・・・はい?
消し飛んだ?
候補者全員が?
少年改め神から転がり出てきた単語に絶句する。
軽ぅく、酷い事言いましたよ。
「人間性やらその性質みたいなのを審査して、生死問わず候補者を上げてね。
何柱かの神で会議を繰り返してさ。
で、何より神気に堪え得る事の出来る魂の資質が必要だったんだよね。」
神様会議。
なんか言葉だけ聞くと、厨二感ハンパないわー。
一通り騒いだら、なんか冷静になりましたよ。
拒否権がないなら、意味もないし。
「そう、その変な割り切り方が面白いんだよね。
ズレてるっていうか。」
おい神様、失礼だな。
「あんたも大概だと思うよ?
ま、そんな感じであんたに決定したわけ。」
だいぶアバウトだけど。
なんて言うのかな。
神様だって言われて、はいそうですかなんて普通は思わないんだけど。
納得する何かを、この少年から感じる。
コレが神気だって言うなら、なるほどなんて思ってしまう。
「そんなわけで、あんたは神代行として、異世界に行ってもらう。」
神様は、今まで和やか?だった表情をほんの少し引き締めた。
途端に、体感温度が下がった。
「基本的に神自身は世界に不干渉だ。
力が強すぎて壊してしまうからね。
だから、天使だったり精霊だったり、代理を立てて世界を導く。」
静かに告げられる言葉が、空気を震わせる。
その度に、温度が凍えていく。
神様の心を語るかのように。
「世界の名前はインシディア。
再三の代理による修正の甲斐なく、この度最後の神代行を立てる事となった。」
溜息を吐き、神様は告げる。
「飯島柚子、貴女はその目で世界を映し、行末を決定する事を赦す。」
厳かな言葉だけが脳裏に響き。
またもやブラックアウトする事となった。