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第三十五話 これはラスボスですか? L4.いいえ、ただの残りカスです



いよいよ最終決戦。

―前回より・フェリキタス島にて―


「(そうだ……そうしてやりゃいいんだ……それなら絶対ぜってぇ上手く行く。成功間違いなしって奴だぜぇ……)」

 瞬く間に傷を再生させたバサイは、サイミョウバンカーの毒がもたらす激痛に耐えながらどうにか立ち上がり叫ぶ。

「おうゴルァ住民ノグソどもぉ! 調子こいてられんのも今のうちだぜオラァ!」

 その声はスピーカーを通じずとも全世界に響き渡ったが、先程までかれの醜態を目の当たりにしてきた人々は誰もが『どうせ何をやっても盛大にしくじって終わるだけだ』『ツジラに加えて青色まで相手にしてしまったのだから大した事もできずすぐ死ぬに決まっている』と高を括って相手にしようとしなかった。だが次の瞬間、人々はバサイの発言がただの虚仮脅しでない事を思い知ることとなる。

「今から俺様は、てめぇらをこの世界クソダメ諸共滅ぼしてやるぜぇ! この必殺砲塔から撃ち出す"猛毒破滅弾"でなぁ!」

 見れば、バサイの頭からは確かに砲塔と言えなくもない(が、然し実際は細長い蛇腹つきゴムホースのような肉管を複数束ねて垂直に突き立て先端部を放射状に枝分かれさせたような、何とも間抜けな外見の)器官が生えている。『猛毒破滅弾、だと?』

「そぉだあぁぁ! 冥土の土産に説明してやらぁ! 猛毒破滅弾はまさに俺様最強最悪にして究極無双の超絶切り札! その正体は俺が復活する時に取り込んだブツ――海底から島を支えてた骨肉樹――を身体ん中で弾丸に作り替えた代物よぉっ!」

 その言葉の意味する所を察した一部の人々は青ざめ絶句した。

『するってぇと、つまり……』

「そうだ! お前らが予想してる通りの事になる! つまり――『それは小型の骨肉樹も同じ。だから自爆によって生じる未知の毒素を世界中にばら撒いて世界を滅ぼすのも簡単、って事ね?』――……お、おう。そうだぜぇ!」

 言いたくて仕方がなかった台詞を最高のタイミングで遮られ、バサイは調子を狂わされる。それでもめげずに気を取り直し、恐らくは自分以外知り得ず、また察し得なかったであろう(と、バサイ自身は思いこんでいて、実際そうであった)事柄を言おうとする。

「し、しかも! しかもだっ! "猛毒破滅弾"で確かにお前らはこの世界クソダメ諸共滅びはするが――『お前バサイは毒に耐性があるから別に何ともなく寧ろ猛毒によって棲み良い環境になる、って所か?』――……」

 一度ならず二度までも台詞を先読みされてしまったバサイの苛立ちと怒りはピークに達し、思わず彼は黙り込んでしまう。

『お? 何だ? 不正解ハズレか? だとしたら正解アタリは何だぁ?』

「……えら、くも……」

『はぁ? 何? 聞こえないんだけど。悪いけどもっと大きい声で言ってくれない? どうせ大声出すの得意で――「っ、っ、ぇぇぇぇえええええなああああぁぁぁぁぁ! そんなに大声出して欲しけりゃ出してやるよドゥルァアッ!」

『何だ、やればできるじゃない』

「五月蠅えっつってんだろ黙れよグルァ! つーかてめえら、よくもやってくれたなぁ!?」

『『何を?』』

「何をじゃねーよすっとぼけんな! さっき俺様が最高に盛り上がる所でカッコよく決めようとしてたのを邪魔したのは誰だよ!?」

『えーっと……』

『誰なんだよ』

「お前らぁぁぁあああ! お前らお前らお前らお前らお前ら! オ、マ、エ、ラ! お前らだろぉぉぉぉおおおおおがぁぁぁぁぁああああ! お前ら二人が俺様の台詞遮って先読みかまして来たんだろうが! しかも二度も!」

『ちょっと待ってよ、その発言には誤りがあるわ』

『そうだ。俺らはそれぞれ一度しか妨害してねぇぞ』

「足しゃ二度だろうが! ああクソっ! もういい! こうなりゃこんな世界クソダメなんざすぐにでも滅ぼしてやる!」

『おいおい、落ち着けよ』

『そんなにカッカしちゃ駄目よ』

『カルシウム摂るか?』

『っていうか何でそんなにイライラしてるの?』

「うるせぇー! カルシウムなんぞ要るかボケっ! つーか誰の所為でここまでキレてると思ってんだぁ!?」

『『……作者?』』

「メタァァァァアアアアア! メタアアアアアァァァァ! メェェェェタァァァァァァッ!」

『だから落ち着けって』

『何か言葉おかしくなってるけど大丈夫?』

「大丈夫なわきゃねぇぇぇぇぇだろぉぉぉぉぉがぁぁぁぁぁぁ! いいか? マジで滅ぼすぞ? あっちこっちに猛毒破滅弾撃つぞ!? 俺様以外の全生物が半日と待たず死に絶えるぞ!? それでもいいのかぁ!?」

『それでもいいのかって言われても、どうせどう答えたって撃つんでしょ?』

『それとも何か? 「それじゃ駄目だ」とかそんな風に返しゃ発射やめんのか?』

「やめるわけねーだろボケ!」

『じゃあさっさと撃ちなさいよ。もう二千字近いのよ。時刻だって17時半近いし』

『まあどうせ発射される前にお前のそのよくわからん汚え肉丁髷ニクチョンマゲを胴体ごと縦へ真っ二つにするだろうがな』

「やってみろやボケがぁぁぁぁぁ――『条虫鎖節刃じょうちゅうさせつじん遠隔輪えんかくりんの型』――ぐびょらぁぁぁぁあああ!?」

 いつの間にか握られていたオウセイスピアーが振り下ろされるのと同時に、その矛先から四角形の発行体を無数に繋げたような薄平たく細長い紐型のエネルギーが発射される。発射されたエネルギーの両端部は空中で連結し、古代インドの輪投擲武器・チャクラムを思わせる物体となってバサイに飛来。猛毒破滅弾の発射を許さないまま、その体を縦に二分した。

「がっ、ぐが、がぁ! こ、こんな、馬鹿なっ!?」

『馬鹿はお前だろうが、よっ』

「ぎゅべ!?」

 辟邪神虫(を操縦する繁)は両断されつつも再生しかかっていたバサイの身体を臍の位置から一気に引き裂き、その体内から彼の不死性の根源たる巨大な赤い結晶を取り出した。

「あが、ぐ、そ、そいつをどうするつもりだ!? 粉々に破壊した所でまた元通りになるだけだぞ!?」

『そう。それはそれは、ご忠告どうもありがとう。でも大丈夫よ』

『破壊して元に戻るんなら……こうするだけだ』

 そう言って辟邪神虫(を操縦する繁)は赤い結晶を抱えたまま腹部を腹側へ曲げていき、その先端部を抱えた結晶に向ける。そして管状のそこから緑色の液体を結晶目掛けて霧状に噴射した。

「ぐぎらぁああああああ!?」

 緑色の液体は赤い結晶だけをピンポイントでドロドロに溶かしていき、同時に再生が完了していたバサイの顔面が今までにないほどの苦痛に歪む。緑色の液体――もとい、アサシンバグの溶解液――によって結晶はものの数秒足らずで消滅した。それでもバサイは死んでいなかったが、不死性の根源が断たれていたのは言うまでもない。

「あ、があ、はああ……お、俺様の……俺様の能力がぁ……」

『ほう、上手く行ったな。島に居た時は何故だか溶解液を弾くもんで仕方なく物理的にぶっ壊したんだが……』

『強化の過程である程度の耐性を犠牲にせざるを得なかったんじゃない?』

「く、クソ……俺様の……俺様の能りょ――はがぁ!?」

 倒れ伏したまま途方に暮れるバサイの顔面を、辟邪神虫は片腕で掴み持ち上げる。

『さて……ルジワン・バサイ、これでお前の不死性は無くなった……』

波渦虫プラナリア這わず……こうなったが最後、あんたは最早死ぬしかない』

「はがが!? はがががが!?」

『……哀れな奴ね。繁、そろそろ下ろしたら?』

『そうだな。何時までも掴んでちゃ、シメらんねぇしな――っと』

「ぷあ、はぁ! くそ、てめぇ等! いい加減に――『すんのはお前だ、産廃』

 そう言って(繁の操縦する)辟邪神虫は、何やら古の武術にありそうな(然し実際は即興で適当に考えただけの)構えを取る。

天虫拳闘てんちゅうけんとう奥義、神魔斬潰しんまざんつい!』

 その叫びと同時に、恐怖で動けぬバサイの身体を辟邪神虫の六本腕が袋叩きにしていく。ある時は握り拳で砕かれ、ある時は貫手で貫かれ、ある時は引っ掻きで切り裂かれ――不死性を失ったバサイの身体がボロ雑巾のようになるのに、そう時間はかからなかった。そして最早原型を殆ど留めていない肉塊と化したバサイの亡骸を六本の腕で器用に丸めて球形にし、それを空高く掲げ大きく振り被り、とどめのばかりに叫ぶ。

『毛筋一本血一滴、この世に残さず消えやがれぇ! 香織ィ!』

『何さ繁っ?』

『これが本当に最後の一発だ! しくじらねぇよう一丁頼むぜぇ!』

『はいよっ、それじゃ――これで、どうよ!』

『上出来だぁ、有り難うよ! それじゃ最後の一発、二人で一緒にイくとしようぜ!』

『お、私もイっちゃっていいの? いいわけ? いいんだねー!?』

『勿論だぁぁぁぁぁ! 寧ろお前とじゃなきゃイけねーだろっ!?』

『そりゃそうだわねっ! じゃあイこうかぁ――』

『おう、派手にイこうぜぇ――』

『『天虫拳闘奥義、灰塵回帰かいじんかいきしょうの型ぁっ!』』


 二人の叫びと同時に、丸められたバサイの亡骸は辟邪神虫に勢い良く投げ上げられていき(香織のかけた運動エネルギーと熱エネルギーを増幅させる魔術の効果もあって)失速することもなく空気との摩擦熱で瞬く間に発火。空中に輝く炎塊となりほんの一瞬ばかり燃え上がった後、跡形もなく焼失した。


 かくして凡そ十一日間にも及んだ『フェリキタス島事件』は幕を閉じたのであった。

次回、上手く行けば最終話!

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